挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異郷より。 作者:TKミハル

幻想楼閣

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

298/341

走駆 2

戦闘シーンあります。
 転がっていた黒い球体が、何事か起こす前にと素早くアイリッツとアルフレッドが動き、それぞれ両側から剣で斬りつけた。

 そして、ガギッという硬質な手応えに顔をしかめ、いったん距離を取る。

 そうやって見ているあいだにも、シュルルルと音を立てながら、一回り小さな別の球体が床をごろごろと転がってくる。
 白い靄をいったん晴らし、トラップを避けると、強力な一撃に反応したのか、それとも他の事が原因か、球体の表面にさざなみが走り、ポコッ、ポコッと表面に突起物が現れた。……重器モーニングスターの先端のような形をしている。

 球体はやがてその身を震わせ、細かく振動し音を立てながら、ゆっくり浮上し始めた。

 フィイイイイイイ

 たなびく靄が渦を成す。浮き沈みを繰り返しながら妙な音を立てる同時に、手元の剣が、吸い寄せられるような妙な感覚に捉われた。剣を絨毯に突き立て引き寄せられるのを防いでいると、飾り棚からだろうか、いくつかのスプーンやフォーク、食卓用ナイフ、栓抜きのような道具が、次々に吸い寄せられていく。

 急速に飛び交うそれらを避け、黒い物体の動向を探っていると、
「くッ!?」
床を滑るように動く別の球体が交互に動き、その刃が足をかすめてまた次の場所へ去っていった。

 アイリッツが跳躍し、硬い球体に斬りつける。再びの硬質な音とともに、彼はその身を震わせた。

「なんだこれッ」
「リッツ!何かわかったのか!?」
「……ああ。この球体は、超巨大な磁力を発生させ、その力により物を引き寄せている。中はエネルギーの塊だ。気をつけろ。溜まったら一気に来るぞ。たぶん、鉄製のもの目掛けてな」
「と、いうと」
 シャロンは絨毯に突き立てた手元の剣を見、同じように近くで剣を床に刺したまま待機しているアルフレッドに、
「アル!いったん手を離せ!」
そう叫んだ。

 同時に、黒い球体の震えが止み、そこから発生し留まり続けていたエネルギーが一気に解放された。

 放電、と呼ばれる現象が起こり、その場に紫の雷電が激しく散る。

 咄嗟に手を離し跳び退った彼らの剣へ、狙い違わず紫雷が走り抜けた。ベルトのバックルなどにも余波が走り、シャロンは息を詰める。

 アイリッツは最も早く動き、球体へ二度三度と斬りつけ、回復したアルフレッドも剣を引き抜き、大振りな一撃を食らわせる。

 シャロンはそのあいだに、部屋の壁に沿ってこちらへまわってくる別の回転刃の球体を弾き、また一度靄を吹き散らした。

「ちまちま衝撃を与え続けるしかないな……くそ硬ぇ」
「リッツ……おまえの出番だ。倍は活躍しろ」
 アルフレッドが無表情に告げる。

「ああ、そうだな。あの光に巻き込まれないの、リッツだけだから」
「おまえらあっさり丸投げかよ」
アイリッツがそう言って笑う。

 球体は再びその身を震わせ、むくりと身をもたげ、再び浮かび上がった。

 手近なシャロンが跳躍し、その体目掛けて剣を、硬さに顔をしかめつつも幾度か振り下ろし、続いて来たアルフレッドと入れ代わってフォローに回る。

 強力な一撃をアルフレッドが食らわせ、球体が浮き沈みしながら体を震わせエネルギーを溜め始めたところで、低く壁に剣を突き立てアイリッツと代わる。

 床に散らばった鉄製品が引き寄せられ始め、シャロンもまた床に剣を突き立て、辺りを窺った。二回目の衝撃がきたところで手を離し、避ける体勢を取る。

 アイリッツは逆に、剣の刺さっているポイントによって雷撃の強弱を予想し、その間隙を選び攻撃する。

 ガリ、ガリリと黒の体は削られるが、致命傷ではなく、再び雷撃が発動する。

 バリバリバリバリッ

 激しい音と光が走り、一時その場にいるアイリッツ以外の者の視界と聴覚を奪った。アイリッツが動き、シャロンとアルフレッドを自動球体トラップから遠ざけるようにあるいは腕を引き、あるいは体当たりして、その場からどかす。

「わ、悪い」
 なんとか視界の戻ったシャロンは、風を使い、黒い不恰好な球体を床へと叩きつけた。……あまり効果があるようには思えない。

 ウィイイイイイ

 振動音を立て、再び磁場が作り出され、鉄製品が球体の元に引き寄せられていく。アイリッツが先制攻撃を仕掛け、その状態を察知してシャロンたちに、
「おい、防御できるよう準備して、本体を見てろ!」
と叫んだ。

 シャロンたちは身構えたが、なかなか放電は起こらず、肌がピリピリと煽られ、髪の毛が少しずつ浮き始めた。辺りの空気が重く下がり、ふっ、と息を吐いたその瞬間。

 ズン!

 重い衝撃が来た。近くを紫紺の光が突き抜け、壁にぶち当たり火花を散らしつつ壁掛けを破壊する。続いてもう一度。余波を受けたアルフレッドの顔面が蒼白になり、アイリッツが急ぎ治癒ヒーリングをかけた。

 再びもう一度。シャロンが咄嗟に投げた椅子が木っ端微塵に、砕かれた。さらに、たまたま延長線上にあった球体トラップも砲撃を受け、バチバチッと火花が飛び散らせたかと思うと、床に転がり動かなくなる。

 そこで放出しきったらしく、ぼとり、と黒のトゲつき球体は床に落ちた。

「くそッ」
 シャロンとアイリッツが、今とばかりに次々と黒い球体に斬りつけた。アルフレッドもタイミングを見計らい、重い一撃を食らわせる。

「埒が明かない……」
 苦く呟けば、シャロン、とアイリッツが、
「今のアルの攻撃で、あの表面に微妙に傷がついた」
と黒い物体を指差して言う。

「ちょっと、私には見えないんだが……」
 眉根を寄せて黒いのを睨むこちらに、
「アルのフォローをしてくれ。その傷を“穀潰し”で広げてみる。うまくいけば……」
自信ありげに頷いたので、わかった、と返し、アイリッツとアルフレッドをじっと睨みつけた。

 黒の球体が再び浮かび上がりかけたところを、アイリッツが襲う。器用に壁や飾り棚、机を使い上手に体勢を変えながら探り、床を蹴って斜め下から上にかけて、その剣を突き刺し、深く突き立てていく。同時に、アルフレッドが動いた。剣を突き立てたアイリッツを目標に空中に跳躍し、そこにシャロンが、部屋を転がる回転刃球体トラップも視野に入れつつ風で安定した姿勢を取れるよう調節しながらフォローをつけ、アルフレッドが、幾度かの角度ののち、引き寄せられる力に逆らわず例の一点を狙い壁を蹴った。髪一重の絶妙なタイミングで入れ違いに剣を突き立て、そして足が痺れるのも構わず球体そのものを蹴ってそのまま跳び退った。

 シャロンも風の結界をアイリッツとアルフレッドに張り、即座に遠ざかる。そして、黒い球体の激しい放電が放たれると同時にアルフレッドの剣を媒体に集まった、強力な電磁波は自らの内側を焼き尽くし、辺りは激しい爆発に包まれた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ