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好敵手
作:蒲生潤


 俺は幼い頃から水泳選手に憧れていた。水泳選手になりたいという俺の意志はかたい。俺は小学生の頃からスイミングスクールに通い、夢を実現しようと日々練磨してきた。俺の親友、誠人も俺と同じように水泳選手になるのが将来の夢だ。誠人は速い。小、中学校のとき俺は誠人に一回も勝利できずにいた。何度も誠人に勝負を挑んでは、何度も俺は敗れていた。誠人を追い抜いてやろうと何度も試みたが、無理だった。俺は誠人という壁を乗り越えなければ到底水泳選手なんかにはなれっこない。誠人に対して俺は何か友情とは何か違う、個人的な感情が芽生えているのに気付いていた。誠人は教えられた事をすぐに習得していく。しかし、俺は習得するのには時間がかかり、スイミングスクールでも誠人より下のレベルで練習をしていた。誠人との格差を認識していくうちに、俺は知らず知らず誠人をねたむようになっていた。練習メニューは誠人より俺の方がはるかにきつい。報われるのは俺であるべきなのに、あいつの方が報われている。俺は市の大会で何度か三位くらいにはなれたが、誠人は毎回優勝して帰ってくる。あいつが持ち帰ってくる輝かしい優勝トロフィーがなんとも憎らしかった。

 高校三年生の夏、俺は決意していた。必ず誠人に勝ってやると。
 泣いても笑っても最後の舞台に、俺は今までの練習で培ってきたたくましい体で立っていた。俺は第5コースだ。俺の隣の第4コース誠人が立っている。胸が高鳴った。ここで誠人に勝てなければ、ついに誠人に一回も勝てなかった事になる。審判が笛を会場に鳴らした。俺は今までの練習の成果を、この瞬間に存分に発揮した。種目は平泳ぎの200M。必死だ。今までの練習の成果を水の泡にしてたまるものか、と全力で俺は泳いでいる。息が苦しくなってきた。
(つらい……?)

不思議だ。今まであんなに練習してきたのに。俺はとうとう前へ進めなくなり、意識が遠のいていった。

 
 

 
 目が覚めた。俺はベットに仰向けに寝ていた。目の前に誠人がいる。

「おい、俺はどうなった! 試合はどうなった!」

俺の激しい問いかけに誠人は平然と答えた。

「ああ、お前、試合中に突然発作が起きたんだ。俺が助けてやったんだぜ。俺達二人とも失格になったけど、まぁお前の命にはかえられないぜ」

 めがしらがあつくなってきた。俺は溢れてくる涙を押し消そうとしたが、涙は止まらなかった。誠人は俺を助けたために、失格となったのだ。俺はそれなのに勝敗などを気にして、誠人をねたんでいたのだ。そんな自分が情けなくなってきた。ゆがんだ声で俺は誠人にお礼を言い、俺は誠人に深く詫びた。

「すまねえ、誠人。俺は、俺は……」

 俺は誠人をねたんでいた事を正直に打ち明け、次々とでてくる涙を拭いた。誠人はまばゆい程の笑顔で、

「今度決着をつけようぜ」

そんな優しい言葉を俺に投げかけてくれた。



 

 今、俺は誠人と決着を着けている。プロの水泳選手として……。














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