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異郷より。 作者:TKミハル

『遺跡ミストランテ』

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 鳥籠

 暗闇の中でのあれこれ。
 無事に罠を通り越すと、広い空間に出た。
 後ろにはグレンと、いつもながらあまりしゃべらないアルフレッド。ランタンの明かりは心許なく、突然床に転がる針人形が照らし出されたりして、非常に心臓に悪い。

 その雰囲気を払拭するためにか、グレンが軽い調子で、
「しかしなあ……『最大風力!』はないだろ。まんまじゃねえか」
「う、うるさいな。思い描いたのを口に出す方がやりやすいんだよ」
「必殺技ならもっとこう……ウィンドウェイブ!!とかはどうだ?」
「なんだそれは。それで発動しなかったらどうするんだ。ただの間抜けじゃないか」
 想像しただけで恥ずかしく、シャロンはうっすら赤くなってグレンを睨みつける。
「こういうのは雰囲気が大切なんだぞ。まずは慣れることが大切なんだ。ほら、ここなら誰もいないし、叫んでみろよ」
「こ、と、わ、る」
 ギュッとランタンを握り締め、シャロンは進む代わりにグレンのすねを蹴りつける。
「てぇッ危ねえじゃねえか!」
 彼はバランスを崩し、隣の人形にぶつかりそうになり、慌てて避けた。
「扉が見えてきた」
 ずっと無言だったアルフレッドが前方の暗闇を指差した。そういや、こいつには見えてるんだった……。
「アル、他に何か変わったものはないか?罠っぽいのとか……」
「人形は全部倒れたみたいだ。あと、右の壁にドアが二つ」
「おまえなあ、そういうのはもっと早く言えよ」
 言おうとした言葉をグレンに先に言われたので、シャロンは右側を照らしてみた。ところどころ針だらけの人形が転がっている。

「……後にしよう」
 前に向き直り、より安全なところを選びながら進むと、ぼんやりと奥の方から扉が浮かび上がってきた。
「ごたいそうな扉だが、こりゃ何か仕掛けがありそうだな」
「ここに、うっすらと透かし彫りの跡がある……」
 扉の真ん中をシャロンが指でこすると、埃がとれて鳥の輪郭だけが現れた。続いて取っ手を掴み、力いっぱい引くと、軋みながら手前へ動いていく。
「中は、と……うわ、これはすごい」
 数段下がったそこは、横長の部屋になっていて、見るかぎり埋め尽くさんばかりの鳥籠、鳥籠、鳥籠――――――しかもその一つ一つに異なった色彩の石の鳥が入っている。
「調べるなら早くしてくれ!閉じると鍵が掛かる仕組みになってる」
 グレンが戻ってくる扉を押さえながら叫んだ。

「シャロン、ここにはきっと……」
「ああ。鳥のコインが隠されているに違いない」
 アルが肯定の頷きを返した。
「来る途中の壁に、が彫られてた。それを探せばいい」
「この中からか……じゃあ、左側を探してくれないか?」
「了解」
 そう言って素直に右側の鳥籠を確かめにいったので、左を見ることにする。
「限界になったら言うからな」
 扉を全身で止めながらグレン。わかってる、と返事をして、置かれたり鎖で吊らされた籠の石の鳥たちをランタンで照らし出した。

 小夜鳴鳥は大きい手の平サイズで背は灰褐色、腹白の鳥。それらしき鳥が目に入ったので掛け金を外し、鳥籠を開いてみる。

 カタン。トポトポトポ……。

 明らかに鳥籠とは関係ない右奥から水の流れる音が聞こえ、床からくるぶしまでが凍えるような冷たい水に浸かる。
「水責めか」
 アルがちらりと心配そうにこっちを窺い、また一つ一つ鳥籠を確かめる作業に戻っていく。

 より慎重に確認していくが……どういう仕組みなのか、鳥籠に触るだけで水が流れるものもあり、ゆるやかながらも水位は上がり、太ももに達してきた。
「くっ……」
「おい、一度戻った方がいいんじゃねえか?」
「いや、だめだ。どうやら何もしなくても少しずつ上がってきてる……放置したらこの部屋すべてが水に浸かる。まだギリギリまで粘りたい」
 痺れるような冷たさの中探していると、
「シャロン!上」
アルの声が響いた。思わず上を見上げるが……暗くてよくわからなかった。

 ガチャンッと大きな音がして、どうやら鳥籠を踏み台にしてジャンプしたらしい彼が、ジャララララッと鎖の伸びる音とともにすぐ脇に籠ごと降ってきた。
「うわッ危ない!」
「シャロン、これだよ」
 何気に達成感溢れた顔で抱えた鳥籠を見せるアルにやったなと頷き、掛け金を外すと、石でできた小夜鳴鳥は突然はばたいてコインを下へ落とした。それを取り出し、留めていた手を放すと鳥籠は再び上へ戻っていく。
「おいもういいだろ!」
 グレンの怒声に慌てて水を掻き分け、段差を上がって部屋を出る。

「で、ちゃんと手に入れたんだよな?」
 疑わしそうな声に、鳥の絵柄のついたコインを取り出してみせた。
「おおっ!やったじゃねえか。早いとこここから出ようぜ。こっちも靴がぐっしょりだ」
 グレンが肩を叩き、ランタンを奪うと後ろを照らし出す。
「で、アル。どっちいけばいいんだ?」
「左側の壁の、ドアがまだ調べてないんじゃないか?」
 呆れてシャロンが言うと、そうだったなと先頭に立って歩き出す。

 人形を避けながら歩いていくと、左側に二つのドアは見つかったものの、開くことはなかった。

「チッ。もしこの他にドアがなかったら……あのはしごをなんとかして登るしかねえのかよ」
 ぶつぶつ言いながら引き返すグレン。

 あのはしごは最後まで足りなくて飛び下りたような気がする。肩車で届くといいが……。

 シャロンも後に続きながらそんなことを考えていると、
「あそこにもう一つ扉がある」
溝まで来たときアルフレッドが向こう側、暗くてよく見えない左の壁を指差した。
「だからそういうことは早く言えって」
 ランタンをこちらに預けてグレンがまず溝を飛び越え、例によってランタンを投げ渡したシャロンとアルフレッドもそれに続く。

 果たして左側にその扉はあった。明かりの中にくっきりと鳥の彫刻が浮かび上がる。
「おっ。さっそく使う時が来たな」
 グレンの促しで、シャロンが鳥のコインを扉に差し入れ、扉を開く。するとまた蔓薔薇の扉が現れ、それを抜けたさらにその先のドアが、リリアナと戦った、あの噴水のある休憩場所へと繋がっていた。
 地下五階未探索の場所は後二か所。
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