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異郷より。 作者:TKミハル

『荒れ地と竜』

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にぎやかな場所

 今回戦闘シーンがあります。流血表現等、苦手な方はご注意ください。
 次の日、あまりよく眠れなかったシャロンは宿の冷たいテーブルに突っ伏していた。

「ふう……頭が冷える」
「シャロン、大丈夫?」
「大丈夫じゃないっ!あんな……あんな誤解を受けて、思い出しただけでも恥ずかしいんだよっ」
「……みんなの注目浴びてるけど」

 アルフレッドにさとされ、顔を赤くしたままで身を起こした。
「ま、まあ……昨夜は二人で他人の家の納屋にいたせいで、あらぬ誤解をされたが、あれで三体目だ。この町はほぼ探しつくしたんじゃないか?」
「うん。もう、町内から気配は感じない」
「ということは……魔物が増えているっていう荒れ地があやしいか……行きたくないなー」
 寝不足のためか思考が口から漏れているが、それに気づかず、
「とにかく、宿の主人に聞いてみよう。……今日は今日で、違っているかもしれない」

 ところが、荒れ地に行きたいんだが、と相談を持ちかけた主人は、ひどく難色を示して首を振った。

「死にてぇなら行きな」
「それはまたどうして」
 シャロンが尋ねると、
「知ってるだろ。魔物が多い。討伐隊を待て」
「しかし、それだと呪いが……」
「は?」
 訝しげに聞き返され、シャロンはなんでもない、と手を振る。

 この町全体を挙げて竜で客寄せをしてるんだったら、呪いなんて持ち出したらどうなることやら……だ。

「それで、荒れ地の方の天気は?」
「やや風が強いが晴れ」
 今の季節は雨がごく稀にしか降らないんだろうが……それにしても、せっかく色をつけたんだからもっとたくさん情報をしゃべってほしい。

 まあ、土地柄では仕方ないか、とシャロンは戻ってアルフレッドに声をかけた。

「アル、一度外の様子を見に行こう」
「わかった」

 手荷物を持ち、歩いて町の外れに向かう。いつのまに掘ったのか、深く細い溝が街を取り囲み、その中に虫除けの粉が入れてあった。

「なんだこれは……」
「大ワシだけじゃなく、火蟻も増えているんだ。おそらく、トカゲはあそこにいる」

 アルの指差す先、ずっと遠くには、蚊柱ならぬ、蟻柱が天高く渦を巻いている。

「あ、あれに近づくのか?」
「いや、二人では無理だよ。でも、これは……」
「ああ。時間が経てば経つほど悪くなるばかりだ。まずは、あの場所には近づかないようにして、他にトカゲがいないか探しに行こう」

 シャロンとアルフレッドは、飲み物や薬など必要なものを揃え、徒歩で荒れ地へと繰り出した。
 ウルスラは宿に置いてきてある。この地域の人々にとって馬は貴重な財産で、そう簡単に死なせるわけにはいかない。

「というか、死なせたら払う金がない……」
 切実な思いを呟いて、シャロンはこっちに嫌な気配を感じる、というアルフレッドの後をついていった。

 歩き続けてやってきたそこは、まわりを高い崖に囲まれた広い空間だった。その崖より上を、ゆっくりと大ワシが飛んでいる。どうも、こちらを窺っているようで気味が悪い。

 奥へ向かっていくと、空に円を描くワシが一つ、また一つと増え、やがて着いた終点には子ども一人が潜り込めるぐらいの穴があり、そこで寝そべっていたトカゲがのっそりとこちらへ動き出した。

「……なんか、大きくなってないか?」
「そうだね」
 アルフレッドは腰の剣を抜き、トカゲへとかざす。トカゲは大きいため動きが遅く、足を動かすが逃げ切れない。

 それを観察していたシャロンは、まわりに落ちている妙な影に気づき、上を見上げた。
「う、わっ」
「……なに?」
 剣を振りかぶっていたアルフレッドがそのまま振り返る。

 大ワシが崖の上で留まり、こちらをじっと観察していた。その数、およそ三十羽。

 ッザンッ

 剣がトカゲに振り下ろされる。……それらは、アルフレッドがトカゲを断ち切ったのと同時に、一斉に襲いかかってきた。

 まず、最初にアルを狙ってきた大ワシを切り捨て、そのまま振りかぶって横の奴を薙ぐ。
「シャロン、後ろを」
「わかってる!」
 下がりすぎないよう注意しながらアルフレッドの背後に立ち、続いて三羽切り捨てた。

 なんか後ろからシャバッとか、ザシュッガシュッとか、ありえないほど音が響き、血飛沫が飛んでいるが、今は目の前のことだ。

 バサバサと羽音を鳴らして向かってくる奴の喉を捌き、その隣の奴の羽を斬り……だんだん、剣の切れ味が鈍ってくる。

「くっ……!」
 剣先が弾かれる回数が増え、もはや斬りつけているのか殴りつけているのかわからなくなってきたとき、
「……これで終わり」
 バサッとアルフレッドに飛び掛かったのが斬り捨てられたのを最後に、それは唐突に終了した。

「え、あ、終わったのか?」
 顔にかかっていた血を拭い、視界をはっきりさせる。

 後ろの、アルフレッドのまわりにはこちらに転がっている死骸の倍近い数が斬り捨てられていた。
「持っていけば、いくらか報酬が出ると思う……」
 剣で首を切り落とし、血抜きをしてロープへと結びつける。多少の疲労感は見られるものの、まだまだ動けそうである。

 ……切れ味も鈍っていないし。

 シャロンは剣を放り、座り込んで大きく息を吐いた。

 シャロンが寝不足でややくだけた調子になってます。
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