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異郷より。 作者:TKミハル

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資料と海図

 今回若干短めです。
 ヒューイック・ボナバントラとジークが奥の部屋にこもってしばらく後、ドスッ、ドスッと壁向こうから鈍い音が響き、短い時間のうちに何があったのか、大分憔悴した様子のヒューイックだけが出てきた。

 アイリッツという人の安否がどうとかいう話をハリーたちとしばらく話し、彼はこちらへやってきて、
「ジークとの話は一段落した。……それで、だ。俺に用事だったんじゃないのか?」
「え、と、私たちはジークについてきただけ、というか。今この町の沖に魔物が多く出るってことで、その事態をどうにかするため力を貸す、と」
「なんだか曖昧だな。ギルドで依頼を受けたのか?一部の商人はそういったたぐいの依頼を出していると聞いたが」
「いや、そういうわけでは」
言葉をにごすシャロンに、ヒューイックは大きくため息を吐く。
「情報収集か、船の護衛か。どちらにしても、生半可なものじゃない。酔狂で関わるのはよせ」

 あまりの正論に言葉もない。

 シャロンがすべなく佇んでいると、奥からバキャッと何かを壊す音がして、皆が一斉にドアに注目し、ややあって、髪が乱れてはいるがどことなく胸のつかえが取れたようなジークが姿を現した。

「悪ぃ。椅子壊しちまった」
「わかった。そいつは後で直せよ」
 こっそりいたずらを報告する悪ガキそのままの笑いを浮かべるジークに間髪入れずヒューイックが突っ込む。
「いや、オレ傷心中だし」
「傷心中だろうがなんだろうが、壊した責任はとれ」
「へいへい」
 肩をすくめるジークの腕を、
「ジーク、リッツさんが行方不明ってどういうことだ。何があった」
「向こうで、全部吐いてもらうぜ」
ハリーとブロスリーが捕え、再び奥の部屋へ連れていく。

 アイリッツ……確か遺跡のどこかで……。

 シャロンがバタンと閉まるドアを見つめ考えていると、
「こりゃ今日はここまでだな。おい、エンリコにロレンツォ。もう帰っていいぞ」
ヒューイックが残る二人に告げる。

 すると彼らは顔を見合わせ、真剣な表情で、
「……ヒューイックさん。俺たち、決めたんだ。ウィリスやモラン……やられた仲間のために、何か、せめて何かできることをしようって。だからこのまま手ぶらじゃ帰れねえよ」
エンリコが歯をギリッと食いしばり、ロレンツォもそれに同意する。
「そこの、シャロンとアルフレッドの二人は、解決に力を貸してくれるって言ってくれた。だから、俺らはここに手がかりを求めに来たんだ」
「……そりゃまた、壮大な話だな」
 ヒューイックはそう言ったっきりしばらく絶句していたが、やがて我に返り、
「手がかり、か。まあ確かに、ないこともない」
そう呟いて頭を掻きつつ棚に移動し、巻かれた地図を取って戻ってくる。

「これが、この町の港と南側数十~百数カロ先の海域だ。これまで船が魔物の被害にあった場所をまとめた資料もここにある」
「……これは?」
 アルフレッドが地図上にいくつも引かれた曲線や渦巻きを指し示す。
「ああ、それは潮の流れで、時期によっても違うから、参考程度だな。そこを乗り切るには優秀な案内人がいるな。で、本題なんだが」
 ヒューイックはいくつかの冊子を元に、朱インクで次々に地図上へ点を打っていく。

「これが魔物との遭遇箇所だな。船の中には沈んじまったのもあるが……引き上げるのすらままならねえ」
 朱の点々は歪な円形となって、ある場所へ向かえば向かうほど増えていることがわかる。
「ここは?」
 重なる円の中心部。朱印がいくつも打たれ、南南東でふっつりと途絶えている場所をシャロンが示すと、
「ああ、岩礁地帯があるから、この先には漁師も商船も近づかねえんだが……待った。確かこの辺りに……」
 そう言いながらごそごそと別の書類の山を探り、底の方から一枚取り出した。
「これだ、ローランド号。こいつは、沈まなかったのが不思議なぐらいのありさまで……生き残りが妙な証言をしてる」
 ざっと紙面に視線を走らせ、
「なんでも岩礁地帯の向こうで、白く神々しい海の主に逢った、と。恐怖と疲労のあまり頭がいかれちまって、幻を見たんじゃないかってえ話だったんだが」
「……でも、それが本当だとしたら?」
「まあこの話の信憑性はともかく、ここは調べとくべきだろうな。ほぼ、ここを中心に円を描いてる」
ヒューイックの指が歪な円の縁をぐるりとなぞった。
「やるべきことは、船、そして人員の確保。船は装備が充実した強固なものが必要で、人員の確保には金がいる。しかも大量に」
 ふっ、とため息を吐き、
「リッツのを使うか……仕方ないな」
何かを吹っ切るように目を軽く閉じ、それからこちらを向くと、
「で、本当に手伝う気はあるのか?命の保証はないが」
にやりと人の悪い笑みを浮かべて見せた。
 カロ……距離の単位。1カロは膝下から踵までの長さのおよそ千倍。
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