0024* カウントの謌
「ななーーつ」
カウントは、歌のように独特な節がつけられている。
――そう、古くから伝わる土着の童謡を思わせるもの。
それが頭の中に無感情な声として響いてきて、より一層得体の知れぬ不気味さを醸し出す。
真朝は運転席で自分自身を抱き締めるように縮こまり、苦悶するが、多大なストレスにより、ふつりと何を考えていいのか分からなくなってしまった。
「……やぁーっつ。…………ねえ、キミもしかして出てこないつもりなノ?」
「………………」
答えようと、口は動くが声は出ない。
と、いっても、彼女自身何と答えたのか、答えようとしたのか、混乱していて分からなかった。
「ボクが『とお』って言っちゃったら……キミ、死ぬかもしれないけど、いいノ?」
「…………死ぬ?」
突然意識は、『いやだ、死にたくない!!』という気持ちに支配される。
その顔は、まさに蒼白。
真朝は素早くドアを開けようとした。
――が、開かない。
再び、ドアのインナーハンドルをガチャガチャと引っぱるが、やはり無理であった。
(イヤッ!! 何で開かないのよ!?)
さらに涙が溢れ、視界はぼやけていく。
手を結び、ドンドンと力一杯窓を叩いた。
「……ここのつ……」
「イヤーーーーーッ!!」
あまりの恐怖に、真朝はありったけの力を振り絞り、悲鳴をあげる。
「……ねえ、どうでもいいけどそのドア、ロックかかってるヨ? 落ちついテ」
「っ!?」
相手が言うように、しっかりとドアにロックがかかっていた。
真朝は震える手でロックを外し、ドアを開け、勢い良く外へと傾れ込んでいく。
転ぶ事を覚悟していたのだが、思いもよらず、とっさに体をふわりと受け止める腕。
「……?」
視界には黒いビロードのマントがあった。そしてマントから覗く銀色の靴。
靴はガラスのようでもあり、プラチナのようでもあり、朝露のようでもあり、そして、夜に煌めく星のようでもあり……。
この世のものとは思えない、なんともいえない透明感と輝きを放っている。
そしてゆっくりと顔を上げると、目に映るのは、怪し気な兎面に覆われた顔。
「………………ちょっと、どこ触ってんのよ」
兎の手は、真朝の胸と腰の部分にあり、彼女の体を支え続けている。
「えっと、コレはアクシデントだネ。だってボク、君にさわる予定はなかったんだもノ」
「だったら放しなさいよ」
直後、手はパっと放され、真朝はバランスをくずして地面に倒れ込んでしまう。
「痛っ」
コンクリートは思ったよりも固く、膝に鈍痛が伝わってくる。
「キミ、ちょっとそこで待っててネ〜。あと1人いるから行ってくル」
兎はそう言い残し、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、前方にあるトヨタ・ハイエースに向って行った。
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