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異郷より。 作者:TKミハル

『荒れ地と竜』

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隠れ営利主義への応酬

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 後ろの巣穴では轟々と炎が燃え盛っている。

 アルフレッドの元へ駆け寄ろうとするシャロンをエドウィンが引き止めた。
「あれを倒すのを先にしないと」
 その言葉に振り返れば、巣穴からトカゲが這い出て、慌てて逃げようとしているところだった。
「あああ、もう!おまえがやっつければいいだろうがっ」
 思わぬスピードで遠ざかりつつあるトカゲにヤケ気味に短剣を投げつければ、それは狙い違わず頭に突き刺さり、すぐにその黒い体は空中へと霧散した。

 それから改めてアルフレッドの側へ寄り、抱き起こすと、無残にもあちこちがひどく腫れ上がっていて熱い。エドウィンはなぜか荷物の中から袋を取り出し、火蟻の羽や死骸を詰め込んでいるが……シャロンにはそれを咎める余裕などなかった。
「く……一旦、ここを離れよう」
 頭上高くをブゥゥンと生き残りの羽蟻たちが行き交い、予断を許さない状況の下、アルフレッドを慎重に馬に乗せ、水場へと戻ることにした。

 離れていたヨアキムに声をかけ、途中にあった袋を一応回収して水場へと辿り着くと、まず彼の体を注意深く探り、刺さった針を抜いていく。それから濡らした布で患部を冷やすが、湯気が立つほど発熱している。
 エドウィンがその傷口を確認しながら、
「しかし、運がよかった。おそらく彼の持つ剣の魔力で相殺されたせいでしょうが……あの烈風によるダメージはまったくない」
 運がよかった、か……アルフレッドを見る限り、とてもそうとは思えなかった。
「シャロンさん……これを。あなたたちが戦っているあいだに集めておきました。この草の汁は腫れによく効きます」
 ヨアキムがこちらに弾力のある妙な草の束を渡してきたので、それらをまとめてぶちぶちとちぎって握り、出てきた汁を塗りたくる。う、と小さく彼が呻いた。しかし毒はまわったまま、動悸もずっと不安定な状態が続いている。焦りが募り、背中を嫌な汗が流れていく。
「……エドウィン、おまえの荷物の中に毒消しの類は?」
 絶望的な思いでシャロンが問えば予想に反して、ありますが、とエドウィンが返答する。
「なッ……早く出せ!」
「効きますが、値が張るのが難点で……って、迷わず使いましたね」
「当たり前だ!」
 薬を飲ませ、しばらくしてやや呼吸が落ち着いたものの、発熱は止まず、なかなか意識が戻らない。
「う~ん……これは量が足りなかったんですかねえ」
「じゃあ、もう一本飲ませるか……」
「あれ、いいんですか?さっきの分とこの一本で、シャロンさんの報酬ほとんどゼロになっちゃいますけど」
 うっ、とシャロンは心の中で呻いた。エドウィンがこういったことに対してシビアなのはすでに証明済みである。
「ああ……仕方、ないな。それでいいから――――――」
 言いかけたシャロンの腕を、アルフレッドの膨れた手が掴んだ。
「アル、大丈夫か!?いや、まだ動かない方がいい」
「薬、のお、かね」
「……聞いてたのか。大丈夫だ。いや、微妙に大丈夫じゃないが、今は火蟻の毒をなんとかすることが先決だから」
 慌てる彼女の腕を支えに、アルフレッドは身を起こす。左の、腫れが少ない方の目でエドウィンを見据え、
「その、袋と交換」
アルフレッドが運んできた大ワシの羽やくちばしが入った袋を示した。
「この袋、ですか?それほど価値があるようには思えませんが……」
 渋い顔をするエドウィン。調子が戻ってきたのか、呼吸が随分安定したアルフレッドは、ふうと大きく息を吐いた。
「それなら、かまわない。このままターミルへ帰って……報酬を半分貰う」
 チッ、と舌打ちが響く。
 シャロンがあれ?と疑問を抱いてエドウィンを見やるが、その時には彼はもういつもの表情を取り戻していた。
「いいでしょう。その袋とこの薬を一瓶引き換えですね」
「飲んだのと二瓶分。じゃないと無理」
「くっ……まあ、かまいませんよ」
 苦々しく笑ってこちらへ薬瓶を放り投げる。わっ、とシャロンが受け止め、それからアルフレッドに使おうとしたが、彼はそれを押し留め、しまっておくようにと話した。
「シャロンさんて……とても、思われてますね。それに、あの人をやりこめるなんてすごいや」
 ヨアキムが感心したように言う。
「はあ……まあ、旅の連れだから助け合うのは当たり前じゃないか、と」
 証拠のことは盲点だったな……とシャロンは、エドウィンがターミルの権力者から受けたという依頼のことを思い出していた。

 魔物退治の達成報告には、往々にして証拠の提示が求められる。

「いえ、そういうことを言いたいんじゃなくて……」
 ヨアキムはもどかしそうな表情をしたが、肩を落とし、
「アルフレッドさん……苦労しますね……」
となぜかアルフレッドを励まして、自分の馬へ乗せた。

「シャロンさんも早く乗ってください。もうじき日が暮れます」
 大切そうに袋を乗せた考古学者もまたこちらへ声をかけてきたので、ありがたくその提案を受け、荷物が幅をきかす馬の背へと跨ってターミルへと帰ることにした。

 道中お互い倒したトカゲの数を確認すれば、どうもストラウムとその付近に多くいたらしく、残り二匹を残すだけと判明した。

 これ以上は何も起こらないでほしいと、夕暮れの平原を眺めながら祈らずにはいられなかった。
 エドウィンは相手が必要な時を狙って物を売るので、一緒に行動している者が一番搾取されやすいです。
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