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異郷より。 作者:TKミハル

『広い海と嵐と魔物と』

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心構え

 最初アルフレッド寄り視点です。
 舳先側の甲板に設置された椅子やテーブルのまわりには、傭兵や冒険者だろう日に焼けた壮年の男たちが、グループに分かれ酒を飲んだり、歓談しあっていたが、シャロンの姿は見当たらなかった。

 まだ部屋にいるのだろうか。

 船を一巡して大方の物の位置を確かめたあと、何をするでもなく辺りを眺めていると、真上に昇ってきたらしい太陽が雲の切れ間から顔を出した。

 同時に船長室から慌てて、フードを被りカーブがかった板と細く長い型の板を組み合わせた妙な器具を持ったレイノルドが出てきてこちらに目を留め、おーいと呼びかけてくる。
「アルフレッド、ちょうどいいところに。これを頼む」
「……これは」
「こっちの板の穴ともう片方を合わせて、水平線を見てくれ」
 言われたとおりに目盛のついた細長い曲がり板の端を持ち、二つの穴を同一線上に持ってくる。
「それで、小さい方のアーチ形目盛り板の上のつまみを、と」
レイノルドは説明しながらつまみの影が尖端の板の穴に重なるよう動かしていく。

 たまたまこちらに歩いてきた男が、おそらくそのフード姿にだろうがぎょっとして、次に首を傾げ、ああ、と納得したような顔つきになると興味を失ったように通り過ぎていった。
「あとはこの数字を足して、暦と照らし合わせて緯度を割り出す……いいぞ、ありがとう」
 天測器を下ろしたところで、
「あれ、こんなところで何やってんだ」
軽薄そうな誰かの声がかかる。
「アルじゃないか。なんだ、一人でいるってことは、シャロンに振られたのか気の毒に。って、睨むなよ冗談だっての」
「別に睨んでるつもりはないけど」
「へ?あ、そう?」
肩すかしを食ったようなジーク。その反対側、舳の方から、聞き覚えのある足音が近づいてきていた。

「あれ、こんなところで揃って何やってるんだ」
「緯度の計測だな」
「あ~、ちょっと前に言ってたあれか。……アル、部屋はどうだった?」
 十中八九相部屋に違いないと予想して尋ねたのだが、」
「手狭だけどありがちな部屋」
斜めにずれた答えが返ってきた。
「いや、そうじゃなくて、メンバーは」
「普通?」
「なぜ首を傾げる……」
 シャロンは思わず突っ込んだが、それを聞いたジークはうんうんと頷き、
「あれ、アル君小部屋の方なのかー。じゃ俺もそっちにしようかな」
「来なくていい」
 アルフレッドの嫌そうな顔にもめげず声をひそめ、
「ここだけの話、ケインが大部屋に行くの見たんだよ。あいつと同部屋だとろくなことにならない気がするしさ」
「……」
「あ、呆れた顔するなよ。結構重要なんだぜ!?オレ神経質なところあるからさ、気の合わない奴と同部屋なんてさ、硝子の心臓がバクバク鳴っちゃうよ」
 冗談めかして言うジークにレイが呆れ、
「おまえのはむしろ鋼か鉛って感じだな」
的を得た発言をするが、いやいや、こう見えても細やかな気づかいができるって評判が高いんだぜ、とジークが返し、最終的には船長室の扉を開けヒューイックが、
「おまえら部屋の近くで何ごちゃごちゃとやってる。いいかげん中へ入れよ」
と出てきたので、四人で中へ入ることにした。

 船長室は思ったより狭く、真ん中にはテーブルがあり、そこに海図が広げられている。
 レイノルドはその隣の羅針盤で方位を確認すると、先ほど調べてメモしたらしい数字を早見表としばらく見比べ、やがて定規を取った。
「今いる場所がここだ。やはり、ごくわずかに東へずれているな。西からの風が強いからそうじゃないかとは思ったんだが」
「それは帆の向きを調整すれば何とかなるだろう。それより、天候が気になる。時折湿った風がくるし、思ったより波も高い」
「そうだな。ひょっとしたら二三日の内に一荒れ来るかもな」
 レイノルドはこちらを向き、
「嵐が来たら、鐘を鳴らして知らせる。まあ、船内にいてくれればいい。帆は船夫でなんとかする」
「心得とかは」
 シャロンが不安げに尋ねると、ヒューイックは唸り、
「……絶対に甲板には出ず、なるべく静かにするってことぐらいか。問題はその後だな。船底に水が溜まったらポンプで出さないといかんし、おそらく船酔いする者も多く出る。余裕があれば、そいつらの手当を頼む」
「わかった」
 シャロンが頷く。
「あれ、オレは~?」
「何言ってる。おまえは帆や甲板の整備などやること死ぬほどあるだろうが。ひょっとしたら直接マストに登ってもらうこともありうる」
「はは、まあ、そうだよねえ」
 ジークが乾いた笑い声を立てた。

 それから先は専門的な話になりそうだったのでアルやジークと頷き合い、それじゃあ私たちはそろそろ、と暇を告げる。ヒューイックが、ルールは作ったが男連中には気をつけろよ、と忠告をかけてきたので、わかってるよ、と返事をして部屋を出た。

「なんだか、問題は山積みだな」
「なーに言ってんだか。まだ全然序の口序の口。嵐なんて普通だし、そんなこと言ったらこれから魔物も増えてくるんだよ?」
「まあ、そうだな。どうも船だと勝手が違う。こう、落ち着かないというか。アルも、そう思わないか?」
「思う。あと、足場が濡れやすく、危ない」
「だろ?」
「うーん、オレは昔からこういう手伝いに駆り出されてたからかな、むしろこっちが安心するぐらい。てか船では滑りやすいところはだいたい裸足とかなんだけどね」
「ちょっと信じられないなそれは……」

 そんな話をしていると、あっというまに時間は過ぎ、日が傾いてゆっくりと海が朱色に染まり、夕食の準備ができたから、各々取りに来てください、と船員があちこちに声をかけ始めた。
 他人の前で裸足になる、ということは家族か恋人でもない限りありえない、という認識。
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