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異郷より。 作者:TKミハル

『荒れ地と竜』

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烈風の剣

 閲覧・お気に入り登録ありがとうございます。
 今回戦闘シーン有なので苦手な方はご注意ください。
 何やら渦が崩れたような模様の描かれた剣を取り出したものの、聴衆の反応は薄く、エドウィンはやや落胆した表情を見せた。

「あなた方はどうやらこの剣の価値がわからないようですね……」
 しかし気を取り直して言葉を続ける。
「せっかくですので、説明しましょう。まず、魔力を帯びた剣が実体を持たないものも斬ることができる、というのは先日話したとおりですが、それに加えて創ったものの意向にか、特殊な効果を付加されたものが時折あるんですよ」
 例えばこれ、と剣を持ち上げて、
「この剣には風の力が込められています。扱う者にもよりけりですが、強く願えばその分威力が増すようになっているので……あの火蟻を吹き飛ばすのにピッタリだと思いませんか?」
力強く言ってあの渦を見据えた。

 これほど離れていても、近くにいる無数のあぶのような嫌な音が強く弱く響いている。ヨアキムは青褪めたまま一言もしゃべらず、アルフレッドも厳しい表情で火蟻の渦を睨んでいる。

「そんなものじゃなくてもっと安全な方法が探せるんじゃないのか?そもそも、討伐隊が編成されるそうじゃないか」
「……シャロンさん。現状はあなたが思うより切迫しているんですよ。ストラウムでは、すでに小さいもの、弱いものから石化が始まっています」
「まさか」
 振り返ってヨアキムにそう問えば、硬い表情で頷いた。
「本当です。今はまだ、小鳥や子羊といった小動物や、病気で体力のない馬だけで済んでいますが……それがいつ人に及ぶかわかりません。村人はもうほとんどが熱に倒れています」
 小さく首を振り、
「逆に、魔物が増えてくれて助かりましたよ。現在はターミルからの人が途絶えているので大騒ぎにならずに済んでいますが……もし知られたら村ごと焼き払われてもおかしくはない」
そう吐き捨てた。

「そういうことです。あの渦の根元に巣穴があるので、おそらくそこにトカゲがいるはず。火蟻を吹き飛ばしたら、巣穴を焼き払い、トカゲが出てくるのを待ちましょう。これは、時間との勝負ですよ」
「だが、もしその前に火蟻に襲われたら……」
「運がなかったと思って諦めてください。他に方法はありません。とっとと始めてしまいましょう」
 冷めた顔でエドウィンはシャロンに油瓶と虫除けの粉とを放ると、馬へまたがった。

「僕は、無理です。遠くから様子を見てます」
 強張ったままの顔で首を振り、ヨアキムは馬を駆って離れていく。
「それでは、お先に」
 エドウィンはさっさと火蟻の渦の方へ近づいていく。

 シャロンは虫除けの粉を被り、アルフレッドにも渡して、自分の剣とそれから念のため腰の短刀にも高い金を出して買ったあの薬を塗りつけておいた。
「巣を焼き払うのは、私がやるよ」
 アルフレッドに言うと、彼は袋からいくつかの肉の塊を取り出し、布に包んでカバンにしまうと、代わりに中から油瓶を取り出し、
「余裕のある方がやればいい」
ともっともなことを言った。

 火蟻の渦近くは羽音が大きく、ほとんどお互いの声が聞き取れない。遠く右側にいたエドウィンがこちらに合図したかと思うと馬から降り、剣を構え、一度止まってから大きく振りかぶった。

「う、わ」
 突然砂が巻き起こり、風がうねりながら竜巻となって火蟻の渦へと叩き込まれる。一瞬でそこから根こそぎ火蟻の柱が散らされた。
「よし、行くぞ!」
 馬が欲しいのはこういう時だと考えながら走り、火蟻の巣穴へ達するとすぐ油を撒き、火をつける。乾燥しているせいで、火はあっというまに激しく燃え盛っていく。
「やった」
「シャロン、気を抜くな!」
 アルフレッドの怒声。後ろを見れば、いつのまにか再び火蟻が集まり、こちらへカチカチと警戒音を鳴らしている。
「くっ」
 様子見に寄ってきた一匹を斬り落とすが、塵のごとくまだまだ飛び交っている。

 血相を変えたアルフレッドがこちらに来ると、なぜかそれらはすべて彼の方へ襲いかかった。
「アル!」
 黒い霞に襲われながらも、彼は肉の塊を投げ、火蟻の半分がそちらに向かう。

 砂煙をあげて馬に乗ったエドウィンがシャロンの近くへと駆け寄ってくる。
「おい、こっちよりあいつを助けるのが先だろ!」
 エドウィンも蒼白な顔で火蟻と戦うアルフレッドを見つめ、
「駄目です、数が多すぎる。彼は、もうあきらめたほうがいい」
「馬鹿ッあの剣を使えばいいだろうがッ」
 襟首を掴むシャロンに首を振り、
「あれは消耗が激しすぎて……私は力を使い果たしました。それに……もし使えたとしても、彼ごと吹き飛ばしてしまう。だから……無理なんです」
「もういい!貸せ」
 シャロンは無理矢理エドウィンから剣を奪うと抜き放つ。

 大丈夫だ……例え一緒に吹き飛ばしたとしても、生きていれば。祈りながら剣を構え、思いっきり振りかぶる。

 力強い旋風が起き、火蟻もろともアルフレッドを巻き込んでいく。

 しばらくして風が止むと、無数の火蟻の死骸の中に、彼が倒れていた。
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