0027* 知りたい? 知りたい!
「……!?」
狼狽した真朝は、ひどく顔を歪ませて、兎を振払おうとする。
しかしその手はかすりもせず、虚しく空を切っただけ。
兎はぴょんと空高く飛び跳ね、ふわりと足音立てずに着地した。その時、砂煙さえ巻き上がらない。
顔はすでに兎面で包まれ、あれは幻だったのかと錯角しそうになるほどである。
「ほら、見テ。この砂漠、模様があるでショ? ……風紋っていうんだけど、ボク、これ好きなんダ〜」
たしかに砂漠には風が織りなす模様がついている。
それは波うち、砂に陰影をもたらしていて、……たしかに美しい自然美だ。
けれど、真朝にはそのようなもの、今は関係なかった。
「なんでキスすんのよ?」
座り込んだままで言う。
その目は兎を見据えたまま。
兎はぴょんぴょんと飛び跳ねていたのだが、ふいに止まり、真朝の前にちょこんと座った。
「だって、キミ、泣いていたでしょウ?」
「……泣くわよ。この状況、誰だって泣きたいわよ。まだ泣き足りないくらいよ!」
「キスはね、女の子の涙を止めるにはいい方法だと、邇邇芸が教えてくれたんダ。……だからほら、もう涙は止まっているでしょウ?」
真朝は目頭を手で押さえてみるが、なるほど、新たな涙はもう出ていない。
普段の彼女なら、そんな事言われようものなら怒りはどんどんエスカレートしていくのだが、ふざけるなとか、そんな激昂する気分にはなりそうもなく、彼女自身、なぜだろうと不思議に思う。
納得がいくような、それでもやっぱり納得がいかないような、そんなあやふやな気持ちが沸々と湧いてきて、口を真一文字に結び、むっつりと黙り込んでしまった。
「ねぇ、イヤだッタ?」
兎面は首を傾げた。
眉間と目の部分に埋め込まれている宝石が、太陽を受けて煌めき、むき出しの細いキバは、水晶のように不気味に透き通って、これもまたピカリと光を反射している。
顔をしかめながら、なんでこんな変な面をつけているんだろうと、真朝は思った。
涙で歪んでよく見えなかったが、兎の瞳は、それはそれは美しかったのだ。
「……別に、イヤっていうか……でも、突然しないで。ほんと慣れてないのよ、こういうの」
「はーイ」
兎は素直に手を上げて、再び落ち着きなくぴょんと飛ぶ。
真朝はゆっくりと立ち、砂を払うと、兎の後を追っていく。
「ねぇ、それより何でこんな事になっちゃったのか説明してくれない? 私の兄やそのほかみんな……どこにいるか知ってる?」
「そうだなぁ、ボクのお家に案内するヨ。キミはそこで、全てを知ることができると思うんダ」 |