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逆ハーエンドのその後

プログラミングされた恋心

作者: 黒井雛(空飛ぶひよこ別PN)

※「乙女ゲームの逆ハーヒロインは、非王道展開を望む」の逆ハーメンバー視点

※ヤンデレ用PN使っていませんが、ガチヤンデレです。

「見つけたー!!カイザー!!そしてひゃっほい、第二イベント遭遇」


「どっかで見たシチュエーションかと思ったらやっぱりか…!!来るな寄るな口を開くな!!」


「えと、確かセリフはー」


「やめろ、糞女!!」





 二階の窓際の席。

 中庭で地味な男と戯れる、あの子をただ見つめる。



 あの子は、僕の恋人。



 僕らの、恋人。



 他の男と戯れるなんてと激昂したいところだけど、あの子が誰のものでもない1日を、あの男にあてると言い出したから、僕らは何も言えない。


 あの子は、あの男も恋人の一人に加えるつもり何だろうか?

 それとも、何か企んでいる?


 嫉妬で頭の奥が、くらくらする。


 ああ、ああ、空気が薄い。


 あの子の傍に行きたい。あの子の傍でなければ、息をするのも苦しい。



 彼女に近づけない自分とは裏腹に、あの男は彼女の傍にいる。

 妬ましい。羨ましい。


 嫉妬で焼け焦げそうなのに、一分一秒でも長く、あの子の姿を網膜に焼き付けたくて、視線が反らせない。



 早く、早く、明日になれ。


 明日は僕の日。1日中あの子を独占出来る日。

 週に一度のその日だけ、僕は満ち足りた気分になれる。



 なんで、あの子がこんなにも好きなのだろう。

 最初は、明るい笑顔に、優しく強いあの性格に牽かれたのだと思った。

 だけど僕に、僕らに見せたあの姿は、作り物だった。

 ほんとのあの子は、すごく性格が悪い。自分勝手で、面倒臭がりで、ひねくれていて。

 なのに、そんな彼女の本性を知ってもなお、いや、そんな本性を知ってますます彼女が好きになった。

 他の5人も同じらしい。幻滅してもおかしくないはずなのに。



 理解出来ない、自分の恋心。

 その理由を答えたのは、あの子自身だった。



『ここはゲームの世界だから』


『ヒロインを好きになるようにプログラミングされているから』


『だから君らの恋は、作り物の感情なんだよ』



 あの子が語るのは、この世界が彼女が前世でプレイしたゲームだという、荒唐無稽な妄想。

 だけど、そんな彼女の妄想に納得している自分がいた。




「愛したい」



 僕は、物心をついた時から、そんな激しい渇望を抱えていた。



 誰かを、愛したい。


 全てを、僕の全てを誰かに捧げたい。


 だけど、誰でもいい訳ではない。


 顔も知らないけど、誰かは、決まっている。



 その人じゃないと、駄目なんだと、何故か確信していた。



 会いたい


 あいたい


 あいしたい


 愛したい



 いるかも分からぬその人に、会いたくて愛したくて方ない。




 まるで飢えているかのような、激しい衝動は、年齢を重ねれば重ねるほど、僕を蝕み、苛んだ。

「誰か」がいない世界は、ただひたすら無彩色で味気ない無機質な世界だった。



 そんな世界が、ある日突然鮮やかに色づいた。


『初めまして』



 あの子と初めて対峙した瞬間、その微笑みを見た瞬間、わかった。



 求めていたのは、彼女だと。



 彼女を愛する為に、僕は生まれてきたんだと。



 そして、その予感は正しかった。




『君が好きなんだ』


 そう彼女に自分の想いを告げた時、その場には僕以外に5人の男がいた。

 皆が皆、学園で人気がある生徒ばかり。

 皆が皆、揃ってあの子に愛を囁いた。

 僕はドキドキしながら、あの子の返事を待った。

 あの子は誰を選ぶのだろうか。

 僕を選んでくれるのだろうか。


『――ごめんなさい』


 しかし、彼女は目を伏せて、そう言った。


『みんな、同じくらい好きなの。だから、私は誰も選べない』


 彼女の返事は、僕に失望と安堵をもたらした。

 彼女は、僕を選んでくれなかった。

 だけど、誰を選んだわけでもない。

 そして、他のメンバーと同じくらい、僕のことも好きだと言った。

 ならば、まだ僕が選ばれる可能性は残っている。


 僕は、待つよ。

 君が誰かに恋をするその日まで、ずっと君を好きなまま待つよ。

 だから、好きでいることを許してくれ。


 そう口にしようとした言葉は、生徒会長の言葉でかき消された。


『――なら、全員と同時に付き合えばいいじゃねぇか』


『『え?』』


 僕と彼女の言葉が、重なった。


『全員が同じくらい好きなら、全員と付き合えばいい。俺はお前と付き合えるなら、例え他に男がいたって、目を瞑れる。』


『…い、いや、それは皆の想いに対して、余りに不誠実じゃ…』


『俺らが気にしなければいいだろう?週に一日。ローテーションで曜日を入れ替えて、それぞれと付き合えばいい。俺は週一でもお前と恋人になれるのならば、ただの友人として傍にいるよりいい。…お前らは、どうなんだ?』


 会長が口にした言葉は、余りにも無茶苦茶だった。

 男女交際は一対一が基本な日本における倫理観を、完全に無視している。

 そんな状況、通常の神経の持ち主ならば甘受出来るはずがない。

 出来るはずが、ないのに。


(週に一度でも、彼女と恋人になれる)


(手を繋いで、キスをして…誰にも邪魔をされずに彼女といられる)


(一日、彼女が僕の物になる)



 気が付けば、僕は会長に賛同していた。




『会長!!』


 結局集まった全てのメンバーが同意し、あの子は引きつった笑顔で六人全員と付き合うことを了承した。

 帰り道、僕は足早に立ち去ろうとした会長を呼び止めた。


『どうして共有なんて言い出したんだい?何に対しても執着を見せない君だけど、彼女に対しては別だと思っていた』


 会長は、天才だ。

 学問もスポーツも、音楽も、娯楽も、ありとあらゆる分野で、さして苦労もせずに優秀すぎる成績を上げる。

 そのせいか、彼はなんに対しても、強い執着を見せることは無かった。

 そんな彼の唯一の例外が、あの子だった。

 だからこそ、共有などという案を彼が出したのは意外だった。


『…待ってても無駄だからだよ』


 会長は心底不快気に舌打ちをした。


『あいつ口ではああ言っているが、俺らの中で誰も選ぶ気ねぇぞ』


『え…』


 彼女は、誰も選ぶ気が、ない?


『自分をちやほやして、好きだって言ってくれる野郎に囲まれることは喜んでも、それ以上はゆるさねぇつもりだ、あの糞ビッチ!!何だかんだで卒業まで返事を引き延ばして、その後は全員と縁を切ろうと考えてやがる』


『まさか、そんな…』


『そうなんだよ!!見てりゃあ、わかる。あいつにとっては、俺らとの交流なんて遊びにしかすぎねぇんだよ!!本気で恋愛する気なんてさらさらねぇんだ!!』


 会長の叫びに、冷水を浴びさせられたような、気分だった。

 そんな筈は、ない。あの子はそんな人間ではない。そう言いたかったけど、言えなかった。

 気付かない、ふりをしていた。

 だけど、本当は薄々気が付いていた。

 あの子が、本心から僕らに愛情なぞ感じていないことを。

 彼女にとって、僕らは装飾品や、愛玩動物の延長に過ぎないことを。


『共有は、不本意だ。だけどあいつが俺を選ばねぇなら、それしか手段はねぇだろーが。』


『……』


『許さねぇ許さねぇ許さねぇ!!!俺をここまで惚れさせといて、弄んで捨てるだなんて、絶対に許さねぇ!!絶対に、俺の手から逃がしてなぞやらねぇ!!』


 血走った会長の眼には、確かな狂気が宿っていた。


『ガキの頃から、ずっとずっと探し求めていたんだ!!俺の心を揺さぶり、離さねぇ女を!!何にも執着出来ない俺が、執着を向けられるような女を!!ようやく、見つけた。ようやく捕まえた。どんな手段を使おうが、絶対に逃がさねぇ!!』


 会長の言葉に、僕以外の他の5人もまた、僕と似た渇きを抱えていたことを知った。

 そしてその渇きを癒やしてくれるのは、彼女以外いないことも。



 例え、彼女がどんなに性格が悪かろうが、どんなに僕らを愛していなかろうが、




 あの子じゃないと、駄目なんだ。





 もし、あの子が誰か別の人間を選んでいたら。ふと、そんな風に考える時がある。

 あの子が僕以外の誰かと幸せになることを、僕は祝福出来ただろうか。

 いくら考えても、答えはでない。

 だけど、今となっては、もう無理だ。

 僕は週一とはいえ、彼女を手に入れる喜びを知ってしまった。知ってしまったら、もう離せない。

 きっとそれは、他の5人とて同じだ。



 消えることがない強すぎる執着の焔を、取り返しのつかないまでに燃え上がらせたのは、君。

 ならば、責任はとって貰おう。

 共有は、仕方ない。

 だけど、君の生涯はこの先ずっと、僕らのものだ。



「――ねぇ、君はこの感情をプログラミングされた偽物だというけれど」


 だから、自分を忘れて、真実の愛を見つけてと言うけれど。


 もし君が言うことが本当ならば、僕らは君と恋愛する為に生まれたことになる。

 感情を否定することは、僕らの存在を否定することになる。



 君はこの世界をゲームだというけれど。


 何か絶対的なものによって決められた恋があるのならば、それは…




「それは『運命の恋』とは言わないかい?」



 君は僕の、僕らの運命の恋人。



 絶対に解放なんか、してあげない。









「よっしゃあ!!第二イベントクリア!!これで解放まであと四イベント!!」


「……なあ、イベントこなしても好感度上がらねぇどころか、現在進行形で駄々下がりなんだが、いいのか?」


「大丈夫!!イベントさえこなせば、ゲームの強制力働いて、強制的に私を好きになるはずだから。多分!!」


「(ぜってぇ他のイベントぶち壊してやる)……なあ、ところで」


「ん?なんだい?私を好きになった?」


「誰がなるか!!……ところでさっきから、六人分の恐ろしい視線を感じるんだが…」


「……気ノセイダヨ」


「見て見ぬふりをするな!!俺は、いつかあいつらの誰かに刺されんじゃねぇかって、本気で怖ぇんだぞ!!」


「……最近ねー。オタ充ライフ取り戻したい云々よりも、あのオトロシイ執着から逃れたいなーと思ってきたんだよね。ヤンデレは二次元だから美味しいけど、三次元なら恐怖でしかないよね。しかも六人分。あはは…超逃げてぇ」


「そんな泥沼に俺を巻き込むな!!」


「そんな薄情な!!転生者仲間だろ?助けてくれよ。頼むから、権力フル活用して逃げさせてくれよ。ね?大丈夫。刺される時は一緒だよ」


「てめえの自業自得を、俺にもひっかぶせて来んじゃねぇ!!」



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― 新着の感想 ―
[一言] 他の人の感想への返信を見てて気付いたんですが、今回は黒井雛じゃなくて良いんですか?
[一言] あれを見てからこれを見ると、本当に落差が激しいw いやしかし、どうあがいてもバッドエンドの予感しかしないのですが大丈夫か!? 主にカイザーがどのルートに突っ込んでも長生きできる気がしない。…
[一言] カイザーの不憫な感じが凄く好きです( *´艸`) でも、別にヒロインちゃんはクズじゃないと思うなー。 だって、自分が乙女ゲームのヒロインに生まれ変わったら、逆ハーレムしてみたい、と思うのは割…
2014/09/01 14:10 退会済み
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