破の章 新しい彼氏
入部してちょうど一年がたち、かりんはいまでは茶帯になっていた。
なぜか援助交際に対する興味はだんだんと失せていき、彼女はごくふつうにアルバイトをするようになっていた。家の近所のドーナツ屋で働き、バイトをするのはおもに土日であったが、たまに平日にも仕事に入ることがあった。
お客さんを迎え、注文を取り、レジを打ち、品を渡す。接客用の笑顔を浮かべ、お辞儀をする。なんでもマニュアルどおりにすればよく、なにもむずかしいことはない。店長は優しいし、バイト仲間もみんな楽しい人ばかりだった。援助交際ほどの収入はなかったが、以前に比べて服やアクセサリーは欲しいとは思わなくなっていたので、とくに不足を感じることもなかった。どうしても欲しい物があれば、母親にねだって買ってもらえばよかったのだ。
かりんの関心はいまや少林寺拳法にあった。その魅力に取りつかれたといってもよかった。二年つづけて同じクラスになった善野さゆりと、休み時間になれば技の話で盛りあがることがあるほどだった。
だが、もうひとつ、かりんにとって大きな関心事が増えていた。彼女に新しい彼氏ができたのである。相手は少林寺拳法部の先輩だった。三年生、今年の主将である。前主将の北沢は地元神戸の国立大学へ進み、そこの拳法部に入部した。その北沢と交替して、かりんの彼氏が新しい主将となったのだ。
高杉竜介――。北沢ほど型破りではなかったが、竜介もまた大きな器を予感させる男だった。長身で筋肉質である点では北沢と変わらなかったが、容貌は北沢のように秀麗ではなく、竜介の眉毛は太く、目は細く鋭く、りりしく引きしまった顔だちは侍を思わせた。 |