守の章 少林寺拳法部ってどんなとこ? 2
「ねえ、少林寺拳法部って、どんなとこなん?」
親友の善野さゆりにたずねたのは、昼休みのときだった。かりんはいつも彼女と校庭の木陰に陣取り、弁当を食べた。この日も、運動場では早くも食事を終えた男子生徒たちがサッカーボールを追いかけて走りまわっていた。
「めっちゃ楽しいとこやで」
さらりといい、さゆりはウィンナーソーセージをひと口かじった。
彼女の髪もかりんと同様に茶色く、ただ異なったのはその長さであり、ポニーテールに結ったその髪は背中のなかほどまであった。くりくりした瞳はなにに対しても好奇心を示し、口はおしゃべり好きでよく動いた。
「なによそれ。もったいぶらんと、もっとちゃんと教えてよ」
かりんは親友にたたみかけた。
二人は小学校からいっしょであり、中学では同じ演劇部だった。が、高校に入るとさゆりはいきなり拳法をやりはじめ、かりんは取り残されるかたちとなった。たしかにさゆりは毎日楽しそうであり、かりんはほのかに裏切られた気持ちにもなり、これまではあえて少林寺の話題を避けてきた。が、きょうは違った。かりんは拳法部のどんなことでも知りたかった。
「ねえ、有田先生のこと“お父さん”って呼ぶのは、ほんまのことなん?」
かりんは質問を変えてみた。
少林寺拳法部には顧問である有田以外にもう一人、福本佳代子という副顧問がいた。いつも柔和な笑みを浮かべた丸々とした女性であったが、有田と並べば二人は本当の夫婦に見えないこともなかった。
噂にのみ聞き、かりんには信じられなかったのは、部には奇妙な習慣があることだった。なんと、有田は部内では“お父さん”と呼ばれ、福本は“お母さん”であった。
はじめはだれもが抵抗を感じるという。が、両先生の人柄にふれるうちにその抵抗感も薄れ、いつのまにかお父さんお母さんという呼び方が口から出ているありさまだった。
「ふーん、そう」
かりんは要領をえない表情で返事をし、つぎの質問に移った。
「北沢先輩ってどんな人か教えてよ」
「めっちゃ格好ええ人やで」
またしてもさゆりの答えはあっさりしていた。ふだんのおしゃべり好きを考えると、あまりにも淡泊だった。
「どういうふうに格好ええの?」
「さわやかで優しくて、いつもまわりの人に気を使うとこが格好ええねん」
「ふーん、そう」
かりんはとりあえず答えたのは、さゆりの説明に物足りなさを感じたからだ。やはり放課後を楽しみにするしかないようであった。 |