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ファイト! かりんの青春日誌
作:天野美里



破の章 かりんの復活 


「すごーい! お母さんもそんなときがあったんですね」
 と目を丸くしていたのは、かりんだった。
「あたりまえじゃないの。わたしだって女性ですもん」
 腰に手をあて、福本先生はえっへんといばってみせた。
「で、そのコンクールのあとに出会った人と結婚したのですか」
「うん。あとというよりも、コンクール前からずっとわたしを支えてくれていた人といっしょになったの」
「コンクール前からずっとって、ひょっとして有田先生(お父さん)のことですか!?」
「違うわよ。あのとき付きっきりでピアノの指導をしてくれた音楽の先生が、わたしの主人になったの」
「お父さんとはなにもなかったのですか」
「あっはっはっ、あるわけないでしょ」
 福本はおかしそうに笑った。有田が変わり者であるのはいまもむかしも一貫しており、とてもではないが、二人のあいだに恋が生まれるような雰囲気は一度もなかったという。やはり男と女というよりも、“同志”という感じなのだろう。それもいまでは――少林寺拳法という――本当の同志になっていた。
 福本の拳法歴は有田ほど長くはなく、彼女は四十になったときに始めた。有田になんとなく誘われ、見学するうちに興味をいだき、気がついてみると道着をまとっていたのは、かりんとまるっきり同じだった。
「さあ、練習に戻りましょう」
 かりんが元気を取り戻したと見てとったお母さんは、かりんの背中をぽんとたたいた。
「同じ土俵になっちゃうけど、演武で黒田さんに勝ってやりなさい」
 福本はかりんにとりあえずの目標を与えてやった。
「うん、がんばってみる!」
 瞳に復活の色を浮かべ、かりんはさっそうと立ちあがった。そのタイミングに合わせるかのようにセミがいっせいに騒がしく鳴きだした。
 最終日の発表会まで、まだ時間はある。これまで浪費したエネルギーを取りかえさなければと、わずかなあせりがあった。実力のうえでは向こうのほうが数段も上位だった。が、まったく勝ち目がないわけではない。残された時間内で、できるかぎりの努力をするのだ。
 発表会は先輩たちによって審査され、オリンピックにならって、優秀な組に金メダル、銀メダル、銅メダルが授与されることになっていた。もっともメダルといっても本物の金銀銅ではなく、先生が特別に用意した鉄製のものであった。
 まるで人が変わったかのようにすっきりした表情で戻ってきたかりんに驚くと同時にほっとしたのはさゆりだった。
「よし、がんばるぞ!」
 かりんは気合いを入れたが、さゆりは呆然とするばかりだった。が、あとから入ってきた福本を見て、すぐに事情を察し、
「うん、がんばろ!」
 とさゆりはかりんに応えた。
 二人は通常の練習が終わってからも熱心に演武に取りくんだ。厳しい練習のあとであるにもかかわらず、二人は疲れを苦にもしないほどに気力が充実していた。どうせ合宿が済めば長い夏休みが待っているのだ。いま少々無理をしたところで、数日後には好きなだけ体を休められるだろう。
 そして二人の気迫が伝染したかのように、これはうかうかしていられないぞとばかりに、他の部員たちも負けじと演武の練習に精を出した。
 当日を迎えた――。
 が、本題に入る前に、演武発表に先だって行われた剛法の乱捕り大会についてすこしふれておきたい。












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