Ruby eyes ―進む道はあるから―(3/7)PDFで表示縦書き表示RDF


Ruby eyes ―進む道はあるから―
作:高田高



3.wolf&vamp ―我が家―



 帰り道。いつもなら一人静かに風景を眺めながら帰るわけだが、今日は違う。やたらとうるさい二人のせいで、俺のテンションは沈みっぱなし。

「どうしたのアキ。女の子二人に挟まれて幸せじゃないのかい?」

「うーん、やっぱり昼に吸い過ぎたのが原因?」

「あららー、早くもそんな関係に? アキも隅に置けないねぇ!」

 出来れば隅に置いたままにして欲しい。
 道中ずっとこんな調子で、休む暇なく二人は会話している。ずっとしゃべっていて疲れないのだろうか? 口の中が乾かないのだろうか? 俺は聞いているだけで喉が渇く。

「ところでシヴァはウチこっちなのか?」

 リアはシヴァと呼ばれるのが相当嫌なのか、目は口程に物を言う以上の訴える視線を向けている。

「シヴァって言うな! リアでいいから!」

「わかったよ。それでウチはこっちか? シヴァ」

 その瞬間、俺の足の爪先をリアは思い切り踏み付け、さらにぐりぐり捻った。

「ってぇー! 暴力反対」

「あんたが悪いから。もう絶対明日血を頂きますから。なんなら今から頂きますから」

「ごめんなさい、もう言いません」

「わかればよろしい」

 二人のやり取りに、春美はくすくす笑うと、俺とリアの間に入り、腕を絡めた。

「な、なんだよ?」

「ん? アキに彼女が出来てよかったなぁーって」

「「えっ?」」

 俺とリアは予想し得ない言葉に声を上げると、顔を見合わせた。

「見つめちゃって、早速ラブラブですかぁ〜? 私は邪魔者ですかぁ〜?」

「何言ってんだよ。なあ?」

「……」

 俺の声が届いているのかどうなのか、リアはうつむいたまま返事をしない。
 リアの態度の落差に春美は焦りの表情を浮かべ、絡めていた腕を解いた。

「あの、あれ? リアちゃん? ご、ごめんね。冷やかし過ぎたかな?」

「……え? あ、ううん、そんな謝らないで。
 ただ、そう言うの慣れてなくて……」

 ルビーアイズであろうと人間であろうと、好意、特に恋愛感情と言うものは、等しく複雑怪奇で難解なものらしい。
 そんな態度のリアに改めて気付く。瞳が赤かろうが、吸血しようが、同じ生き物であると。当たり前の事、普通の事ほど盲目しがちなのは人間の悪いクセだ。

「なあ、リア」

「へっ!?」

 俺の言葉に相当驚いたのか、リアは声が裏返った。

「そんな驚かなくても……、まあいいけど。
 ウチこっちなのか? ずっと同じ道だけど、間違えてないのか?」

「あぁ、うん、こっち……」

 相変わらずリアの表情は少し元気がない。元気がない、と言うより、困惑、錯乱しているようで心ここに在らず。

「リアちゃん、大丈夫? アキの血なんか飲んだから体調崩した?」

「つくづく失礼なヤツだな、お前は!」

「だって、アキの血だよ? 想像しただけで吐き気が……」

 そこまで言うなら飲んでみろ! と言いたいところだが、人間が人間の血を飲んでもおいしいわけがない。むしろ鉄の味が口一杯に広がるだけだろう。


     ◆


 そんなこんなで歩く事15分。俺の家が見えてきた。

「っと、じゃあここで。春美、腹出して寝るなよ。リア、また来週な」

「腹出してって、なにさ! した事ないよ!」

「……あれ? 蒼真の家って……。
 蒼真、ちょっと待って」

「なんだよ?」

 振り返った俺が見たものは、俺の家と持っている地図とを交互に見ながら、顔を青くするリア。
 少し、いや、かなり嫌な予感がする。

「俺の家が……何?」

「蒼真のお母さん、名前は?」

「サリーだけど?」

「サリー・ウェイトン?」

「旧姓な。それが何?」

 リアは両手で頭を抱えると、その場にしゃがみ込んだ。

「パパのバカ! 同い年の子がいるって、男じゃない! マズイよー!」

 リアの反応から推理するに、いや、推理するどころか、ヒントが正解のCMのクイズのようなものだが、要するに、俺のウチにホームステイ。
 今朝、母が仕事に出掛ける前になにやら電話で長話していると思っていたが、ホームステイに関してだったわけか。

「確かにマズイな。俺の血が危険だ」

「そうじゃないわよ! 男はオオカミなんでしょ!? オオカミ男と一緒に暮らすわけ!?」

「お前だって吸血鬼みたいなもんだろ」

「まあまあ! じゃあさ、ウチ来なよ?」

 春美の優しい言葉に、リアは涙目で首を横に振った。

「そうはいかないの。パパすごく心配性で、出掛けると10分に1回は電話掛けてくるほどなの。
 それで、こっちに転校する事になった時、ウェイトンさんの家なら安心だからって」

「そ、それなら場所変えたって言えば、」

「そんな事したら、心配だからってパパも泊まりに来るかも。多分、来るよ」

「うわぁ、それは嫌かも」

 娘が心配な父親。少々、いや、かなり度が過ぎてはいるが、親子の愛情も人間とまるで同じわけだ。
 ただ、娘を縛り過ぎではなかろうか? これでは過保護を超して監視。

「じゃあ、母さんにわけを話して、ウチに居るって事にしておいて、春美のとこに行けばいいだろ?
 春美のウチはカップラーメンが出来上がるくらいの距離だから、何かあればすぐこっちにこれるしな」

 春美のウチは目と鼻の先。ただ、小さい頃からの付き合いではない。理由は簡単、中学の時に春美が引越して来たから。

 俺の提案にリアはうなずくと、とりあえず届いているであろう荷物を取りに我が家へ向かう事にした。
 余談だが、リアは本日の登校は、丸々準備して直接自宅から学校まで来たらしい。そんな事したせいで、面倒な事になったわけだ。 そうでなくても結局は面倒なのか?

「ただいまー」

「お邪魔しまーす。で、いいのかな?」

「どっちでもいいだろ。どうせ誰もいないし」

「だったら、ただいま、なんて言わないでよ。まぎらわしい」

 玄関の戸を開けると段ボール箱が山積みになって、正面の廊下を占領していた。
 荷物が届いたものの、両親とも仕事に行くため片付けもせずに出掛けたのだろう。
 お陰で運び出す手間は省ける。

「……14、15……。
 15か。多いな。無理だ」

「一個づつ運べばいいじゃない! ほらっ!」

「春美呼ぶか。ってなんであいつは帰っちまったんだよ。手伝うべきだろ」

「もういいから! さっさと運びなさいって!」

「お前に吸われたせいで今はダメ」

 あまりのヘタレっぷりに、とうとう頭にキタらしく、リアは俺を押し倒すと首筋に噛み付いた。

「イタっ! 痛いって! 歯が食い込んでるっ! さっきよりめり込んでるから! おい、聞いてる?」

 怒りにまかせて噛み付いたらしく、俺の声は聞こえていないようだ。昼に吸われた時に比べ、随分乱暴に吸われているせいで、全身に力が入らない。

「お、お前、俺を殺す気か!?」

 リアはようやく我に返ると、首筋から口を離し、体を起こした。

「つい、おいしくて」

「つい、で殺されてたまるか! ……あ」

 言っておくが、ここは玄関先。家族が帰宅した場合、当然鉢合わせになる。
 そして、顔を玄関先に向けた俺の視線の先には、にやけた表情の母親がでば亀していた。
 それに気付いたリアは、俺に乗り掛かったままの姿勢でサリーに挨拶した。

「あ、あの、お邪魔してます。リアリーデです」

「あぁ、キリアンの娘さんね。よろしく!」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「おい、コラ! とりあえず、退け!」


《続く》


 リアがちょっと大胆に吸血し過ぎですか? これからもっと作者の幻想入りますよ! こんな吸われ方ならいい、みたいな。    あの、あれですよ? 変質者じゃありませんよ?











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