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イグドラシルの種
作:みやひろかず



「イグドラシルの種」その9


  双葉

保安局員の呼ぶ声にゼクタは目をあけた。助かったのか?背中は熱かったが我慢できないほどではなかった。子供達も無事助け出されたようだった。その時ゼクタは影の中にいることに気づいた。いつの間に影が?隔壁の残骸から助け出されたゼクタは子供達のもとに駆け寄ろうとしたが、二人が上を見て呆然としているのに気づくと自分も振り向いて上を見上げた。
 そこには巨大な双葉が太陽の光をさえぎっていた。こいつの影のおかげで助かったのか。しかし、これはいったい・・・。そう思いつつ根本の方へ視線を落とすと怪物の足が地面と茎の間に挟まっているのが見えた。
 モナはその巨大な植物の正体が怪物の額から生えていたものだと解ったのだろう、大きな声で泣き出した。


 モナとセリが巨大な双葉を見上げてから、さまざまなことがあった。双葉はどんどん巨大な木に成長していき、現在は高さが30キロ半径30キロほどの半球状に枝を繁らせている。木漏れ日は人間が生活するのに程よい明るさを提供し、葉から吐き出される空気は地上にあふれ返った。
 水は幹に穴をあけ管を通すと無尽蔵に湧き出した。人々は次々と地上に移り住み新しい生活を手に入れた。新しい環境の変化を拒む人々も、その木の根が穴の中にはり出すようになると渋々地上へと逃げ出した。人口もだいたい倍ぐらいになって人々の顔は笑顔を取り戻していた。そして人々はその木をイグドラシルと呼び、生えた年を零年として聖樹という新しい暦が作らた。

「かくして、ここに聖樹100周年記念祭を開くことが出来ましたことは、誠に喜ばしいことです」
空、といっても巨大な葉っぱのドームの下の空に、紙ふぶきが舞っていた。人々の歓声が沸き起こる。壇上に市長がのぼって演説をしている。今日は聖樹100年記念のお祭りなのだ。


 そのころ。
 イグドラシルのドームを遥か離れた砂漠の真中に何か動くものがあった。その影が動きを止めるとしばらくして巨大な双葉がぬうっと伸び上がってきた。














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