守の章 援助交際・本番 2
男はかりんの手を取ったかと思うと、いきなりキスを迫ってきた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。シャワーぐらい浴びさせてよ」
かりんは男のあぶらぎった顔を押しかえし抵抗をしたが、男はへらへらと笑うばかりだった。
「おれは汗臭いまま抱きあうのが好きやねん」
そういいながらも、男は早くも服を脱ぎはじめていた。
汗臭いのがいいといわれても、季節は初夏である。しかも、きょうは異常に気温が高かった。外はそろそろ暗くなっていたが、依然と蒸し暑さがねっとりとまとわりついてくるようであった。こんなのでセックスをしたら、汗と汗がねちゃねちゃとからみあって気持ちがわるいだけではないか。この男はいったいどんな神経をしているのだろうか。かりんはやっぱりシャワーが浴びたかった。
「わかった。もう一万余分に出すから、このままやらせろや」
男はいったが、かりんは首を横に振り、
「二万円やないと、いやっ」
とすかさず返答した。がまん料にしては一万円では足元を見られているようで、とうてい納得できるわけがなかった。
「ふん、欲の深いやっちゃ。でも、まあええわ。全部で五万払ったるわ」
男はちっと舌打ちした。
かりんはスカートとブラウスを脱がされると、ベッドの上に寝かされた。男はかりんの肩を押さえつけ口に舌を入れてきたが、かりんはそのあまりのねちっこさに息がつまりそうだった。男が顔を近づけてきたときの臭い息に胃までがむかむかしてきた。
男は舌と手を使ってかりんの全身を愛撫したが、不快感が高まるばかりで、かりんはひたすらにことが早く終わるのを祈るだけだった。だいたい中学二年の夏に処女を失って以来、かりんは一度もセックスを気持ちいいと思ったことはない。
「あっ」
と声を出してしまったのは、男が股のあいだに顔をうずめてきたからだ。だが、かりんのリアクションに興奮をしたのか、男はよけい執拗に攻めてきた。かりんはぎゅっと目をつぶり、身をこわばらせてそれに耐えた。
やがてそれにも満足したのか、男はかりんの足を大きく広げ、自分の固くなった物を乱暴に挿入してきた。かりんがあせったのは、男がコンドームをつけたのかどうか確認できなかったからだ。かりんはあわてて男の物を抜こうとした。
「こらっ、なにしてんねん」
男はかりんの腰をぐっと引きよせた。
かりんはさらに抵抗をすると、男はかりんのほおを平手で引っぱたいた。
「じっとせんかい!」
どすのきいた声で男は怒鳴り、急に怖くなったかりんはふうっと全身の力をゆるめ、男にされるままになった。男は機械的で動物的なピストン運動のあと、うっとうめき声をもらし、かりんのなかで果ててしまった。
かりんは膣内にドクドクと脈打つものを感じた。男はかりんに折りかさなるように体重を乗せ、しばらくぐったりとなった。かりんは放心状態で天井を見つめていた。男はペニスを抜いた。それでもかりんは動く気になれなかった。
男はかりんのお腹になにかを放った。かろうじて顔を上げると、それはコンドームであることがわかった。どろりとした液体がこぼれてきた。男は自分の性器だけをふくと、そのティッシュもかりんに向かって投げ、さっさと服を着た。
「ほらっ、きみの報酬や」
財布から一万円札を何枚か抜き、男はかりんのほうにばらまいた。札はひらひらと落ち、それらが床に着く前に男は部屋から出ていっていた。
かりんは無気力に上体を起こし、ベッドから下りた。万札を数えた。約束より二枚足らず、三万しかなかった。そう気づくと、かりんはものすごく悲しい気分になってきた。
「うう……」
自分でも知らないうちに涙があふれていた。胸が痛んだ。悔しさなのか情けなさなのかなんなのか、自分でもわからないどろどろした感情がお腹のなかでぐちゃぐちゃに渦巻いていた。三枚の薄っぺらな紙切れを握りつぶし、かりんは肩を震わせ、しくしくと泣きつづけた。
(わたしの人生って……)
かりんはすっかり絶望しきっていた。 |