ファイト! かりんの青春日誌(83/88)PDFで表示縦書き表示RDF


ファイト! かりんの青春日誌
作:天野美里



離の章 運命の瞬間 2


「星野かりん!」
 と声高らかに呼びあげられたのは、なんとかりんの名前であった。
「やった――!!」
 かりんはうれしさのあまり、思わず飛びあがっていた。会場に割れんばかりの拍手が起こり、パチパチとフラッシュが焚かれた。さゆりと朋美は手を取りあってわがことのように喜んだ。
 二人とは離れて座っていた星野夏子は目に涙を浮かべ、静かに微笑んでいた。こうなることがはじめからわかっていたならば、あれほど反対をすることもなかったのにと夏子はひそかに悔いていた。これからはもっと娘の考えを尊重してやろうと、彼女は決意した。
 ステージではかりんの頭の上に王冠が載せられていた。
「おめでとう!」 
 審査員長がかりんを祝福した。
「ありがとうございます」
 嬉し涙のかりん。
「このわたしがグランプリやなんて……」
 かりんは感慨深げに会場を眺めわたした。すべての視線が彼女一人に集中し、かりんは胸の内が熱くなった。
 これでかりんは女優への一歩目を踏みだしたことになる。それに超人気アイドル、川村みゆきとの共演である。実績と人気において無名のかりんはとうてい川村みゆきにかなうわけがなかったが、かりんにとってこれは大きなチャンスであることには変わりなかった。人気アイドルの映画とあってそれだけに多くの人が観るであろうし、かりんは注目されることになる。
 実際そのとおりになり、主演をもしのぐ存在感を見せつけたかりんは、この映画を足がかりに他の映画やテレビドラマに出るようにもなり、一歩一歩と本物の女優としての道を歩んでいくことになる。年齢に似合わない妙な色気があることからむずかしい役をこなすようにもなり、同時に抜群の身体能力と少林寺拳法の経験がものをいい、アクション映画に出演するようにもなっていく。
 もともとが負けず嫌いな性格がうまく作用し、かりんは演技力を高めることに情念を注ぎこみ、観客の反応がじかに感じられる舞台にも積極的に立つようにもなる。
 もう一つ怠らなかったのは、英会話の勉強であった。留学時に自分の語学力のなさを痛感した彼女は、限られた時間の中で英語に取りくみ、もちろんそれは将来のハリウッド進出を見すえてのことであった。












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