離の章 健康的な太もも
ステージ上では受験者は一人ずつ演武を披露していったが、中には武道経験のない者もおり、そういう人の動きはまるでブルース・リーかジャッキー・チェンの物まねのようだった。
やがてかりんの出番となった。
前の子が退場をすると、かりんは大車輪をしてさっそうと舞台に登場した。スカートがめくれ、健康的な太ももがあらわになる。
「おお――」
男性を中心にどよめきが起こる。
少林寺拳法ではなく空手の映画であったので、かりんは合掌礼をせずにそのまま演武に入った。スピードよりも動作を大きく美しく見せることに心がけ、くるくると後ろ廻し蹴りも放ち、それは演武というよりも、ある面において華麗なダンスのようでもあった。
何度も足を上げてはおじさんたちへのサービスをし、実際、審査員の中にはかりんのペースにすっかり乗せられて、知らぬ間に演武そのものよりもかりんの下着に気を取られているのもいた。
かりんは熱いほどにその視線を感じとり、ある種の陶酔感を味わっていた。同時におじさんたちがポカンと口を開けているのを見て、おかしさもこらえなければならなかった。
演武が終わると、盛大な拍手が沸き起こった。他のファイナリストの場合はたんに形だけの拍手であったのに対して、かりんへの賛辞は観衆が本当に喜んでいたからだ。
「押忍!」
かりんは空手流のあいさつをし、客席に向かって軽く手を振りながらステージを下りた。
またしても困ったのはえり奈であり、彼女はこのやりにくい状況で演武をしなければならなかった。もちろんだれも真剣に自分を見てはおらず、えり奈は肩を落として舞台を下りることになった。星野かりんの武道着を隠すなんて子供じみたことをしなければよかったと、えり奈はいまさらながら後悔をしていた。
「はい、ありがとうございました!」
全員の演武が終了した時点で司会はいい、審査員たちは別室へ移って審議に入ることになった。その間、しばらく休憩がはさまれた。
「先輩、すごかったよ!」
大はしゃぎをしていたのは朋美だった。控え室前のろうかでのことである。
「うん、めっちゃしびれた」
さゆりも興奮をしていた。
「えへっ」
と、かりんは照れ笑いを見せた。 |