挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異郷より。 作者:TKミハル

幕間2

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

50/342

 共闘(?)と情報交換

 戦闘シーンがあります。ほんの一部ですか流血表現苦手な方ご注意ください。
徐々に大きくなる足音に、立ち去るか、それとも……と迷ったが、最終的に留まる方を選んで剣を抜く。隣でアルフレッドも黙って柄に手をかけ、じっと前を睨んでいる。

 やがて、前方の分かれ道から子牛ほどもある二つ首の犬が現れ、牙を剥いて吠えたてながら次々に突進してきた。
 シャロンがまず最初の魔犬めがけて剣を振り、同時に隣から一歩踏み込んだアルフレッドが後ろのもう一匹の鼻先を突いて牽制する。

 どうやら体が大きすぎて横並びにはなれないらしく、お互いにバウバウと吠えて息を合わせながら体を揺らし攻撃のタイミングを計っている魔犬。それを見たシャロンにあるアイディアが閃いた。

 並ぶ魔犬を一網打尽にしようと剣を振り上げたところで、突然何者かが雄叫びを上げ、走り寄ってきた。
「どけ!犬ころども!」
 斬り飛ばされた最後尾の魔犬の合間から、金と茶の入り混じった髪とバンダナ、不敵な笑顔が見える。
「姿はよく見えないけどきっと可愛いであろうお嬢さん!僕らが来たからにはもう安心してください!」
 わけのわからないことを叫びながら横幅のある剣で犬の双首を突き刺し、薙ぎ払い、吹き出す血潮をものともせず、おろおろと惑う最後の一匹に接近してその首を刎ねた。
 ズゥウン……と最後の魔犬が倒れたところで、その後ろから新たに皮鎧を身につけた二人の男が現れ、息を切らせてこちらへ向かってくる。

「おい、リーダー、単独行動は止めてくれよッ」
とおそらく北西地方出身の金髪色白でそばかすのある男が言えば、
「そうだぞリオル。見ろ、この並んだ姿……魔物でさえ仲間意識とか、協調性とかを大切にしているってのに!」
まだ十代でありながらこれまでの人生での苦労がそのまま顔の造りに出てしまったかのような短い茶髪の男が訴える。
 こちらはその日焼け具合と言い、雰囲気といい、どうもリオルとかいう男と同郷っぽい。

「何言ってるんだ二人とも。待っているあいだに逃げられたらどうする」
「突然リーダーみたいなのに言い寄られたら、誰だって逃げるっつうの」
 爽やかに笑うリオル(?)に半眼で返し、二人はカバンから大きめの袋を取り出すと魔犬の死骸をそこへ引きずりいれていく。
 そのあいだにもリオルはこっちに向き直り、輝かんばかりの微笑みで、
「こんな所で出会えたのも、きっと天の導きに違いありません。僕はライオネル・グレイです。あなたの名前は?」
「……シャーロット」
 とりあえずと、名前を告げた途端、横からベシッとアルに叩かれた。
「痛てっ。……なんだよ」
「シャーロットさんですか!……シャロンと呼んでもいいですか?」
「待った。そこまでにしとけってリーダー。彼氏持ちだろ?めっちゃ睨まれてるし」
「何を言うんだ!貴重な出会いなんだぞ!?この、むさい男ばっかりのダンジョンに愛らしい女性……このチャンスを掴まずにどうする」

 爽やかに言ってるが……残念ながらこの言葉で、このライオルの評価はかなり下まで落ちた。というか、当人の前でぶっちゃけてどうする。

 シャロンの眼差しが氷点下になったのを悟ったのか、短い茶髪の男が、
「あ~、こいつ、悪い奴じゃないんだけど……馬鹿がつくほど素直なのがキズで。……すんません」
と謝罪してきた。
「そういや~まだ名前も言ってなかったっすね。おれはステイツ・タトル。そっちのひょろいのがカルロス・バーナード」
「ひょろい言うな。シャーロットさん、なんか魔物の死骸勝手に袋に入れちゃいましたけど……必要なら分けましょっか」
 重そうな袋を引いて、カルロスがそう提案する。
「いや、別にいいけど……そんなもの、どうするんだ?」
「そりゃー、いろいろ。剥製にしたいって貴族もいるだろうし、皮剥いで売るもよし……ただ、おれたちみたいに独自のルートを持ってないと、安く買い叩かれちまうけど」
そう言ってステイツがにやっと笑う。

「だいたい、本当ならもっと体を傷つけず倒すこともできたはずなんだ。まったくリーダーは……」
「そうは言うが、女性の危機だったんだぞ!?」
「……女性といえば、この遺跡にリリアナが来ていたじゃないか。彼女はどうしたんだ?」
続きそうな言い争いを止めようと、シャロンが慌ててそう話題を振ると、カルロスとライオネルはピタリと口を閉ざし、
「彼女はここのオアシスだ」
「あの女性ひとは遺跡唯一の癒しなんで」
とほぼ声を揃えて答えた。

「でも、残念ながら引く手数多……一応、なんとか人目を盗んで一緒に行かないか誘ってみたけど断られてね。別の、羽振りよさそうなパーティーと行動してるのを見かけたよ。下の階で」
カルロスががっくりと肩を落とす。
「下の階?どうやっていくんだ?」
 シャロンが思わず尋ねると、そこでライオネルが不気味に笑い、
「いやいや、シャロン……じゃなかったシャ-ロットさん」
なぜかわざわざ言い直して、
「貴重な情報だ。そう簡単には教えられない。でも、ヒントだけなら……また今度会った時に、一緒に飲みに行ってくれるなら教えてあげなくもない」
「…………わかった。教えてくれないか?」
 そう答えると、ライオネルは今にもスキップし始めるのではないかというぐらい嬉しそうな顔をして、
「じゃあ、約束だ。地下への階段は、まわりにはなく、どこかの中にある。後は歩き回って見つけるといい。それと、君たちもひょっとしたら僕たちより先に遺跡のヒントを見つけるかも知れないし、これからは会ったらお互いに情報交換しようじゃないか」
「たまには良いこと言うなリーダー。賛成だ」
「同じく」
 カルロスとステイツも賛成し、こちらもアルに確認したら特に異議はないとのことだったので、そうすることにした。

「ええと、でも今こっちが知ってるのは、この階の回転床と、近くにあった部屋のネズミ発生装置のこと、なんか怪しい男たちがうろついていたってことぐらいなんだが」
「ネズミ発生装置?おれらも回転床近くの部屋に入ったけど宝箱があってラッキーとしか思わなかったな」
とカルロス。
「そうなのか?回転床がいくつもあるってことは……」
「いやー、確か一つしかなかった。おそらく、いくつもある部屋のうちの一つが魔物、一つが宝箱だったんだろうなあ」
「そうか……。いや、その装置はもう壊したから心配ないけれど」
「そりゃー、お疲れ」
 間延びした口調でステイツになぐさめられ、なんとか気を取り直すと、ずっと考え込んでいたライオネルがやっと顔を上げ、
「あのさ、僕たちはこの魔物を売って商売にしてるけど、ここにはそうじゃない冒険者がほとんどなんだ。これまでの探索で、他の奴らが期待したようにはお宝が出ていない。だから……気をつけて」
そう忠告する。その言葉に仲間の二人も驚き、
「ライオネル、どうしたんだ。急にまともなこと言い出して。……まさか、さっきの戦闘で頭をやられたのか?」
「……ステイツ、今日はもう引き上げよう。もうすぐ夕方だし、早くリーダーを医者に診せないと」
「うるさいな。僕がまともじゃおかしいみたいじゃないか」
「いや、明らかにいつものリーダーと様子が違う」
「僕だって真剣に考えるときはあるさ。彼女にはできるだけ危険な目にあってほしくない。……約束もあるし」
 最後の方は呟き声だったが、それで二人は納得したらしい。な~んだという表情になり、
「それじゃ、オレらはこれで。そっちも気をつけなよ!」
「ああ。ありがとう」
お互いに手を振って気持ちよく別れた。

「やけに親切なパーティーだったな」
「……そりゃ親切にもなるよ。客観的に見たら獲物を横取りしたと思われかねないことをしたのに咎め立てなしで、しかも獲物はそのまま手に入ったんだから」
「ああ、そういえばそうだな。でも、その代わりヒントも手に入れることができた」

 言われたとおりになるべく内側を探索し、やはりいくつもドアがある通路を、何度も行き来するうちにアルフレッドが違和感に気づいた。
「この部分だけ、入れなくなってる」
 通路に面した壁をガツッガツッと剣の柄で叩き、音を確認すると、近くのドアから細長い部屋へ入り、右のドアを開けてまた細長い部屋に出ると、左の壁を探り、その一部を両手で押すと、壁が手前に傾き、階段への入り口が出現した。

「次は……地下三階か」
「うん。でも、このまま行くのは危険すぎる。いったん町へ戻ろう」
「そうだな。なんだかこの中にいると、時間の感覚がなくなってきそうだ」

 階段を上がり遺跡の外へ出ると辺りはすっかり薄暗く、東には二つの月がちょうど縦に並び、白い輝きを放っていた。
 シャロンは恋愛沙汰とかその手のことは面倒だし苦手なので考えないようにしています。
〈今回の魔物〉
 黒妖犬…大きさは子牛ほどで二つ首だが、性質は野犬そのもので、特殊能力も無し。地下二階で主にネズミや冒険者の落とした食料などを食べている。
〈地下二階・蛇足的補足〉
 シャロンたちが寄ることはなかったが、西側の壁付近にある小部屋には銀貨の入った宝箱がある。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ