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夜空の三重奏
作:星河 翼



#11いざ出発!


 朝、五時起床。
 昨日、延光達と考えたプランで行くと、この時間に起きて、六時には出発と言う寸法だった。
「あ、おはよう」
 洗面台には、隆が居た。あたしも、
「おはよう」
 と、普通に返した。心は旅行気分で盛り上がってるんだけど、それを悟られるのもちょっと恥ずかしいので止めておいた。隆はいつも通りだから、それが無難だ。
「のぶちゃん、見かけた?」
 あたしと入れ替わる時に、隆は問いかけてきた。でもあたしは、まだ延光の顔を見てなかったので、
「ううん?見かけてないけど?」
 否定の言葉を返した。
「まだ寝ているのかな〜?ちょっと、見てくるね」
 隆は、のんびりした口調で、延光の部屋へ行くと言って、この場から去った。
 あたしは、昨日徹夜状態だったみたいだから、まだ寝てるんじゃないかしら?何て思いながら、歯磨きをした。
 でも、どうやら違ったようであった。隆君が、バタバタと、二階から下りてきたのである。
「のぶちゃんが、部屋にいないんだ!」
「は?」
 と言う事で、あたしにとっての始まりの旅行は、延光捜しから始まったのである。
 まず、家の敷地内を隆と手分けして捜した。
 隆は、建物内を。あたしは、校庭や自転車置き場を捜した。が、しかし、延光の姿は無かった。
「居た?」
「ううん。居ないよ……何処行ったんだろう……まさか、先に出発したなんてことは無いよね?」
 落ち合った玄関であたしと隆は、お互いの状況を話し合った。
「まさか……延光君が先に出るなんて事ないでしょ?家の中に居ないって事は、どこかに出掛けてることになるよね?」
 この旅行の首謀者が、そんな事をする訳無いと思われる。それに、あの延光が、だ。
「じゃあ、自転車置き場、もう一度行ってみよう。出掛けてるなら、自転車置き場に戻ってくる可能性あるからね?」
 あたしは、姿を見たわけじゃなかったから、自転車が有るかどうかまでは見ていない。なのでそう提案した。
 自転車置き場にあたし達は何も喋ることなく、揃ってもう一度見に行った。
「あ、のぶちゃんのいつも使ってる自転車が無い……」
 着いて隆は直ぐに気がついた。あたしは、どれがどれやら……これだけ沢山有ると判らなかったので、見分けられる隆には違和感があるのだろう。
「てことは、何処かに出掛けてるってことだね?こんな朝にどこに行ってるのかしら?」
 その疑問に、隆が応えてくれると思ってた頃に、延光が、自転車を押して建物の側から顔を覗かせたのである。
「お!おはようさん!元気か?」
 延光は、あたし達が捜し回ってたこと等全く知らないので、いつもの調子でにこやかに笑いながら、自転車を押して来た。
「ちょっと、延光君!何処行ってたのよ!心配したんだか……って何?その大荷物!」
 あたしは非難するつもりでそう言い掛けた言葉が、目の前の大荷物に目が行きすっかり忘れ去った。
「のぶちゃん……もしかして、廃材置き場にでも行ってきたの?」
 何、それ?廃材置き場?
「ご名答!ん。丁度、手ごろなキャンプにでも使えるテント見つけてきたから、持って行こうかなと思ってな〜」
 かなりなご満悦状態ですけど、それって、かなり大変じゃ無いの?何てことを考えて、
「そんな物を、自転車の何処に積むつもりよ!無理でしょ?」
 あたしは、有り得ないから!って言うつもりでそう言ったのを、
「三人で、別けて積めば良いやん?そしたら、そんなに荷物にならへんで?」
 いともあっさり返してくれやがった。しかも、この荷物を三等分?ちょい待ちやがれ!延光の勝手さにも呆れてしまった。
「ちょっと、延光君!それを三等分にしたら、あたしの自転車に重りが付くって事だよね?
あたし嫌だよ!それ!」
 はっきり言ってやらないと、こいつは絶対譲らないだろうと思ったからあたしは言ってやった。
「のぶちゃん。確かに、葵ちゃんの言う事は正しいと思うよ?勝手に持ってきて、皆で持とうだなんて虫が良すぎるよ……」 
 隆言ってやれ!あたしは心の中でそう呟いた。が、
「ボクとのぶちゃんで持つと言う事で良いじゃない?それで決定と言う事で。ところで、のぶちゃん。いつから起きて廃材置き場に行ってたの?……」
 あれ?ってことは、あたし一人が持たないって事?隆は延光の方を持つって事?何だか仲間外れみたいじゃ無いか……そう思ったけど、今自分が発した言葉を引っ込める事なんて出来無いし、もう、なるようになれって事で、あたしは二人の会話の後姿に着いて歩くだけになってしまった。

「そんでは、いってきま〜す!」
 あたし達三人は、おばさん達より先に旅立つ時間になったので、まだ休んでいる子達には挨拶できなかったけど、行って来ますと言って家を出た。
「気をつけてね?」
 そう言って送り出してくれたのは、亜希子さんだった。
 昨日の夕飯の残りを朝御飯として用意してくれたから、亜希子さんには本当に感謝!実の所を言うと、朝飯抜き。覚悟の旅立ちだったのである。でも、腹が減っては戦は出来ぬ!ですからね〜なんて言葉が頭の中に浮かんでたり……ありがたく頂戴致しました。
 さて、自転車置き場に到着。天候良好!全く良い感じの滑り出しだ。
「おい!喝入れていこや!」
「何?その喝って?」
 突然の延光の申し出に、あたしは首を捻った。
「はいはい〜手を出して!」
 延光は、あたしの質問なんか無視して、腕を掴んでそう言うと、三人が輪を描くようになった形になった。これって円陣ってやつですか?あたしは、この体育会系という言葉に並ぶような事をやらされるとは思ってなかったので、一瞬身を引きそうになったが、
「葵っち!逃げんなよ?」
 て、肩を掴まれて、結局、
「レッツ・トライ!ネバー・ギブアップ!」
「お〜!」
 延光の言葉に乗せられて、掛け声掛けちゃってた。全く乗せるの上手いやこいつは!
 各々の自転車に荷物を載せ。そして、跨ると、取り敢えず、延光を先頭に自転車は出発した。あたしは隆の後ろを着いて行く形になる。そして、昨日延光が地図を見て考えたルートとして、岡山駅を取り敢えず目指すと言ってた事を思い出した。
 そこから、宇野港とやらを目指す事になる。
 地図上で見た限りでは、二十キロ以上有るとみなされる。
「は〜」
 ま、体力無しって訳でも無い。まだ若いあたしが溜息ついてらんないんだけどね?そこで思わず苦笑いしてしまった。
 景色はドンドン過ぎていく。流れ去る時間が止められないように、まるで、景色も止める事が出来ないのでは無かろうか?そんな事を思う。
 帰ってきたら、この街並みの何処かが変わってしまってるのではなかろうか?常に変わらないものなんて無い。緑の木の枝から零れてるキラキラ光った光を感じながら、あたしは過ぎ去る光景を目に焼き付けていた。

 岡山駅まで南下した頃にはもう、陽も完全に昇っていた。あたしは、此処から先、どんな事が待ってるのであろうか?なんてちょっとワクワクする気持ちを抑えて、隆の後ろを走った。
 そして、左手に岡山城を、遠めで見ながら自転車を漕ぐ。ああ、あの場所に一度訪れたんだなぁ〜なんて感慨も有ったりする。
 街中のゴチャゴチャした道をあたしと、延光、隆は時々信号を気にしながら走った。
 延光はこう言いながら信号待ちをしていた。
「二号線を出てから、三十号線に入ろうと思うんやけど?それでええか?」
 岡山の地図を片手に持ち目でその地図を追う。
「それで良いと思うけど?のぶちゃんが良いと思うんなら?」
 隆はそっけなく言った。あたしには訊こうとはしなかった。そりゃそうだ。岡山っ子である延光と、隆はまだ土地勘というものがある。しかしあたしはどうだ?全く無い。だって、あたしはこの土地の人間ではない。二人ともそれを良く知っているから、問いかけないのだろうと思った矢先、
「葵っちは着いてくるだけでええよ。道なら何とかこのオレが把握してるんやからな」
 仲間外れをしてる気がしたのであろうか?一言添えてきた。
「あてにしてるから。宜しく!」
 あたしは、気にしてないよ。と言った所で信号が青に変わった。その瞬間また自転車を走らせ始めた。

 黙々と走る。景色は街中からちょっと離れたところを走ってるのが感覚的に判ってきた。
 建物の様子が変わってきたから。
 もう、陽は完全に昇りきり、背中も腕も汗だく。気持ちが悪いよ〜なんて言葉が口から漏れ出てきそうだった。真夏の陽差しが強い。こんな事なら、薬局で陽焼き止めクリームの一本でも買って来るべきだったか?なんて思う。
 あたしは、焼けると赤くならず、直ぐに黒く変色する肌の持ち主だ。塗っても意味無いかも知れないけれど、女子として気にならない訳もなかった。昨日お風呂に入った時それも当たり前の事として考えていたんだけど、実際この陽射しは脅威だった。
 あれからどれだけ走ったんだろう?腕時計は持ち合わせていない。時間というものの感覚が判別できなくなってきた。今は宇野港までの道のりのどの辺りを走ってるんであろうか?そんなことが頭を過ぎり始めた。
 と言う事は、もう、走りたくないと言う事になる……まあ、あたしは長距離より短距離向きの性格だ。だからちょっと弱音を吐きたくなってきていたのだろう。
 でも、前を走る荷物の多い延光と、隆はスイスイとペダルを踏んでいる。それを見ると負けたくないと言う気持ちも出てきた。
 あたしって意外に負けず嫌いだったんだなってこの時やっと自覚したりして。そう思って笑いが込み上り、そして、あいつらに続く勢いでペダルを思いっきり踏み込んだ。
景色はどんどん変わっていく。変わらないのは、頭上に有る青い空だけ。
そして、潮の香が鼻につく頃、あたしはやっと海が近いことを悟ったのである。

 児島半島。その山並みを見ることができる場所に、宇野港は存在した。
 潮の香りがあたしの心を鷲づかみ。そして、東京では見たことの無い海が目の前に広がっていた。
「瀬戸内海を見るのは、初めてやないんか?葵っちは〜?」
 そう、初めてなのである。
 それに、海に来る事なんて、どれだけ振りなのだろうか?幼稚園生の時、両親に連れ添ってもらって、太平洋側の湘南の海に行った事くらいしか記憶に無い。友人と行く事もなかった。海なんて、映像や、印刷物の中の物としか理解して無かった。
「キラキラしてて、綺麗だね〜」
 沖縄や、ハワイなどの南国の海に比べたら、綺麗だね。なんて到底思えないものだった。どう考えても、一般にあるだろう海の碧さではなかろうか?それに、珊瑚礁も無い、平凡な港の海。だけど、今のあたしの瞳には、これほど無いくらい、眩いくらい綺麗な物に映った。
「そう思ってもらえて嬉しいよ?」
 隆は、あたしの顔を見て、にこやかにそう言った。この海を見せたかったんだとでも良いたそうな、表情だった。それがこそばゆくて、あたしは、ちょっとはにかんだ笑顔で隆を見た。そんな時、
「さて、そろそろ時間がくるやん。切符買って用意せなあかんわ〜!」
 のんびりしてる場合では無いと慌てて、この港のフェリー乗り場へと、自転車を移動し始める。二十八分おきの航行とのことだから慌てることも無いはずなのだけど……その辺りは延光らしい計画性の無い発言だ。
 それをあたしはもう笑って促した。だって、それがこの旅の醍醐味だと知ってしまったからである。一人旅では出来ない面白さ。そして、計画性の無い旅。どちらも、今あたしは体験している。
 それも、自分の足で培っている物だ。移動しながらあたしはそれを、じっくりと噛み締めたのである。

 船内は、一時間旅行の間に必要な物しか置かれてなかった。と言っても、船旅に必要なものが何なのか?なんて知りもしなかった訳だけど。色々探索して気付くこともある。
 まったりとくつろげる船内と、ちょっと遊ぶことの出来るゲーム機の置かれている船内。
 そして、香川で有名な讃岐うどん。それを食べる事が出来ると言う船内は、この船の売りなのではなかろうか?
 ちょっと食べたいなぁなんて思ったけど、やはり、ここで使うと、お金の無駄使いになるのではなかろうか?と思い、ぐっと我慢しようと思ったが、
「なあ、葵っち?食べてかん?」
 何て延光は平気な顔をして言った。
「それ、良いと思う。食べよう食べよう」
 隆までそう言った。
「でも……」
 あたしは、まだ考えている訳である。だって、これからの旅を考えると、ここでそんなお金使う事が出来るのか心配だったから。
「お腹減ったやん!此処で昼飯や!讃岐うどんやで?食べな損々!」
 って言いながら、すでに注文している延光。そんな時しり込みしているあたしに隆が、あたしの背中を押してきた。
「何なら、僕が出そうか?」
 なんてボソッと言って来た。それは勘弁!だったので、付き合った。
 讃岐うどん。初めて食べた感想は、コシが有って、歯ごたえが良いうどん。それだった。
 汁もあっさりしてて、スルスルと喉ごしも良い。お腹の減ったあたしの胃袋はうどんで満たされ、心地良い満腹感という物を味わうことが出来たのである。
 その後もあたし達は船内を歩き回った。そして見尽くした時、
「なあ、ゲームしてもええ?」
 全部見終えた所で、いきなり延光は提案してきた。
「のぶちゃん……お金の無駄使いはしない方が後々良いよ?それより、外に行こうよ!瀬戸大橋とか鬼ヶ島とか見たいよ!」
 なんてことに話を振った。
『鬼ヶ島』?って、確か、桃太郎に出てこなかった?何てことがあたしの頭に浮かんだ。
「ねえ。桃太郎に出てくる、あの、鬼ヶ島なの?」
 早速問いかけた。
「うん」
 隆はあっさり肯定した。
「葵っちは知らなかったん?桃太郎伝説の元は、岡山では有名なんよ。岡山駅の前に銅像もあるし、きびだんごでも有名なん。桃太郎大通りもあるし、お祭もある!」
 延光も、ゲームの事をすっかり忘れたかのようにそう言って割って入った。
「あ、ごめん……全く知らなかったよ」
 あたしは、自分の知識の無さにちょっと恥らったが、
「普通知らないんじゃない?ボクも、小学校上がって知ったくらいだもの」
 と隆は言った。
「ふふふ〜〜〜ん。オレなんか、幼稚園上った頃には知ってたわ。駄目やなぁ〜お二人さんは!」
 なんて、『今の今までゲームを口にしていた者の言葉かい!』突っ込みを入れたくなったけど、ま、延光に言葉では適いっこないから止めて置いた。
「んじゃ、外行こうか?瀬戸内海に、イルカとか居るかも知れへんし?ゲームでお金くい潰すのもどうかなぁ〜やしな?」
 駄洒落かとも思ったが、延光の一声で、三人揃って、室内を出た。
 空は、青々と広がって、旅日和。本当に出だしの良い天候に見舞われた。
 雲はゆっくりと形を変えながら東へと流れている。様にあたしには見える。こんなにじっくり空を観察することなど無かった。こういう時間もまた必要なのかも知れないなぁ〜なんて思う。
 風は適度に吹いていて、心地良い。あの髪の長かった頃の自分だったら、仄かな潮の香と、シャンプーの香りが混ざって凄く複雑な物を感じてたかもな?と思う。髪を切っていて正解かも?そんなことを考えた。
「ほら、あれが、瀬戸大橋だよ!」
 隆が、指をさして言った。
「大きいね!」
「それだけで驚いちゃあかんで!これは鉄道・道路併用橋としては世界最長って言われとるんや!」
「へえ〜」
 あたしは、色んな島をまたいで架けられているこの橋に見入った。そして、大変詳しく調べている延光にも感心した。
「のぶちゃん。よく調べる時間があったね?いつ調べたの?」
 その言葉に対して間髪入れずに、
「昨日!」
 あ、ははは。一夜漬けかいな……隆の問いかけに、ふんぞり返るように答えた延光を見てあたしはなんのこっちゃと、今感心したばかりなのにと、ちょっと空笑いした。
 あたしたちは、その後何も言わずにジッとしたままその光景を見ていた。
 風があたし達を包み込む。周りの観光客を取り残したかのように…… 
 そして、時間はただ一定方向にのみ過ぎて行く。あたし達は、このまま香川県、高松港へと運ぶこの船の上で、それぞれの思いを抱えて乗っている。それは、今この時点では計り知れない物だった。

「あ、鬼ヶ島や!」
 高松港に近くなってきた頃、延光が今までの沈黙を破った。三人三様、手すりにもたれ掛かって、思いに耽っている時の事だった。
「どれ?」
 あたしは目を凝らして、あの童話に出てくる鬼ヶ島を是非見たいと身体を前に乗り出した。
「ほら!あれや!」
 ぼうっと見えている小島がそれなのかしら?と、あたしは興味深々だった。
「通称鬼ヶ島。でも、本当は女木島と言うらしいんや。あと、男木島も並んで在るらしいんねんけど……どっちがどっちかまでは判らん!」
 つまり、見た事は無かったわけね?あたしは、また乾いた笑いをした。だけど、
「……鬼は、本当に人間に悪戯をしたかったんやろか?ただ寂しかっただけや無かろうか……?」
 延光はボソッとそうこぼした。あたしは耳を疑った。だって、あの、延光が、悪役である鬼に対して『寂しかった』何て言葉を吐くとは信じられなかったからである。
 悪役を卑下すると思ってたのに、この言葉は違和感が有りすぎて、あたしは思わず、
「鬼は悪人でしょ?桃太郎は正義の味方じゃない!何言ってるのよ?」
 らしくないから、そう問いかけた。
 でも、延光は、それに対して、何の返事も返さずに、寂しそうに笑って、
「そうやな……」
 とだけ言って、笑った。
 何か言いたげなのに、何を言いたいのか判らない。だって、あたしは表面上の延光しか知らないから……延光が、一人になったところを見たことが無い。一人でいる時の顔を見た事がない。だから、あたしはその後何も言い返せなかった。
「後少しで着くね?見るものも無くなってきた事だし……」
 隆が、そこで雰囲気を変えるように、言いかけた瞬間、『バシャン』と言う物音が聴こえた。
「何?今の音!」
 あたしは、不思議になって周りを見渡した。
 すると、音の原因がわかった。
「イルカだ〜〜!」
 隆が、凄く嬉しそうに、乗り出して見ていた。あたしも、それに便乗して慌てて身体を乗り出す。
 イルカの群れが、船の周りで飛び跳ねながら泳いでいるのが判った。水族館で見るイルカじゃなくて、自然に生きている野生のイルカ。いるんだ、本当に!何て思いながら見ていた。すると、
「ほらほら!のぶちゃん、見なくちゃ!」
 まるで、延光の心にある何かの不安を癒すかのように現れたイルカだよ?みたいな言い回しで、隆は、延光の肩に腕を回して言った。
 延光は、その事を理解しているのか?いきなり、
「おっしゃ〜!着いて来いや〜!」
 なんてはじけて言った。
 あたしはそれを微笑ましいとも思ったし、あたしの知らない何かが進行してるとも思い、嬉しいのか寂しいのかはっきり判らない複雑な心境で、高松港に着くまでイルカ達を眺めていたのであった。












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