光、願いし者(1/14)PDFで表示縦書き表示RDF


この小説は友人の現代舞台小説のキャラを異世界ファンタジー舞台に置き換えて書いたものです。そのためキャラの名前がファンタジーっぽくありません、ご了承ください。
光、願いし者
作:笠城夢斗



プロローグ〜事の始まり〜


 むかしむかし、と言うほど昔のお話ではありませんが、フローディアと呼ばれる小さな国に、かわいい双子のプリンセスがおりました。
 姉の名はカエデ、妹の名はモミジ。同じ両親から生まれ、同じ環境で同じように愛されて育った二人は、十七歳になったころには、そっくりにかわいらしい少女となりました。
 やさしい風のふく春の日。今日も妹姫のモミジが姉姫カエデを外にひっぱってゆきます。
 場所はお城の裏がわの森のそば。軽快に進む妹姫のうしろで、姉姫が石につまずいて転んでしまいました。
「きゃあっ」
 すてん、ぺしょっ。じつにかわいい音を立てて、姉姫が地面につっぷします。
「カエデ!」
 前にいたモミジ姫はおどろいて振り向き、慌てて姉姫のそばにしゃがみこみました。お城の裏がわは森ばかりで兵士以外人が来ないので、あまり道が整えられていないのです。
「カエデ、大丈夫?」
 心配そうにカエデ姫の顔をのぞきこむモミジ姫。
「うん……大丈夫」
 カエデ姫はどうやら顔を地面にぶつけてしまったよう。かわいい姉姫の顔のあちこちにつく砂を、妹姫は手で払ってあげました。
 それから、申し訳なさそうに姉姫に謝ります。
「ごめんね、歩くの早かった?」
「ううん、いいの」
 カエデ姫は困ったような笑顔で言いました。「急がないと先生に見つかっちゃうし……」
 二人は教育係の先生の目をぬけだしてきたのです。
 妹姫の手を借りて、姉姫は立ち上がり服についた砂を払います。
 モミジ姫はあたりを見渡しました。
「たしかこのあたりって聞いたのになあ……」
 視線の先はお城ではなく、森。どうやら二人の目的は森にあるようです。
 森の緑は風にふかれて、さわさわと鳴っています。
 妹姫は、姉姫に言いました。
「カエデ、見分けられる?」
「ちょっと待ってね」
 目のいいカエデ姫は少し目を細めて森を眺めていましたが、やがて「あ、あれ」と森の中の一点を指さしました。
「あれ、違うかな」
「あそこらへん?」
 モミジ姫は声を弾ませて、森へ踏み込みました。
 「気をつけて!」と心配そうな姉姫の声。けれどモミジ姫は小石につまずく姉姫と違い、背の高い雑草をも平気でかきわけてゆきます。足場はますます悪くなりましたが、一向に気にせずどんどん進んでゆきます。
 やがて、モミジ姫は目を輝かせました。
「あった!」
 姉姫に聞こえるように声をあげ、目的のものへとまた一歩踏み込みました。
 すると、なぜかドンッと障害物に当たりました。
「え――あ、痛いっ!」
 モミジ姫は悲鳴をあげました。腕を急に強くつかまれたのです。
「いけませんね、プリンセス」
 と、だれかの声がしました。「お供もなしに、こんな所まで来ては」
 だれ、と言いかけたモミジ姫の鼻を、甘い香りがくすぐりました。
 モミジ姫の体から、すぐに力がぬけました。
「モミジ!」
 森の外で見ていた姉姫が、青くなって金切り声で妹を呼びました。
 “だれか”は妹姫の体をかついで、にっこりと笑いました。
「ご心配なく、あなたもご一緒しますから。女性に寂しい思いはさせられませんからね」


『姫を返してほしくば、南第三遺跡へ来い』

 ――これが、その日の夜にお城に届いた脅迫状でした。







ネット小説ランキング「光、願いし者」に投票





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




TOP | NEXT


小説家になろう