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  東方起承転 作者:紅山車
まるきゅー話。
9話
「へぇ、外の世界から来たんだ」
握手とサイン(色紙が無いから、と腕にしてもらった。「ちるの」が「さるの」になっている事や、「これで永遠の思い出ね!」と、満面の笑みで言った事は省く)を終え、俺とチルノはお互いの事を少し話していた。
「おう。見るもの見るものが新鮮で、嬉しくて困る」
俺がそう答えると、チルノは怪しげな笑みを浮かべ、言った。

「じゃあ、「弾幕」も知らないでしょ」

「……弾幕?」
聞き覚えの無い単語に、思わず聞き返す。するとチルノは、喜々として



「あたいが……教えてあげる」
自身の右手上で、何か光り輝く球を浮かべた。



何だあれ。
それが、第一印象。
そして、その印象が消え切らないうちに、その野球ボールより一回り大きいぐらいの球は、

こちらに飛んできた。

「うぉぉ!?」
顔面に飛んできたそれを、何とか避ける。標的を失った球は、俺の背後に立つ木に直撃した。
よく見ると、木の表面が少しえぐれているのが見えた。
あれが顔に当たったら。
考えるだけでも、ぞっとする。
「いきなり何すんだ、おい!」
チルノに向き直り、怒声をあげる。が、当の本人は悪びれない様子で、
「あたいの攻撃を避けるなんて、まぐれとは言えやるじゃない!」
とか言っている。
「チ、チルノちゃん!駄目だって、コーイチにそんな事……」
「いいのよ。あたいがさいきょーだって事を、今度は紅魔館と博霊神社に言い触らしてもらうんだから!人里だけじゃまだまだよ!」止めるリグルの言葉も聞きはしないようだ。
「あ、あのなぁ」
「さっきはよく避けたわね」
俺の言葉が遮られた。
「でも、次は……」
その瞬間、だ。



「避けられないわよ」
先ほどの球が、チルノの周囲という周囲を囲んで居たのは。



弾「幕」。
言いえて妙なもんだ。
あんなもんがこっちに来たら、避け切れる訳がない。最悪死ぬ。
「何秒耐えられるかしらね?
五秒でも耐えられたら、あたいの家来にしてあげるわ」
事実上の死刑宣告に、身が震える……たかだか俺の背丈の半分程度しかない、少女に、だ。
「さぁ、行くわよ!」
こうなったら──、
避けるしかない!
ぐっ、と膝を軽く曲げ、身を低くする。一発でも当たれば、後ろから第二撃、第三撃が来る。
失敗は許されない。
そうしている間に、チルノが左手を上に挙げる。攻撃開始の合図と見て、まず間違いない。
来る──!
「行っ──」
左手が下に降ろされ──



「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!」


なかった。
その前に、チルノの身体が横に吹っ飛んで行ったからだ。少し経ってから、弾幕達も姿を消して行った。
唖然としていると、すとり、と、誰かの足音が、左から聞こえた。
「君。怪我は無かったか?」
リグルやルーミアのような、少女ではない。
青い帽子を被った、銀髪の女性。
彼女はどうやら、チルノに飛び蹴りをかましたようであった。
「全く……懲りずに騒ぎを引き起こして。怪我は……ん、無いみたいだな。安心した」
そう言った後、彼女はリグル達の方を向き直した。
「お前達。人を襲うな、と、何度言ったら解るんだ?」
雰囲気で解った。
説教タイムだ。
リグル達も、いつの間にかガクガク震え出した。ルーミアだけは、まあ、いつも通りだが。「大体お前たちは、だな」
「あ、あのー」
「ん……何だ?何処か痛むのか?なら人里に戻ってからにしよう。今はこの悪ガキどもを」
「それなんですけどね。リグルとルーミアは、何も悪くないんです……それどころか、俺を助けてくれて」
「……へえ?珍しいな」
「えぇ。ですから、えぇと、その二人は解放してやってください」
「……ふむ、そうだな。すまなかった」
そう言うと彼女は、二人に向かって頭を下げた。
「い、いや、ボクは何も……」
「けーねがあやまったー♪」
彼女は頭を上げると、顎に右手を添え、思案するようなそぶりを見せた。
「ふむ……そうだな。二人共、後で私の家に来るといい。少年の治療のついでだ、詫びとして、茶でもご馳走しよう」
「え……いいの?だって、ボクは……その、妖怪で」
彼女はそんなリグルの言葉を吹き飛ばし、
「そんなものは関係ない。彼を助けてくれた恩人──いや、恩妖怪として、家に招待したい。それとも、ただ単に嫌か?」
「い、いや、そんな事……」
「そうか。なら決まりだな」
「おちゃかー」
と、ルーミアはやや残念そうな口ぶりでつぶやく。多分、苦いのが苦手なのだろう。
そんなルーミアを見て、彼女は
「ああ。ルーミアも来い。たいした物ではないが、菓子も用意しよう。どうだ」
その言葉にルーミアは、顔をはっとあげた。
「おかし!なら行く!」
「うん……さ、君も来い」
と、今度は俺か。
「あ、はい」
「……そういえば、見ない顔だな……名前を伺ってもいいか」
「前多。前多孝一です。」
「そうか。よろしく、孝一。
私は上白沢慧音。人里で寺子屋の教諭をやっている。気軽に、慧音、と、そう呼んでくれ」
彼女はそう言うと、右手を差し出した。俺は手を握り返し、言う。
「そっか。よろしく、慧音」
「うん。よろしく頼む、孝一。
では、行こうか」
こうして俺達は、結局連れ立って人里に向かう事となるのであった──



「あ、あたいも行く──」
「だがチルノ、てめーは駄目だ」
「!?」



……のだが、それから慧音の説教が続き、結局人里に向かったのは、それから一時間ほど経ってからであった。


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