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異郷より。 作者:TKミハル

『遺跡ミストランテ』

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〈地下四階 対の迷宮〉

 今回戦闘シーンがあります。
 長い階段を下りた先は暗く、滑らかな石の壁に設置されたランプの淡い光が広くがらんとした部屋の中を照らしだしている。

〈Ⅳ-18 対の迷宮〉

 正面の壁にくっきりと刻まれた文字は無機質で、整ってはいるが特徴らしい特徴がない。
「18人か……」
 シャロンがそう呟いた言葉は、湿った冷たい空気に吸い込まれていくようだった。アルフレッドがシャロンの腕をくいっと引き、
「この場所、音がひどく聞き取り辛い。気をつけて」
そう忠告する。
「……そうだな。注意深く進もう」
 今までアルの耳の良さに頼ってきたが、ここはそうもいかない。

 シャロンは広い部屋を見渡し、三つの扉のうち、階段横の一つだけ鳥の浮き彫りがほどこされている石の扉を選び、力いっぱい取っ手を引いた。……が、どうやら鍵がかかっているのか、押しても引いてもまったく動かない。

「ここに細長い穴があるね」
「そうだな。ひょっとしたらどこかに鍵があるのかもしれない」

 鍵を入れるというよりは、まるでコインを入れるような穴だが、もしかして有料とかいうんじゃないだろうな……。

 まずはやってみよう、と、銅貨や銀貨を取り出して嵌めてみたが、途中で引っかかり奥へは行かなかった。
「やっぱり無理か」
 さすがに、金貨で試す度胸はない。諦めて東側の扉を開けると、その向こうには幅が広く鈍い黄金色の、流れる水と美しい女性が装飾された扉が鎮座していた。

 ギ、ギ、ギィと音を立てて左右に開くと、寒々とした空気が一気にこちら側へなだれ込む。

 そこは、人が五人上に繋げれるほど高い天井と、地下一階の大広間とまではいかないが、かなり広い空間になっていて、真ん中にはこちらと向こう側を分断する形で大きな溝があり、向こうの壁にはドアが二つ間隔を置いて並んでいた。

 溝の端まで近づき、覗き込むと、人が縦に二人分ほどの深さがあって、左側に黒い鉄のはしごが下りていた。
「あそこから下りて向こう側に行くんだろうけど……どうも、気が進まないな」
「右側の壁に穴、底の左端にも……」
「まあ、今は機能していないかもしれない。まずは下りてみようか」

 シャロンとアルフレッドは鉄のはしごから底へ下り、向かいの壁の右端に設置されたはしごを目指して慎重に歩き出したが、ほとんど進まないうちに、カチッ、と何かの装置が動く音がした。

 ドドドド、と轟きとともに右側の穴から勢いよく水が吹き出し、一気にこちらへと流れてくる。

「くそ、やっぱりか!」
 すぐに元来た道を引き返し、息を吐くのももどかしくはしごにしがみつきよじ登っていくと、水はまたたくまに底を満たし、濁流となって後ろのアルを飲み込もうとする。
「おい大丈夫かッ」
 慌てて手を掴み、ぐいぐいと引っ張りあげたが、彼の靴の片方が脱げ、排水口へと流されていった。

「ひとまず、無事でよかった」
 シャロンはほっと一息吐き、続いてアルフレッドが、脱ぐ、といっていきなりベルトを外しだしたので
慌てて背を向けた。

 ズボンと下穿きは完全に濡れてしまったらしく、彼は両方とも脱いで上着を腰に巻いただけの状態になった。
 絞ったそれらを床に広げ、
「……シャロン、早く」
アルが催促した。
「え、何をっ」
 動揺してしまったが、彼がぶっきらぼうに、剣、と言ったのでやっとわかり、なんだかなあと思いながらも、剣を振って風を起こす。

 小一時間ほど振り続けてやっと乾いたが、お互いにかなり消耗したので休憩を取り、再び階段のある部屋へと戻ってきた。
 魔物に出会わないことを祈りつつ、まだ行ってなかった南側の扉を開く。

 開いた瞬間に、突然シャロンの足に、吸盤のある触手が絡みつき、そのまま床に引きずり倒された。

「タイミングの悪いッ」
 シャロンが毒づきながら抵抗している間にアルフレッドが一足飛びに近寄り触手を切り離したが、前方の丸い物体からもう片方の触手が放たれ、彼女はそれを転がりながら避けた。

 身を起こして距離を取り、改めて魔物を見やると、異臭漂う緑の丸い体にぱっくりと口が開き、いくつかの眼がこちらを瞬きもせず凝視している。そのあいだも触手は絶えず動き、迫ろうとするアルフレッドに対抗していた。

「風よ、あいつを斬り裂け!」
 怖気が走りながらも剣を抜き放つと、疾風は狙い違わず触手と魔物の体の一部を切り裂いた。続いてアルが肉迫し、眼の一つを抉り斬る。

 ギュアアアア、と得体の知れない液を撒き散らしながら怪物は暴れ、急いで風を練り風圧でそれを飛ばして近づき、生えかけた触手を斬り放すと、次いで相手の口にアルが剣を突き立て、真横に切り開き、魔物は断末魔の悲鳴を上げながら崩れ落ちていった。

「つ、疲れた」
 魔物が滅びたのを確認して、シャロンはどっと座り込む。
「アルー、さすがに限界だ。少し、休む……眠い」
 え、と驚き慌てて駆け寄ってきたのを見届けると、彼女はそのまま眠りに落ちた。
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