離の章 不合格……? 1
二次審査からあっというまに三週間が過ぎた。合格通知があるとすればすでに届けられているはずなのだが、なにも来ないところを見ると、どうやら不合格であったようだ。
「ねえ、かりん。もうほんまにええ加減にしてよね」
娘がどれだけ落ちこんでいるかも知らず、母の態度はことのほか厳しかった。
「お母さんはあんたの将来をどれだけ心配してるのか、あんたもそろそろわかってよね」
といい、はあとため息をつくのが決まりのパターンだった。
いつもであれば反論をするのだが、このごろはそんな元気もなく、かりんは黙ってさっさと自室に逃げこみ、なるべく母と顔を合わせないようにしていた。
学校の授業も上の空に聞き、いまのかりんはまったくかりんらしくなかった。クラスメイトはみんな受験勉強に忙しそうだし、かといって拳法部の練習に参加する気力もなく、かりんは自分の居場所さえも失っていた。
「あ〜あ」
竜介といつも過ごした公園のベンチに座り、かりんはぼうっと考えごとをしていた。
「人生はなにかをするためにある」
とは有田先生の言葉であるが、自分の場合それは女優になることだと、かりんはついこの前まで信じて疑うことはなかった。それがどうだ。オーディション事務局からはなんの知らせもなく、かりんは自分の夢に対して確信が持てなくなってしまっていた。
「あ〜あ」
もう一度声をもらす。
すでに二月の半ばである。大学入試センター試験もとうに終わり、いまさら受験勉強をしたところで間に合わないだろう。一年浪人するのも面倒だし、いっそフリーターにでもなってのんびりしようかとさえ思った。
「ああ――! もうっ!」
考えがまとまらず、かりんは髪をくしゃくしゃとした。のっそりと立ち上がり、とりあえず帰ることにする。
「ただいま〜」
と暗い玄関を開ける。母はまだ仕事から帰宅しておらず、かりんはくつを脱ぐと自分の部屋に入り、制服のままベッドに倒れこんだ。
「先輩……」
かりんは横目で卓上に置かれた竜介の写真に目をやり、ぼそっとつぶやいた。
「わたし……これからどうすれば……」
が、写真の竜介はさわやかに微笑んでいるだけでなにもいわない。
気がつくと、かりんは軽い寝息を立てていた。
それからどれだけの時間が経ったであろうか、はっと目を覚ますと、部屋の中は真っ暗だった。時計を確かめるが、暗すぎてはっきりしない。
「お〜い、かりん」
とだれかが自分を呼ぶ声があまりにも竜介に似ていたので、かりんはドキッとした。
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