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異郷より。 作者:TKミハル

幻想楼閣

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VS 守護龍 2

今回、短めです。戦闘シーン、流血描写あり。
 シャロンがわざわざ龍の鼻先へ動くのを、アルフレッドは冷静に見ていた。

 今でもごくたまに見る、白く、あてどもない世界を形見の剣を探しながら、さ迷う夢。

 その話をすると彼女は一瞬だけ顔を歪め、すぐに何か決意を秘めた表情で、そうか、と受け入れていた。


 人の好い。それは、この世界では、生きにくいほど。

「おい、シャロンが」
 心配そうな表情を見せ、わざわざ告げに来たアイリッツ。……こいつも、被虐趣味を疑うほどに、甘い。

 なぜだろう。あの、ゼルネウスとかいう得体の知れないのを滅ぼす、そのためにいるはずなのに。この甘さは、ほぼ致命的。

 龍の強靭な鱗により、剣は通りにくく、力を籠めても、跳ね返される。

 アルフレッドは、ひたりと寄って斬りつけ、引く。寄せては返す波のような動きを繰り返していた。強く斬りつけたとしても、虫が刺した程度にしか感じていないだろうその龍の動きに、口端が吊り上がる。

 まさに目と鼻の先で風を操り、シャロンがこちらに目くばせをし、ひらひらと龍の気を引きつける。シャロン、囮として風を使い跳ね上がるのは、まさに、目と鼻の先。

 そのあぎとが届く前に、めいっぱいの力を籠め、その硬い体躯に剣を突き立て斜めに走らせた。


 圧倒的な存在感と、強さを誇る、龍。……相手に取って、不足はない。

 アルフレッドは息をひとつ深く短く吸い、シャロンの動きに最も良いタイミングで一撃を打てるよう、タイミングを合わせ、効かぬなら連撃が放てるよう柄を握り剣に力を籠め始めた。


「ち、なかなかダメージいかねーな」
 白の髪をうっとうしげにガシガシかきあげ、アイリッツ。ちらりと危惧の色が赤褐色の瞳に浮かぶ。

「抑えろ。やれることをやれ」
 そう告げれば、わかってるよ、と苦い返事が返ってきた。

 シャロンが風に乗り、ちらちらと舞うように龍の気を引き、一筋二筋と風とともに剣戟を浴びせ、髪一重で龍の顎をかわす。と、蒼龍が、轟々と音を立てて青い炎を彼女に向けて吐き出した。
 アイリッツは心配なのか、笑みを消して、巨大な相手の羽根に斬りつけ、羽ばたきに刎ね飛ばされないよう慎重に距離を取る。


……風は、変わらず止んでいない。ビュウビュウと龍の周囲を吹き荒れ、気まぐれのようでいて、綿密に計算された風は、こちらを助け、守るように包み込む。


アルフレッドは一度龍の背を蹴り、跳躍した。風が、思いがけず高く自分の体を上げ、その勢いのまま縦に半回転して剣の切っ先を下に向ける。

突き刺す衝撃に耐えるよう、自然と手に力が籠る。押し上げていた風が止んで、後は、落ちるだけ。


グギュァアア、と低く蒼炎混じり咆哮が、再びシャロンへ浴びせかけられた。その体が炎で包まれ、加護の風が一時止む。


 自重により、威力の増した剣は振り跳ばそうとする龍の勢いさえも利用し、斜めに鱗を剥ぎ取った。さほど多くはないが、血飛沫があがる。

 アイリッツと協力し、重なる攻撃に淡い水色の鱗が、風に乗って舞う。シャロンなら、戦いのさなかでさえ、ひどく幻想的で儚いとでも考えそうだ。

 アルフレッドにはわずかに、高く売れそうだな、との思考が走るが、持ち帰れるわけはないと結論が出て、それきり興味を失った。

 龍の鱗が剥がれた僅かな隙間を狙い、剣を突き立て、相手の悲鳴を味わう。

手強い相手を、すれすれの状況でかわして、追い詰める高揚感。その手応えと充足感に、いつのまにか顔に笑みが広がっていた。


 轟、という音とともに蒼炎に包まれたシャロンは風の結界を張っていたが、それでもなお、空気は熱を持ち喉を焼き、ピリピリと肌が痛くなるのを感じていた。

 まだだ。あと少し。

 蒼の渦の中で、外の状況はわからないなりにも、耐えられるギリギリまで待つ。

 グギュァアアッ

 咆哮とともに首が逸らされ、その隙に風をぶつけ、一時離脱した。淡い色をした鱗が花びらのように宙を舞い、ひどく幻想的な光景を見せている。


 アルフレッドがさらに追撃を加えている。一撃、二撃、三撃。口元には笑みが浮かび、その高揚状態に合わせるように剣が、闘気を纏い、幾重にも膨らんでいく。

 速度を緩めず斬りつける様子は、嬉々としてどこか寒気すら覚えさせる。アイリッツがそれをサポートするように傷を抉り、双剣で追従する。


 見ようによっては、楽しそうな光景に、額から首筋へ汗を流しながら精一杯動きを読み、シャロンが風で絶妙な流れを作り、フォローし続けていく。一度、べたりと張りつく髪を搔きあげた。


 バサリ、バサリと動かし、蒼龍は飛ぶ。アイリッツはいったん離れたが、深々と龍の体に剣を突き立てたまま、身をひねろうとしたアルフレッドは、そのまま持ち上げられ、上空へと運ばれていく。

 龍が飛ぶ。羽ばたきで勢いをつけぐんぐん上昇し、点のようになったあと、一気に体を錐もみさせながら下降し、体をひねりアルフレッドを中空で放り出した。


 まずい!

 シャロンが風を操り、膜のように張って、凄まじい速さで落下するアルフレッドを受け止める。それでもかなりの衝撃がいったに違いない。ふらつき、立とうとするアルフレッドを、さらに風で遠くへ飛ばし、巨体からは思いもかけない速度で迫った龍の牙が、虚空を咬み千切る勢いで過ぎ去っていった。

 追撃前にと急ぎアルフレッドの元へいき、ふらつく彼の体をアイリッツと支え、少しばかり離れたところで下ろせば、一度頭を振り、もう問題ない、としっかりした眼差しで、剣を構えた。

そこへ炎が襲う。同時にシャロンが風の結界を展開する。

 長引けば、焼き尽くされる。その前にと、発射される中心部へと風を飛ばし、その力を利用して蒼炎から身を逸らす。

 縦長の瞳と獰猛な口が目の前に迫っていた。

 近ければ、反撃の威力は増す。シャロンは剣に風を籠め、鼻先目掛け斬りつけ、その腕をアルフレッドが引き、後ろに投げ飛ばす勢いのまま、黄緑の目を狙い剣を突いた。狙いはわずかに逸れ、赤い体液を流しながらもアルフレッドを咬み砕こうと顎をガバリと開け、閉じた。

「………!」

 風は、どこにでもある。

 アルフレッドの周辺に張っていた結界を弾けさせると同時に、彼が、衝撃波を口内に放つ。

 たまらず、龍が吐き出すのを、風でフォローするも、彼も無傷ではなく、腕が奇妙に折れ曲がり、肩から下にかけての傷がひどい。急ぎアイリッツが寄り、治癒ヒーリングをかけていく。


 ガァアアアア!

 咆哮とともに炎が彼らを襲い、本当に間一髪でシャロンは二人と炎のあいだに結界を張り、攻撃を防いだ。
〈蛇足的補足〉


白い世界をさ迷い歩く。その話を聞いた彼女は顔を歪め、決意をし……だいたいちょっといい食事を用意したり、品数を増やしたりする。彼も、いつもだと効果が薄れるので、ここぞというタイミングで、それを使う。
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