破の章 乱捕り大会
全部員は八つのチームに分けられ、トーナメント方式で試合が進められた。有田が審判につき、各チームは勝ったり負けたりしながらも健闘し、大会はおおいに盛りあがった。
珍事件が発生したのは、後半にさしかかったころだった。
「えっ!?」
かりんがわずかに動揺を見せたのは、自分の相手として出てきたのは、ほかならぬ竜介であったからだ。彼も驚いているふうだった。
互いに合掌礼をすると、恋人たちはそれぞれ左前中段に構えた。部員たちはやじ馬根性まるだしに、そんな二人をはやしたてた。当の二人はじっと見つめあっていた。もちろんその視線は恋する男女のものではなく、これから戦おうとするファイターのそれだった。
竜介はじりじりとかりんに詰めよった。かりんはごくりとつばを飲みこみ、その威圧に耐えきれずに、押されるままに後ろに下がった。
「ふんっ!」
竜介は含み気合いをかけ、かりんの顔面を目がけて数発のジャブを入れたのち、つづけざまに右の廻し蹴りを放った。
「きゃっ」
とかりんがあわてたのは、上体のバランスを崩したからだったが、
「あっ!」
と部員たちが声を上げたのは、つぎの瞬間、床に沈んだのは、かりん――ではなく、主将のほうであったからだ。彼は股間を押さえ、しゃがみこんでいた。どうやらかりんが上げた足がきれいに彼の股間に決まったようであった。
もちろんかりんの勝ちである。仮にこれが実戦であったとしても竜介の負けであるといえよう。自分の急所も守れずに、どうして主将が務まろうか。
ことの意外さとおかしさに気がついた部員たちはいっせいに手をたたき、爆笑をした。なかには腹をかかえて床に転げまわるのもおり、竜介は苦笑いするほかなく、調子に乗ったかりんはガッツポーズをした。竜介とかりんの感情のもつれを知っている女子たちは、かりんの勝利をわがことのように喜んだ。 |