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異郷より。 作者:TKミハル

『遺跡ミストランテ』

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 彼方に忘れ去られし物件

 タイトル無駄に長くてすいません。
 床石の下にあるハンドルを含め、発見できた開閉装置は全部で七つ。
 グレンは辺りを窺い、他の冒険者が来ないうちにと、ハンドルのある場所に手早く蓋をした。

「これであの水門と数が一致したんじゃないか?」
「そうだな。次は牢屋から鎖を手に入れて、毒の部屋、それに……」
「……石像の部屋は?」
 アルフレッドがぼそりと言い、あ~そういえば、とグレンが頭を掻く。そんなやりとりをしているうちに、溝の様子を見にいったライミア・ポーリンの一行が戻り、どうやら例の流水の罠が解除されていなかったらしく、こちらに軽く挨拶して扉の向こうへと去っていく。
 それを見送ってからシャロンは二人に向き直り、
「たしか、まだ彫刻品置き場には行ってなかったんじゃないか?きっとそこに重要な何かが……」
言ってるうちに、自分の意見の単純さに嫌気がさした。置物が鍵っぽいから彫刻品置き場を探そう、なんて子どもでも思いつくじゃないか。

 幸いにもグレンは突っ込んだりせず、軽い調子で頷いた。
「そんじゃま、行ってみっか。大部屋に入れなくなったってのも気になるしな」
「……うん」
「行こう」

 とは言っても、例の罠があるので解除に必要な時間だけしばらく待ち、それから溝に足を踏み入れる。
「うっ……」
 はしごを下りるとどういうわけか、いつもよりでっぷりと太った蛭がのそのそと底を這っているのに出くわした。蹴飛ばせば転がってしまいそうな丸さが、なんとも……。
「く、食らえッ」
 迷わず風の刃で一刀両断し、ついでに隅へ吹き飛ばした。
「シャロン、実は、苦手?」
「いや、どうも、ああいう醜悪なのはちょっと……」

 残念ながらそれ一匹だけではなかった。遠くの方から、二三匹群れをなしてのったりと近づいてくる。
「……」
「うわ~すげえ。迫力あるな~」
 特に気にする様子もなく、バシュッバシュッと斧で切り裂くグレンに先頭を任せ、壁のはしごから向こう側へ辿りつく。

 いくつかのドアを抜けると、北側の部屋にもだらけた感じの冒険者一行がいたが、素通りして階段から地下五階へと下りていく。
 牢屋の見える覗き窓を横切り、大部屋へ続く扉に手をかけたが……ピクリとも動かなかった。

「駄目だ、こりゃ。別のところへ行こうぜ」
 グレンが肩をすくめ、あっさり身をひるがえす。
「別のところって言っても……ここを通らず行ける場所で、他に探していないところは……」
「一度、地図と照らし合わせてみるか」
 グレンがカバンから地図を取り出し、広げた。どうでもいいが、ここはじめじめと湿気が多く、おまけに床も濡れているので、休憩場所には不向きだ。

「こんなところで時間を食うのはまっぴらだぜ」
 ぶつぶつ言いながら地図をくまなく目で追うが、やはり他に探索するべき場所はなく、くそったれッと叫んでグレンは壁を蹴った。

 あいつ、相当苛立ってるな。

 自分にも覚えのあることだったので、シャロンは苦笑して――――はっと、我に返る。あれは、どこでだっただろうか。
「……アル、変なことを尋ねるんだが、私が思うようにいかずに、イライラして何か蹴飛ばした、あれってどこだったっけ?」
「あ?何言ってんだ」
 グレンが振り向き、尋ねてくる。
「いや、お前いつからアルフレッドになった。違うだろ」
 突っ込んでから、アルの方を向き、再度問いかける。すると、しばらく首を傾げてから、
「蹴飛ばしたのはブリキの水槽、だったような。場所は地下四階南側、あの解除装置と水門のハンドルがある場所の近く」
そう答えを返してきた。
「そこへ行ってみよう。未解決の何かがあった気がする」
「また逆戻りかよ。ま、他にすることもないしな」

 開かない扉から離れ、階段までくると、上の階からどやどやと話し声がして、またもやライミアたちのパーティが下りてくるところだった。
「……おまえら、よく会うな」
「まあな。できることなら綺麗な姉ちゃんとこんな風に出会いたいもんだ」
「はは、違いない」
 そんな感じのやりとりをして階段を上がり、これまたまったくさっきと位置の変わっていない冒険者たちの横を通リ過ぎていく。

 なんだかにやにやしながらこちらを見ていたが、気にしないことにしよう。 

 さっきアレを掃除しただけあって、比較的楽に大きな溝を渡り、水と女神の彫られた扉、その向こうのドアをいくつか抜け、倉庫の脇を通っていくつも小部屋があるあの通路へ差しかかる。
「シャロン、上!」
 アルの緊迫した声に見上げれば、そこには肉色の口と、無数の針が待ち構えていた。

 正直、鳥肌が立った。

 針が発射されるのと同時に剣を上に払い、風の力を借りて叩き落とす。

「……気持ち悪ッ」
 思わず妹が使いそうな口調で呟いて、塩の塊を取り出し、再び口を開き始めた肉色手袋の失敗作へ向けて投げつける。

 きゅうう、としぼむのを見計らい、続いて根元を狙って風を繰り出すとスパッと切れ、べちょりと落ちてきたのでそこをグレンとアルがすぐさま近寄り八つ裂きにする。
「……大丈夫?」
 怪しげな軟体生物を倒した後、アルフレッドが駆け寄ってきたので、若干引きつり気味だが笑って頷いた。

 しかし、なんだって今日はこんなにも気色悪い魔物ばかりに出くわすのだろうか。

 そんな疑問を抱きつつ、四つの小部屋を通り過ぎて、二本目の通路の東側の部屋へ入ると、そこには例のごとく天井につきそうなぐらいの大きなブリキの、浄化槽だが水槽だかわからないものが鎮座していた。

「ああ、これか。そういや忘れてたぜ」
 グレンがそう言って水槽(?)を蹴りつけると、タプンと液体の揺れる音が響き、ほのかに薬の匂いが漂ってくる。
「これ、あの脚立が使える」
「そうか、ここで使うのか!ありがとう、アル」
 これで一つ謎が解けた、と笑いかけると、照れたのか彼はふいっと顔を背けた。
「じゃ、さっさと持ってこようぜ」
 一連のやりとりを呆れたように見ていたグレンがさっそく部屋の外へと動き出す。

 他の冒険者がいないか確かめながら階段横の、鳥の扉を開き、脚立を引っ張り出してブリキのおそらく浄化槽であるものの前まで運び込んだ。
「じゃあ、まずアルフレッドが上がってみろ。お前が一番、目がいい」
 グレンの指示でアルが脚立を上り、浄化槽の上から覗き込んだ。
「……何か、ある。多分鉄パイプ」
「本当か!?」
 グレンがいきりたち、下りてきたアルと入れ代わりで上り、興奮したように叫んだ。
「よっしゃ!あれさえ取れれば、毒の部屋に入れるぞ!」
 息も荒く下りてきたので、交代して覗いてみると、思いがけず澄んだ液体の底に縦長の物体があり、じっと目を凝らせば、あの拷問部屋で見かけたような鉄管が、静かに転がっているのがわかった。
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