5話
「ねぇ、コーイチ……」
俺に話し掛けるリグル。その言葉は、どこか不安げだった。
「僕が言うのも何だけど、本当にやめたほうがいいよ?妖怪に食べられに行くなんて、普通の人間のすることじゃ無い」
「だいじょぶだいじょぶ。何とかなるって」
「ならないから言ってるんだよ……」
がっくー、という感じでうなだれるリグル。どうやらリグルは、俺のような会って間もない人間の事を心配してくれているらしい。
「何でそんなに心配するんだ?まだ会って一時間も経ってないだろうに」
俺の、ふとした言葉に、リグルは少し顔を下に向けた。
「コーイチは……ボクを見ても、怖がらなかったから。友達になれると、思ったから。コーイチには生きていてほしいんだ」
「お前のどこに怖がる要素があるんだよ。むしろ驚いた人が居るという事実が俺にとっては驚きだ」
俺の言葉にリグルは目をぱちくりさせた後、苦笑いを浮かべて、こう言った。
「ありがとう。でも、この幻想郷という世界では、妖怪ってだけで差別する人も少なからず居るんだ……当然だよね。人を食べる妖怪が居るということは、それだけで人間からしたら害悪なんだから」
「………………」
「だから、死ぬなんて言わないでくれないかな」
「……馬鹿、大した事無いって」
「その根拠の無い自信はどこから来るんだよぅ……」
「いや。だってこれ、俺の夢の中の世界だろ?だったら、死ぬことなんてありえないんだから、そりゃ自信だってあるよ」
「………………ぇ?」
目を点にするリグル。何だろう、なにか悪いことでも言ったか?
そういえば、リグルも妖怪なのだろうか。後で聞いてみよう。
……自分が考えたキャラを書き綴った黒歴史ノートを見るみたいだな、とか。
そんな事を思った。
その時。
「……ありゃあ、一体」
何だ、とまで出なかった。
漆黒の塊が、空中で渦を巻いて、存在しているのだ。
やがてその黒は萎み、消え去る。それと入れ代わるようにして、何かが現れた。
「……女の子?」
少女だった。
黒を基調としたドレスに、赤いリボンが際立つ金色の髪。
形容するならば、「人形のような」、そんな少女。
その少女は、暫く辺りを見回していたが、俺の姿を見つけると、
「あ」
と、小さく声を上げた。
その調子で、てくてくとこちらに向かって歩いてくる。
「リグルちゃん、おはよ〜」
顔は俺に向けたまま、リグルに話し掛ける。
「う、うん……おはよう」
「この人は誰?」
……あぁ、俺か。
「コーイチって人。湖で会ったんだけど……ねぇ、ルーミア!早く遊ぼう!チルノももう待ってるだろうし!」
「うん。でも、ちょっとだけ時間が欲しいなぁ」
ルーミア、と呼ばれた少女は、その間、俺から片時も目を離さなかった。
ルーミアは眼光を一層鋭くした後、こう続けた。
「おやつの時間」
「ねえ、コーイチ。
貴方は、食べてもいい人類?」
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