離の章 運命の瞬間 1
さて、別室にて行なわれていた審議がことのほか難航していたのは、それだけに十二人の少女たちのレベルが高かったからだ。彼女たちが応募総数二万人以上から選ばれただけのことはあった。
その中でもひときわ異彩を放っていたのは、関西地区を勝ち抜いてきた二人だった。つまり、吉沢えり奈と星野かりんである。
ただ、この二人の持ち味はまるで正反対だった。決められた台本どおりの芝居であれば、吉沢えり奈のほうが何枚も上であったが、自由演技に関しては星野かりんのほうが意外性に富み、見る者を引きつける力があった。存在感とアピール度においても星野かりんに分があった。
無難で確実な線でいくならば吉沢えり奈を選ぶべきだが、将来どう化けるか予測できない星野かりんの不確実性に賭けてみたいという審査員も少なからずいた。
確実にいくか、不確実性を取るか、審査員たちはあれやこれやと論じあい――そして、長い審議のあとについに結論が下さた。
審査結果の発表のために、ステージ上に並ぶ十二人のファイナリストたち。
「みなさま、大変長らくお待たせ致しました」
明朗な声でいい、観客席を眺めわたす司会者。いっせいに構えるカメラマンたち。
「では発表します。『押忍! 空手少女』の主演の親友役にみごとに選ばれたのは――」
といったきり、司会者は効果的にわざと間を持たせた。会場がしーんとなり、一瞬にして緊張感に支配された。
ステージ上の少女たちはみな表情を固くする。天に祈る気持ちで目をつぶるかりん。たとえグランプリを取らなくても、ほかの役で映画に出演するチャンスはあるようであったが、かりんはそんなレベルで妥協はしたくなかった。選ばれるからにはやはり大賞でなければならなかった。
「神さま、お願いです。かりんが選ばれますように」
客席のほうでさゆりが手と手を合わせていうと、朋美が、
「かりん先輩が選ばれますように」
とくりかえした。
司会者はファイナリストたちをゆっくりと見回したのち、おもむろに口を開き、そしてグランプリを発表した。 |