欲望の街(8/12)PDFで表示縦書き表示RDF


久しぶりの続きです。今回長めに書いてみました。しかも今回は性描写が含ませております。予めご了承下さい。
欲望の街
作:李仁古



過去と欲望


「何で殺さなかったのよ!」
 バッティングセンターから離れ、区役所通りを歩いていると、阿蓮が怒りをぶつけてきた。だが、俺はそれを無視する。
 自分の過去を探る。(ラム)(ラウ)に恨まれる様な事をしたかを。……思い当たらない。俺は(ウー)と出会うまで普通の街のガイドだった。当時から広東語ができ、香港の奴らの中では評判が良かった。
「ちょっと聞いてる?」
 頬を膨らませた阿蓮が顔を覗き込んでくる。
「…………」
 再び阿蓮を無視。俺は阿蓮と距離をおき、思考を巡らせる。すると、腕を掴まれ、抱きしめられた。唇が重なる。体をすぐに離し、怒鳴ろうとしたその時だった。
「いたか?」
(いや)
仆街(ちくしょう)! 第次職安道(次は職安通りだ)!」
 アスファルトを蹴る音が次第に遠ざかる。俺はゆっくり唇を剥がす。阿蓮はゆっくり瞼を開け、透き通った瞳を見せる。吸い込まれそうだ。
「……助かった」
 阿蓮の瞳から(ラム)三下(チンピラ)が向かった職安通りに目を移した。落ち着かせようとポケットからラークを出し、火をつける。
「別にいいわよ」
 素っ気なく答えた。腕を絡ませ、頭を肩に乗せる。俺は何も言わず、煙草を吹かしながら花道通りに向かって歩く。
 花道通りに出ると、タクシーを捕まえて行き先を伝える。運転手は軽く頷き、車を走らせた。俺と阿蓮は窓から見える歌舞伎町の光りを見つめながら、終始無言だった。
 タクシーは小滝橋通りを走らせ、百人町に入る。途中で降り、後は徒歩で目的地に向かう。阿蓮も黙ってついてくる。大久保駅の近くの“福来(フライ)”と書かれた店に入った。
 この店は堅気の北京人が店長で、ガイドをしている時に知り合い、料理が得意と聞いたのでこの店を紹介した。今では美味しい中華料理店として、知られている。
 お腹を(くす)ぶる様ないい匂いが漂ってくる。店内は如何にも中国の様な飾りが飾られてる。青いチャイナドレスを着た女に軽く解釈し、奥へと進む。
 奥に進むと、上にあがる階段をあがり、部屋へと続くドアが並ぶ廊下に出る。一番奥のドアを開け、阿蓮を招く。
 部屋の中に入り、横の壁に付いた電気のスイッチをいれる。真っ暗な闇が晴れ、部屋の全貌が現れた。
 正面に小さなテーブル。その右横にベッド。布団が整えられてる。反対に左はいろんな服が掛かったていた。この服は全て下の店長が趣味で集めている。
 俺はベッドにバッグを置き、ラークを出す。一本抜き出す。残り五本。火をつけ、汚れたスーツの上着を脱ぐ。ネクタイを少し緩め、ハンガーに掛かった黒いロングコートに腕を通す。
「出かけてくる」
「いっしらっしゃい」
 阿蓮が手を振って見送る。俺は階段をおり、厨房に入る。鍋に野菜や肉を入れ、炒めてる。
五番(ウゥファ)
 料理が出来上がり、コックが小さなカウンターに置き、それをチャイナドレスを着た女が運んでいく。俺は更に奥に進む。
 中華鍋を動かし、米が宙に舞う。だが、一粒も(こぼ)さない。まさに神業。休む間もなく、只管(ひたすら)手を動かし、米を炒めていく。
三番(サァンファ)
 中華鍋を持ち、皿に盛られる。俺は煙草を床に落とし、靴で踏み消す。
(リャン)
 梁朝(リャン・チャオ)は俺を見つけ、笑顔になる。
裕一先生(ゆういちさん)
 脂ぎった顔を前垂れで拭う。前髪は相変わらず濡れている。
「上に女がいるんだ。そいつに飯を作ってくれないか?」
裕一先生(ゆういちさん)の頼みなら仕様が無いですね」
 (リャン)は早速包丁を持ち、料理の準備を始める。
「それと、その女が出ないように見ててくれ」
「分かりました」
 俺は厨房を出て、店を抜ける。腕時計に目を落とす。十時四十四分。ネオン看板の光りが一層目立つ。小滝橋通りまで歩き、タクシーを捕まえる。
「大林警護事務所まで」
 運転手にそう告げ、走り出す。車は職安通りに入り、窓の外を見てみる。目を血走らせた(ラム)組の三下(チンピラ)が目立つ。パトカーも何台か見回りに回っている。
 明治通りに右折。路肩に車が電信柱に突っ込んだ事故現場があった。(しぼ)んだエアーバック。皺だらけのフロントガラス。小さく細かいガラスがコンクリートに撒かれている。警察官が現場検証を行っている。タクシーはその横をゆっくり通り過ぎる。
 ホテルバリアンリゾートで右に曲がり、石黒商事ビルの隣の大林警護事務所でタクシーが止まった。代金を払い、降りる。ビルの前に男が三人立っている。三人とも二十代前半だろう。ホストの様な格好している。
「そこを退いてくれ」
 眉間に皺を寄せ、目で威嚇(いかく)してくる。
「あんだ手前(てめぇ)
 三人が俺を囲う。
「俺はお前らチンピラと遊びに来てる訳じゃねぇんだ」
 正面にいた男が胸倉を掴む。俺はその手を捻る。透かさず右にいる男を蹴り飛ばす。左にいた男が拳を飛ばす。後ろに下がり、(かわ)し、痛がっている男を投げる。
手前(てめぇ)!」
 腹を押さえながら、突っ込んでくる。俺は肩を掴み、顔に膝蹴り。顔を飛び上がる。髪を掴んで、そのまま壁に叩きつける。骨が砕ける音が聞こえる。真っ赤な血が鼻から流れ出す。どうやら鼻が折れた様だ。
 俺は起き上がろうとしてる二人に近づき、前にいる男の顔側面を蹴る。そのままの勢いで左足を回し、顔側面に蹴りを入れる。
 俺は倒れた男を跨ぎながら、コートを直す。ラークを出し、火をつける。残り四本。階段で三階まであがり、大林警護事務所と書かれたドアを開ける。
 正面に大きなデスクがあり、座り心地の良さそうな椅子に若い男が座っていた。すぐ右にもデスクがあり、女がキーボードを叩く手が止まっている。
「もっと頭の良い奴を雇え」
 煙を吸い込み、心臓を落ち着かせる。
「らしいな。病院に連れて行かせろ」
 両端にいた男に命令する。一礼し、部屋を出ていった。
「コーヒーはいるか?」
 大林和久(おおばやしかずひさ)。ヤクザの大林組の頭だ。冷酷な男で手段を選ばない。何度か俺も命を狙われたな。
「あぁ」
 大林が女にコーヒーを持ってくる様に指示をする。俺はくわえていた煙草を灰皿に擦りつけ、火を消す。
「それで……用件は?」
 大林はどっかりと椅子に座り、腕を広げる。まるで役者だ。
(ラム)(ラウ)の家族構成を知りたい」
「面白い事を言うなお前」
「そうかい」
 デスクの前に置かれた椅子に座る。
「分からねぇな。同じ組の人間なのにどうしてわざわざ俺に頼むんだ?」
「色々あってね」
 女がコーヒーカップを差し出す。それを受け取ると、女は一礼し元の席に戻る。
「お前も大変だな。噂じゃ、倉庫の襲撃者で婚約者を奪ったいかれ野郎だぜ」
「只の噂さ」
 コーヒーを飲み、眠気を抑える。これじゃ、サラリーマンだ。
「で? 俺に何か得があるのか?」
「この街をやるよ」
 大林がでかい口を開け、笑い出す。俺はコーヒーを啜る。
「街をか? 気に入ったぜ!」
 空になったコーヒーカップをデスクに置く。
「そりゃ良かった」
 大林の笑顔が消え、手をデスクに置き、顔を出す。厳つい顔が目と鼻の先だ。鋭い目が俺を見つめる。まるで獲物を狙う(たか)の様に。
手前(てめぇ)、俺を殺したいのか? そんな冗談を信じると思うか?」
「勝手にしてくれ」
 大林は椅子に座り直し、顎を(さす)る。俺は返事を待つ。
「よし、いいだろう。調べてやる」
「悪いな」
 俺は椅子から立ち上がり、大林に背を向ける。ドアを開け、廊下に出る。ドアを閉める際に大林を見た。口角を上げ、手を振っていた。
 再びタクシーを捕まえ、行き先を告げる。タクシーの中で俺は仮眠をとることにした。腕を組み、窓に頭を傾け、目を閉じる。
 目的地に近づくと目を開け、窓の外を見る。薄暗い路地。遠くにネオン看板の光りが見える。
 嫌な考えを思いながら、運転席を見る。誰もいない。背中に寒気が走る。俺はドアを開けようと、押すがびくともしない。完全に閉じ込められた。
 座席に寝そべり、窓ガラスを蹴る。割れる気配がない。ホルスターに手を伸ばす。空。革製のホルスターにはなにもなかった。
 車が止まる音が聞こえた。見ると、昼間の赤い丸サングラスをかけた男が五人の男を連れて立っていた。手には勿論、銃が握られているが、暗くてよく見えない。
 発光。すぐ右に穴が出来た。それを合図にタクシーに銃弾が撃ち込まれていく。俺は出来るだけ体を縮め、シートから飛び出す銃弾――車の様な厚さなら、大抵の銃は貫通する――を避ける。
 銃撃が止み、その隙に穴だらけになった透明の板をぶち破り、運転席に滑り込む。
「くそ!」
 急いで直結させる。コードを二本持ち、合わせた。線香花火の様に火花が散る。横にあるサイドミラーが吹き飛ぶ。エンジンがかかる。
 ギアをDに入れ、アクセルを目一杯踏み込む。金属がコンクリートを削る音がうるさい。それでもスピードが出るだけ出す。
 歩道にいる人だかりにクラクションを鳴らす。人だかりが避けていく。道路に出る。クラクション。右から車が突っ込む。
 ガラスが割れ、顔にかかる。痛む腕を(かば)いながらフロントガラスを蹴り飛ばす。ガラスが外れ、ボンネットの上に置かれる。
 俺はなるべく早く外に出ようと這いずる。銃声。歩道にいる何人かが悲鳴をあげ、あたふたとしている。ボンネットを転がり、コンクリートの地面に着地。
 銃声は止まず、ネオン看板が破裂。頭が破裂し、脳味噌を地面に撒き散らす。肺を撃たれ、息を切らしながら手を差し伸べ、助けを求む。地面に伏せたまま動かない。そんな光景が今、目の前にある。まさに地獄。
 地面を蹴って走り出す。窓ガラスが割れる。俺は無我夢中に走る。
 福来(フライ)に着き、尾行がないのを確認し、中に入った。中は従業員も客もいない。閉店したから当然だ。静かな店の奥に進み、階段をあがる。
「離してよ!」
「いいから来い!」
 喧しい北京語が聞こえた。俺は息を殺して階段をあがり、半開きのドアを覗く。阿蓮が(リャン)に無理矢理立たされていた。俺はドアを蹴り飛ばす。ドアが勢い良く開き、(うめ)き声と共に、戻ってくる。
 ドアを開けると、阿蓮が抱きついてくる。(リャン)は止まらない血に四苦八苦しながら、何かを探している。俺は足下に転がった黒い回転式拳銃(リボルバー)を拾う。
 銃身にはS&(スミスアンドウェッソン)と彫られていた。M629ESの三インチ。ラバー製の銃把。四十四口径の弾丸が六発詰まっている。重い撃鉄を起こし、(リャン)の頭に向ける。
(リャン)、これはどういう事だ?」
 恐怖に満ちた瞳は泳ぎ、震えている。
「お……俺は何もし……知らない」
 容赦なく(リャン)の膝を撃ち抜く。炸裂音が耳に残る。(リャン)の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
(リャン)。余りふざけた事を言うと一生料理作れないぞ」
「リ……林……林迎明(リン・インミン)だ」
 とうとう俺まで消すつもりか。まぁ、予想はしていたが。俺は(リャン)の胸倉を掴み、無理矢理歩かせる。
「服を着替えろ」
 阿蓮にそう言うと、(リャン)を連れ階段をおりる。痛いと叫ぶが無視。厨房の奥にある裏口で(リャン)を放り投げる。
「さっさと失せろ」
 (リャン)は笑みを浮かべながら立ち上がる。
裕一(ユウイー)。あんた死ぬよ」
 銃で顔を殴る。(リャン)は真っ赤な血で染まった歯を何本か吐き出す。俺はドアを開け、(リャン)を押し出す。(リャン)は早口の北京語で何かを言ったが、ドアを乱暴に閉めて断ち切る。
 撃鉄をゆっくり戻し、右側にある円筒止めを親指で押し、円筒を左に出す。六発――一発は空だが――の弾丸を出す。空の一発をポケットに入れ、五発を詰め込む。円筒を勢い良く戻し、ズボンとシャツの間に差し込む。
 階段をあがり、部屋に入る。ピンクの下着を着た阿蓮が立っていた。俺がいるのに気づいていない様だ。真っ白い肌、程良く膨らんだ胸、引き締まった腰、可愛らしい尻、細い足、全てに見取られてしまった。
 阿蓮は赤いベアトップ、黒いミニスカート、黒のフリルカーディガンを選ぶ。服を持ちながら振り返る。目が合う。阿蓮は恐怖と怯えの目をしていた。俺と分かるとその目はなかったかの様に消える。
「びっくりした」
 溜め息混じりの声が聞こえてくる。
「早く着替えろ」
「はいはい」
 阿蓮はさっさと服を着る。バックを背負い、腕時計に目を落とす。十一時十一分。途端に睡魔が襲ってきた。頭を振り、紛らわす。
「行くぞ」
「は〜い」
 見事に着こなした阿蓮が腕に絡みつく。俺は(わざ)とらしく溜め息をつきながら、階段をおりる。
「何処に行くの?」
「安全な所かな」
「ふぅ〜ん」
 店の裏のドアを開ける。(リャン)の姿はなく、真っ黒な闇があるだけ。その闇の中にひっそりとある三菱のランサーエボリューション5。後ろに回り、排気ガスを出すマフラーに手を入れる。金属の感触。車の鍵を出す。
 鍵を差し込み、開ける。車に乗り込み、エンジンを動かす。阿蓮は助席のシートに座る。ギアをDの位置に動かし、アクセルを踏み込む。
 小滝橋通りを靖国通りへと向かう。新宿大ガードの交差点を左に曲がる。明るいネオンと殺気の様なオーラに包まれた歌舞伎町を見ながら、靖国通りを進んでいく。歌舞伎町にいられそうにないな。
 靖国通りをずっと走らせていると、曙橋が見えてきた。大きな橋を潜り、右にハンドルをきって外苑東通りに入る。
「歌舞伎町には何年いるの?」
 阿蓮が頬杖をつき、窓から流れる様に映る町並みを見ながらそう言った。
「七年いる」
 素っ気無い返事をした。
「長いのね」
「長すぎる」
 七年もあそこにいれば嫌でも生きる道を探さなくてはいけなかった。そうでなければ飢えた薬中(ヤクちゅう)かナイフが腹に突き立てられた死体になるかの二つだ。
 俺は家が貧しかった為に高校を卒業してすぐに歌舞伎町に仕事を探しに来た。すぐに居酒屋で働く事が出来、仕事に精を出していた。そんなある日、店長がいないと思ったら翌日東京湾に浮かんだ。
 警察の話に寄ればヤクザから多額の借金していて、その日も借金取りが家に押し込んで金を要求したそうだ。だがその日も払わなかった店長は即座に頭を撃ち抜かれた。
 詳しい事は知らないが、俺は次の仕事を探しに街をぶらついているとガイドという仕事を見つけた。すぐに書類を書いて面接を受けると即座に採用された。
 その後は必死になって仕事をこなして金を稼いだ。ここまでは思ったより楽にこれた。(ウー)に会うまでは。
「家族はいるの?」
「みんな死んだよ」
 車は相変わらず外苑東通りを直進している。まもなく新宿通りとぶつかる。
 信号が黄色から赤へと変わった。ブレーキを踏み、徐々(じょじょ)に速度を落とす。
「じゃ〜お互い一人同士ね」
 阿蓮が小さく呟く。俺は阿蓮の顔を見た。孤独と不安が入り交じった表情をしながら、相変わらず町並みを眺めていた。ポケットからラークの箱を取り出す。
「吸うか?」
 阿蓮に差し出すと細い指で茶色のフィルターを摘む。ジッポに火をつけ、煙草の先端を燃やす。
 信号が青になり、車を動かす。交差点を直進して、四谷署の前を通過した。煙草の煙が流れてくる。
「……何であたしにこんな風に接してくれるの?」
 阿蓮が疑問を投げてきた。考えるが答えは見つからない。はっきり言って自分でも何をしているのか分からないのだ。俺は一体何をしてるんだ?
「分からない」
 車を暫く走らせ、青山通りも通過して六本木に入っていった。繁華街の中を走らせていると“W”という文字のネオンが飾られたホテルの駐車場に入った。駐車場には数台の車が停車しており、適当な位置に車を止めた。
「ここが安全な場所なの?」
 エンジンを切った。駐車場に沈黙が訪れる。
「少なくともあそこにいるよりはましだ」
 阿蓮は煙草を灰皿に入れて車から降りた。俺も銃が入ったバックを持って車を降りた。車に鍵を掛け、冷たいコンクリートを踏みながらエレベーターに乗り込む。
 エレベーターで一階に着くと広いロビーが現れた。右に豪華な椅子とテーブルがあり、そこで一人の男が椅子に腰を下ろしていた。左は各階に行くエレベーターが二機と階段がある。正面には受付があり、二人の受付員がてきぱきと仕事をしている。
 俺は受付を済ませにカウンターに近づいていく。
「部屋を一つ」
「いつも言ってるだろ? 来る時は連絡しろって」
 茶色が混ざった黒髪の男が顔を上げずに言った。男の名前は池上昌也(いけがみまさや)。歌舞伎町でガイドをしていた時に(ヤク)でくたばりかけていた所を助けたのが切っ掛けだった。
 当時池上は仕事を渡り歩きながら賭け麻雀にはまっていた。稼いだ金は殆ど麻雀に使う。その内金が無くなりヤクザから借金をしてまで麻雀をやった池上は、借金取りに追われる毎日。そしてそのストレスの影響で(ヤク)に手を出してしまった。
 あとはよくある話さ。日に日に量が増え、最終的には過剰摂取で死にかけている所を俺が見つけた訳だ。
 池上がカウンターに鍵を置く。それを素早く受け取る。
「いつもの所に入れとくよ」
 池上にそう言うと、エレベーターのボタンを押す。
 池上はその後、ホテルの仕事に専念し俺は助けた礼に部屋を使わせてくれと頼んだ。池上がそこで条件を出してきた。部屋を使わせる代わりに(ヤク)をくれと。俺はその条件を飲み、部屋を使う度に(ヤク)を仕入れて池上に渡す事にしていた。
 エレベーターのドアが開き、乗り込むと5のボタンを押した。ドアが閉まり静かに上昇しだした。すぐに五階に着き、ドアが開く。
 明るい廊下に出ると、床は赤いカーペットが敷かれていた。蛍光灯も生き生きしている。
 奥へと進み、部屋に向かう。
 少し歩いた所にその部屋はあった。他と変わらないドアの鍵を開けて中に入る。部屋の中は至って普通だ。俺の場合、眠る事が出来ればそれで十分だからだ。
 阿蓮はベッドに腰を下ろし、部屋を見渡す。俺はバッグをベッドの横に置き、ネクタイを取る。流石に体力の限界だ。
 だが休む訳にはいかない。やる事が沢山残っている。まず、過去を知りに行かなくては。そろそろ大林から連絡が来るだろう。それとあの殺し屋の事も調べる必要があるな。そして脱出路。
 目眩(めまい)が襲ってきた。
「大丈夫?」
 阿蓮の声が聞こえてきた。
「大した事じゃない」
 阿蓮が俺の横に猫の様に(すが)りついてきた。
「何の真似だ?」
「癒してあげようか?」
 俺の話を無視して唇を重ねてきた。舌が絡んでくる。柔らかい手が股間に触れ、すぐに固くなる。
 唇が離れていく。阿蓮の顔は小悪魔の様な笑顔をしながらベルトが外され、ズボンがおろされた。パンツから固くなった陰茎(いんけい)が出された。
 俺は何もせず見ていた。いや、正確には動けなかった。
 陰茎が阿蓮の口によって消えていった。何とも言えない感覚が体中に走る。頭の中が真っ白になっていく。もう流れるままに身を任せる。
 阿蓮が顔を上がる。俺は阿蓮をベッドに倒し、服を脱がす。小さめな乳房を掴む。甘い喘ぎ声。我慢出来なくなった俺は、ピンク色のパンティーをずらしそこから覗く(ちつ)に陰茎を突き刺す。
 阿蓮は目を閉じ、苦痛な表情をしたが、すぐに快楽に浸る。腰を動かす。阿蓮は突かれる度に喘ぎ声を漏らし、抱きついてきた。更に激しく腰を突く。そのまま膣の中で果てた。
 阿蓮がうっとりしながら甘い息を吐く。それが耳元に届き、性欲が湧き出てくる。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう