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異郷より。 作者:TKミハル

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急ぐ旅の道程は 4

 短めです。流血描写など若干ありますのでご注意ください。
 1月23日若干改稿しました。
 あちこちで血飛沫と呻き声が上がる。

 言われたとおりアルフレッドは盗賊たちを殺さず、ある者は指、ある者は足の腱、というように次々急所を的確に斬りつけていく。

 シャロンはヤケ気味に雄叫びを上げ向かってくる男の手に斬りつけ、殴り倒しながらも、彼の行動の、その意味をほぼ正確に理解していた。

 次第に活発に動くものは少なくなり、辺りには恨みの声が溢れていた。殺してくれればいいものを、と呪い呟く者もいる。

 いっそ、命を奪った方がよかったのだろうか。

 その方が世間の枠組みとしてはあっているのだろう、と、鬱屈した気持ちを抱えながらも剣に付いた血を振り飛ばし、シャロンは近くの服の切れ端で拭ってから鞘に収めた。
「シャロンが気にすることはないよ」

 よりひどく返り血を浴びたアルフレッドが傍へやってくる。
「彼らが選んだ結末だ。最初から」
 盗賊、という道を選んだ時点で、遅かれ早かれこうなった、と言いたいのだろう。

「……そうだな」
 頷いて踵を返そうとしたその時、わずかに開いた馬車の窓から、貴族らしき男の歪んだ表情がこちら、主に血塗れのアルフレッドに向けられ、下賤げせんが、と吐き捨てるのを聞いた。目を合わせるのを避けてかすぐに分厚いカーテンが閉じられ中は見えなくなる。
「……」
 もう一度アルフレッドを見た。

 彼らにとっては、さながら悪鬼か。……綺麗なものだけを見ていれば、アルの姿が受け容れられないのも無理はない。

 シャロンはやるせない気持ちで、自分の荷物から皮袋を取り出し、少しもったいなかったがその中の水で香草を包んだ手拭いを濡らして、血塗れのアルフレッドの髪、ひたいから頬、と丁寧に拭っていく。
「アルは、もっともっと評価されるべきだ。あんな言い方をされるなんて……」
 別に気にしてない、との言葉に、私が気にする、と返したが、先ほどからくんくんと鼻を動かしていたアルは、
「……シャロンの匂いがする」
「ッそういうことは言わなくていい!」

 汗などの匂い消しにと普段私が使っているから当たり前だろうが!

そんな斜め上からの返答にうろたえながらも、拭い終え大分さっぱりしたところで、
「そういえば同乗のあいつら、どこかいったな」
と尋ねると、
「最中にこっそりあっちの茂みへ去るのを見たけど」
と普通に返された。

 まあ、だいたい予想はしてた。

 そんなやりとりをしていると、馬車の中から、従者か商会の者だろう、といったそこそこ金のかかった身なりの中年男が出てきて、
「おい、そこの者何をやってる。さぼってないですぐその盗賊を縛り、荷台に乗せろ」
と偉そうに命令した。

 私たちは、高いお金を払って、この馬車で来たわけで、そんなことをする義理はまったくない。もうこれっぽっちも、ない。

 言い争いになりそうな雰囲気を察知してか、それまで馬車の下で出るに出れなかったらしい御者が慌てて這いずり出してきて、必死に、
「この場はどうか、お願いします!ひとまず、この人の言うとおりに」
すがりつかんばかりの勢いだったので、不承不承ながらもぼちぼちと生き残っている盗賊たちを集め、荷台へ乗せようとしたが、
「狭」
まあ当然のごとく入りきらない。

 従者風の男が尊大に、
「全員を乗せる必要などない。盗賊のかしらと、それに類する者を乗せればいいだろうが」
と言ってきたので、怒鳴り返しそうになったものの、ぎりぎりで堪え、こうなったら町に着いた暁にはギルドでこの商会のあることないこといろいろ話してやる。例えそれで護衛が雇えなくなったところで知ったことか、とシャロンは仄暗い笑みを浮かべ内心で誓う。

 そして、盗賊の頭はアルに馬とともに斬られ、帰らぬ人となっていたので、その身のまわりの品と、盗賊たちの中でも中心格っぽい者たちを乗せ、猿ぐつわとついでに目を覆って馬車に積み込んだ。

 そのうち御者が、口輪の紐が木にからまり動けなくなっていた馬と、盗賊の一味が乗っていたらしき迷い馬を連れてきて、なんとかなだめ馬車につけたので、頭の天辺はともかく態度だけは尊大な男も馬車へ乗り込み、シャロンたちも荷台の隅へと再び腰を落ちつけ、馬車は出発した。

 ガタゴトと揺られ、隣に座っているアルフレッドの体温を感じながら、シャロンは思う――――――。

 もし、自分が家を飛び出さず、貴族の暮らしを続けていたのなら。冒険者となり庶民の暮らしになじむことなく、あの、アルを下賤と吐き捨てた男や、何やら横柄に命令してきた男たちの側になっていたのだろうか、と。
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