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名前のない街
作:nico



0014* 葦原中国にて…


 葦原中国あしはらのなかつくに
 またの名を中つ国。
 それは人間の住む、地上世界のことをいう。

 高天原たかまがはら――すなわち天上の世界と、葦原中国の狭間にある『緑が丘交差点』には、現在、ある1はしらの神が姿を現していた。
 ……「柱」とは、神を数える時に使う助数詞。
 神は邇邇芸ニニギみことに命じられ、こうして“問題解決”のために待機している。
 その身体から放たれる光は地面や辺りを照らしつけ、まるで小さな「太陽」のよう。
 神の名は……「天地を照らす神」そして「地蔵」として知られる猿田毘古サルタヒコ
 顔を『天狗』の面で覆い、袈裟けさ篠懸すずかけという麻の法衣を身に纏う。
 手に持つのは、『錫杖しゃくじょう』と呼ばれる金属製の杖。
 それはさながら『山伏やまぶし』のような出立ちであった。
 待ちながらサルタヒコは、ブツブツと不満を呟いた。
「……なぜ拙者がこのようなつまらぬことを……。ニニギ殿も、わざわざ拙者を指名しなくても、天児屋アメノコヤネあたりに頼めばよいのだ」
 そして続ける。
「そもそも天津神あまつかみの問題は、天津神同士で解決してもらわねば困る。……国津神くにつかみを巻き込むなと申したい」
 天津神とは高天原に降った神をさし、国津神とは葦原中国(地上)に現れた神をさす。
 国津神であるサルタヒコが天津神のニニギから聞かされた言葉は、次の言葉のみである。

【これより来る者の、後ろに座する醜女しこめを落とせ】

「わけがわからぬ……」 
と言いながら、天狗は首を傾けた。


 ――やがて一台の大型バイクが『緑が丘交差点』にさしかかるのだが、思いのほか彼は苦戦することとなる。
 そう、バイクを運転する彼こそが、最後の『あと1人』なのであった。












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