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イグドラシルの種
作:みやひろかず



「イグドラシルの種」その1


    昔々

 それはそれは、むかしむかしのお話です。あるところに、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリという怪物が住んでおりました。その禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリはとても大食らいで、一人で国中の食べ物を食い尽くしてしまい、人々は泥をふるいにかけてその中から穀物のかけらを拾い出さなければならないほどでした。

<ねえ、かあさん。どうしてそう長ったらしい名前を繰り返すの。
 それはね、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリは名前を間違われるのをとても嫌うからよ。きちんと呼ばないと、悪さをするといわれているのよ。
 へー、それじゃ今も聞き耳を立てているってこと?
 そうかもしれないわね>

あるとき、心のやさしい妖精鳥ペグは、人々の苦しむ姿を見ていられず、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリをイグドラシルのもとへ呼び寄せました。
そして「この世のものとは思えないほど美味しいものを食べさせてあげるから、ついていらっしゃい」と言ってイグドラシルの上のほうに飛んでいきました。
禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリは後を追ってイグドラシルをするすると登っていきました。そして、あっというまにてっぺんに着いた禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリに向かって妖精鳥ペグは、太陽を指差してこう言いました。
 「さあ食べてごらん。目の前に輝くこの世のものとも思えないほど美味しい食べ物を」
 しかし、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリは、眩しさのあまり目をつぶっていたため、それを太陽だとは判りませんでした。そこで、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たるペペルギス・タウタレリは、おそるおそる右手を伸ばして探ってみました。すると、えも言われぬ良い匂いが漂ってくるではありませんか。
 実は、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリの右手が焼け焦げる匂いだったのですが、鈍感な禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリは気がつきません。
匂いに気をとられた禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリがもっと手を伸ばしてあたりを探ってみると、右手が太陽にあたりました。そこで、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリは、ここぞとばかりに太陽の一部をもぎ取ると大慌てで口に放り込みました。するとどうでしょう、口の中に広がったのはこの世のものとも思えないほど美味しい味ではなく、この世のものとは思えないほどの激痛でした。
 そのまま禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリは体の中から太陽のかけらに焼かれ、黒焦げになって落ちて行きました。そして地面にぶつかり、粉々になって国中に飛び散ってしまいました。
それ以来、禍禍しき厄災の息子にして破壊の神たる、ペペルギス・タウタレリの破片から生えた草で人々は飢えることはなくなったということです。

モナが目を覚ますと、涙が頬を伝わっているのに気づいた。もう長い間見ていなかった母の夢。その感傷にもう少し浸っていたかったが、先ほどからしている物音の正体を確かめようと、寝ていた工具棚の上から半身を起こして暗闇に目を凝らした。
その音は何かを袋から掻きだしているような音だった。人の影が動いている。誰かが入り込んできて食べ物をあさっているらしい。
と、その動きが止まり、こっちへ振り向いた。ギラギラと輝いた目がこちらを睨んでいる。
ペペルギス・タウタレリだ。モナは根拠も無くそう思った。思った後で、きちんと名前を言わなかったのに気が付いた。
が、時すでに遅く、もうそこに居るのだ。












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