破の章 有田道場
夏合宿を境に、かりんは少林寺拳法に対してなお一層の情熱を見せるようになった。有田は神戸市内に道場を開いていたのだが、かりんは竜介とそこへ通うようにもなっていた。場所は市立体育館の一区画にあり、二人は自転車でそこまで行った。
あれ以来、二人の仲ももとのとおりに戻っていた。夏休みで竜介は朋美と顔を合わせる機会がめっきり減ったのも、消極的な理由にはなっていた。竜介とかりんの家同士がわりと近かったのも、かりんには有利だった。
とはいえ、竜介は以前ほど朋美に興味を感じていなかったので、かりんはそう心配をする必要もなかった。まるでひとときの高熱が引いていくように、竜介の朋美への気持ちもどこかへと消えていったようだった。
それよりもかりんと竜介には当面の目標があった。二人は少林寺拳法の夏季総会に出ることに決め、それに向けて組演武の練習に励んでいたのである。かりんがどうしても出たいと竜介にねだり、竜介は引退前の最後の思い出として、かりんといっしょに出場することにしたのだ。
有田道場はまるで百鬼夜行の世界だった。いろんな化けものが道場内をうろうろし、かりんは恐ろしい場所に迷いこんだかのような気分になった。かつては暴走族の総長であったという人、暴力団のちんぴらのような男、握力が異常に強いおっさん、空手大会のチャンピオンなど、さまざまな奇妙な人物がいた。他武道の人間も平気で出入りし、みな盛んに技を交換しあい、道場は活気にあふれていた。 |