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異郷より。 作者:TKミハル

 番外 リリアナとエドウィン

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翌日の後始末1

 女性の方、不快に思われたらごめんなさい。
 シャロンは翌朝、非常に早起きをした。

 それはもう日が昇る前から村の空き地で一心不乱に鍛錬をしていると、アルフレッドも来たので、なるべく昨日のことは思い出さないようにしながらしばし打ち合いをし、それから宿へ戻って荷物をまとめ、朝食ぐらい取ればいいのにという主人の声にも構わずさっさとそこを出る。

  後は、これから向かうテスカナータまでの護衛など、割のいい仕事が入ってないか、ギルドへ軽く寄って、と。

 案内所兼ギルドの看板をくぐると、談笑していたらしい白っぽい髪の少年と受付の傭兵っぽい男(名はヤンセンだったような)が振り向いた。

 あの少年は、昨日の……

 思わず立ち止まると、アルフレッドが不思議そうな顔をする。そうしているあいだにもこちらを認めた浅黒い顔のヤンセンはなぜか渋い顔をして、
「本当に来たよ……もっと遅いと思ったのに」
「ははは、あの騒ぎと本人の性格をもっとしっかり判断すべきだったね」
「くそ、ほらよ、もってけこの野郎」
 男が少年にクアル半銀貨を渡し、しっしと手を振った。

 どうやら何かの賭けにされていたらしいが……それはさておき。

「ちょっと、いいか。もうこの村を発とうと思ってるんだが……ここにテスカナータまでの、なるべく詳しく載ってる地図がないか?」
「あー、まああるにはあるが……その前にそこの坊主の話を聞いとけよ。なんかご指名だぞ」
 すっかりやる気の抜けたヤンセンが指した先に、ジークとかいう少年がやーまた会ったねなどと白々しく言いながら手を振っている

「…………知り合い?」
 う、アルフレッドにどう説明したものか……。
「いやその、星祭りで会った。すぐ別れたし、大した話はしてない」
変なプレッシャーに若干焦りつつ慌てて説明したが、言い訳がましく聞こえてしまうのはなぜだろう。

「えー、それだけー?あんなに昨日は可愛い反応をしてくれたのに」
「なっ、何を……!?」
と、いけない。

 ヤンセンがすごく興味津々に聞き耳を立てているのに気づいたシャロンはとりあえず隅のテーブルへ行こうと声をかけた。

 そのジークと、私とアルが向き合う形で座り、もうさっきのことは無視してさっそく本題に入ることにする。
「それで、だ。おまえはなぜここにいる。指名したというのはどういうことなんだ」
「いやいや、説明しきれてないのに話進めるとかないでしょー。そこのおにーさんめっちゃ気にしてると思うよー」
 言われてアルフレッドを見るが、ジークを睨む目つきの悪さ以外に特に変わった様子はない。目つきの悪いのは人見知りだと、思うんだが……。

「あー、もういいや。あのさ、君とはほんとにちょこっと話しただけだったけど、オレ人を見る目には自信あるんだ。だから、この依頼も頼めると思って」
 ジークはふっ、と真顔になり、こちらを見上げてくる。

 ちなみに彼は私と背丈がほぼ同じぐらいで……テーブルに身を乗り出すと目線が少しだけ下がるんだが……。

 上目遣いというのはなかなか威力が大きいな。どうも計算された仕草っぽいけど、などと考えていると、
「内容と報酬」
アルがそっけなく言う。うーん、あまり機嫌がよさそうじゃない。

「まずオレの依頼は、少なくとも銀貨10枚の価値がある。信頼して話すんだから、聞いたら引き受けてほしいんだ。絶対に損はさせないから」

 な、なんか、急激ににうさんくさくなってきた。しかも、銀貨10枚……?

 嫌な予感が表情に出てたらしく、
「あれ、なんだもう気づいたのか。そうそう、あの虫がどうこうって例の依頼。あれってオレのことなんだよねー」
今度はあっけらかんとそう言い放つ。

「実はさー、昨日の星祭りで二件約束してたんだけど、年上の女と楽しんでいざ次へ!って勢い込んで待ち合わせ場所にいったらさ、相手がいなかったんだよね。時間に遅れるようなじゃないんで探しにいったら、なんと彼女の親父がいてさー連れ戻されたらしいんだ。だから、オレに協力してもらえないかと思って」
「……断る」
 てか、なぜこんなぶっちゃけてきた。

「あれ~、でもさ彼女家に閉じ込められてずっと泣き暮らしてるらしいんだ。可哀そうだと思わない?」
「おまえが原因だろうが!」
 しまった、思わず声を荒げてしまった。平常心平常心。

 すると、それまでずっと黙っていたアルフレッドが静かに、
「シャロン、心配することないよ。こいつをその地主に突きだせばいい」
衝撃の発言をした。するとなぜかその言葉にジーク本人が同意して、
「そうそう!それからちょっとした仲介してくれればいいんだ。オレがすごく落ち込んでいて、少しだけ彼女と話したいって言ってるって」
「……」
 どうしよう。とてもそんな風に思えないんだが……。

 むっつりしたアルフレッドの隣でシャロンが逡巡していると、やがてジークは深いため息を吐き、
「そうかあ……残念だなあ。引き受けてくれないとなるとオレ一人であそこへ行って……意気消沈のあまりお金目当ての貧乏そうな二人組に頼まれたとか、あることないことしゃべっちゃうかも」
普通に脅してきた。

 娘を盲目的に可愛がる父親がこいつの証言を信じるなんてことは……まずい。充分にありうる。

「……わかった。協力する。ただ話ができるようにすればいいんだな?」
「お、さすがっ。シャロンならそう言ってくれると信じてたよっ」
 ニッ、と裏なんてなさそうな笑みを浮かべ、親指と人差し指を弾いて投げキスの仕草をして見せた。一度肥溜めにでも落ちろ。

「大丈夫。もしものときはどうにかする」
 アルがこっちに安心させるように頷いて、自分の剣の柄にそっと手をかけた。……いったいどうする気なんだ。

 爽やかな朝だというのに、シャロンの胸中には暗雲がたちこめ、もはや嵐の予感しかなかった。
 前回のジークの言っていた頼まれごと、というのは嘘です。ナンパ相手に素直に待ち合わせしてるなんて言えないので。
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