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町をつくる能力!?〜異世界につくろう日本都市〜 作者:ルンパルンパ
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91.フジワラ領防衛戦 1

城郭の門ですが、外向きは間違いでした。
開くのは内向きですね。
修正する時間が取れましたら、修正します。
皆さん多数のご指摘ありがとうございました。
 ドライアド北部制圧に向けて王都を出発したイニティア王国の一軍。
 率いるのは、イニティア王国軍総司令官のレアニス。

 北上する軍はまず王領のすぐ北に隣接する領地に侵入、そのまま首府(領政を司る都市のこと)へと進んだ。
 これに対して、その地の領主はたちまちに降伏の書状をレアニスのもとに寄越した。

 さらに北、エルナンデル伯爵領においても同じ。
 軍を首府へ寄せると、またもや降伏の使者がレアニスのもとにやって来た。
 こうしてイニティア王国軍は、一戦も交えることなく、二つの領を手中に収めたのである。

 なお、これに関して、「国への忠誠が足りぬ、この不義者め!」と二領主を責めることは酷であろう。
 ドライアド王国において敵の手に落ちていなかったのは、北部の四領だけ(支配者がいる地に限る)。
 既に王都すら落ちているのだ。
 女王が北へ落ち延びていくのを見逃しただけでも、十分に義理を果たしたといってよかった。

 最短距離を通ってひたすらに北へと向かう女王オリヴィアと避難民たちに対し、レアニスはよく兵を休ませつつ軍を進ませた。
 これはオリヴィアの目的地と、レアニスの最終目的地が同じであったからに他ならない。
 途中無理やりに追いついて、乱戦となり避難民に被害を出すよりは、互いに場を整えた上での軍と軍同士の戦いを、レアニスは望んだのだ。

 また東にも一領あったが、これはエルナンデル領を制圧した際に、降伏の旨が記された書状を受け取っている。
 残る領はただ一つ、フジワラ領のみ。

 軍がフジワラ領に侵入すると、すぐに領の首府として使われていた大きな村があった。
 しかしそこは、人っ子一人いないもぬけの殻。

 これはおかしい。
 軍の本来の目的地はここ。レアニスは、ここで女王と雌雄を決するものと考えていたのだ。
 王都にて城郭都市云々の話は聞いていたが、そんなものはないと断じていた。
 いや、誰もいない村を目の当たりにしてなお、そう思っている。

 ならば、女王やフジワラ、またその領民たちはどこへ消えたのか。
 北に広がる大地に、逃げ込もうというつもりか。そこまで行けば追ってこないと。
 レアニスは首を捻りながらも、軍を村に駐屯させる。そして翌日、再び女王を追うように軍は進発した。
 こうとなれば乱戦になろうとも、女王に追いつき捕まえる以外に道はない。
 ――話はここから始まる。



 時間はといえば、王都からの避難民が城郭都市に入場してからのこと。
 また、イニティアの軍が村を発って一日後のことである。

 フジワラ領のとある丘陵の谷間にて食事をしているイニティア王国軍の兵たち。 
 さらに丘陵の上には、二つの人影――軍の指揮官であるレアニスと小松菜の姿があった。

「なんと……本当にあったのか……」
「ドライアドの王都よりもはるかに大きい。いつのまに、あんなものを……!」

 不意打ちにでもあったかのように、意外な顔をするレアニスと小松菜。
 二人の驚きの原因ははるか視線の先にある。
 足の下にある丘の高さと、対象物自体の大きさによってようやく視認が可能になったもの――巨大な城郭都市がそこには存在していた。

「王都で聞いた話がまさか、真実だったとは。この目で見ても信じられないよ、小松菜」

「ええ。僕は今でも自分の目を疑っています。地図にも載っておらず、つい最近まで誰もその存在を知らなかった城郭都市。てっきり、北へと逃げるための口実だと思っていましたから」

「そうだな、私もそうだ」

 してやられた、とでもいうような風に苦笑いをするレアニス。
 小松菜は依然瞬きもせずに、ジッと城郭都市を見つめている。
 レアニスは言う。

「あんなものを急遽つくるなどということは不可能だ。ではフジワラが以前よりつくっていたか、ということだが、これもどうだろうな。以前調べさせた時には、そのような報告はなかった。妥当なところは、王宮がはるか以前より極秘裏につくっていた、といったところかな。目的は、まさに今日のような国難のため。……どうだろうか?」

「さあ? どうやってつくったかよりも、どのようにしてあれを落とすかを考えるのが僕の役目ですから」

「面白いことを言うね。どのように落とすなんて考えるまでもないだろうに」

「まあ、そうなんですが」

 レアニスと小松菜は自らが持つ大砲の存在を思い浮かべると、向かい合ってくすりと笑う。
 二人の驚きは、既に余裕へと変わっていた。
 どんな城郭を築こうとも、大砲の前に意味はない。
 元の世界の中世ヨーロッパにおいても、大砲の台頭によって城郭都市は消えていったのだ。
 だが、レアニスはすぐに表情を真剣なものにすると、重々しく言葉を発した。

「フジワラか……どう思う?」

 これには、小松菜も弧を描いていた口を真一文字に結んだ。
 女王が逃げたというフジワラ領。
 その地のことを、レアニスと小松菜は以前より知っていた。
 ジャガイモの産地であり、胡椒を扱っている。おまけに領の名前がフジワラなどという日本のものであるのだから、知らない方がおかしかった。

 領主ノブヒデ・フジワラは間違いなく同郷の者。能力はわからない。
 こちら側に引き込もうとも考えたが、それはとまどわれた。

 相手はドライアド王国にて、既に領主という確固たる地位を築いている。
 大陸制覇の野望を気取られないためにも、調略には確実性が求められたのだ。

 どのみち取るに足らないであろうと思われた相手。
 しかし、どういう経緯があったかはわからないが、今この状況を見るに王宮からの信頼は篤いように思われる。

 小松菜はやや考えたようにしてから言った。

「これまでと一緒ですよ。それに領主が同郷の者だというのなら、今こそ僕たちのことを話して仲間になってもらえばいいんです。もう隠す必要はないんですから」

「そうか、そうだな。それにしても成り上がりの領主に対して、王宮の対応はありえないことだ。
 もしや王宮の上位の者にも同郷の者がいたのかもしれないな。フジワラと王宮の者が手を組んだというのならば、現在の状況も多少は頷ける」

「もし女王が同郷の者だったら?」

「話してみるよ。協力を得られるようなら助けよう。同郷の者なら、この世界の者とは価値観が違うんだ。殺す必要もないさ」

「それがいいでしょうね。さあ、僕たちもご飯を食べましょう。僕たちのせいで進軍が遅れてしまっては大変です」

「ふふ、僕“たち”のせいで、じゃないだろう? 私は普通の量を食べるだけだが、小松菜は大食らいだ。だから言い直してほしいな」

 小松菜をからかうように笑みを浮かべたレアニス。
 対して小松菜も笑みを湛えて言う。

「じゃあ、勝負しますか? 僕が全部食べ終わるのが早いか、レアニスが食べ終わるのが早いか」

「いいだろう、乗った」

 それぞれ銀の髪と黒の髪をなびかせて、共に丘を下りていく。
 それを兵士たちが眺めて顔を綻ばせた。

 この二人の仲の良さは、まるで兄弟のよう。
 日頃、兵士から慕われている二人である。
 二人の関係は、戦時にあって皆の心を癒す一服の清涼剤であった。

 食事ののち、軍は丘陵を抜けて、平野を北へと進む。
 いよいよドライアド攻略戦における最終決戦が始まるのだ。

 ◆

 信秀がつくった城郭都市。
 城壁の上には、今日までの訓練の末に一応の砲兵となった北の森の獣人たちが見張りをしていた。

「おい、あれ砂煙が立ってないか」

 それを口にしたのは南の城壁の上にいた牛族の若者。
 すると、隣の鼠族の若者が「ん? どれどれ」と目を凝らした。
 はるか地平線には、確かに砂煙は立っている。
 だが――。

「いや、どうだろうな。風が舞っただけじゃないか? 第一敵が来たのならもう少し煙は高いはずだろう」

「そうか? まあ、俺より頭のいいお前が言うんなら、そうなんだろうな」

 牛族の若者は彼我の頭の良さに鑑みて、鼠族の若者の弁に納得した。
 ちなみに十メートルの城壁から望めるのは、大気の屈折などの誤差があれど、おおよそ十二キロ先。
 当然これは、視力というものは考慮に入れていないが、野生生活を送っていた彼らの視力は尋常ではないため、ある程度の大きさのものならば視認が可能と思ってよい。

 しかし、である。
 この二人、その視力を生かして砂煙を見つけたのはいいのだが、星が丸いということを知らなかった。
 そのため、砂煙が小さかったのは、実は地表に隠れているのだということに気付けなかったのだ。
 そして彼らは、すぐに真実を目撃することになる。

「お、おい、砂煙が段々大きくなってないか……?」

「ま、まさか……」

 そのまさか。
 瞬間、ジャーン! ジャーン! と銅鑼の音が鳴り響いたのは、彼らがいる場所よりも一つ二つ高い位置にある櫓の中からであった。

 牛族と鼠族の若者はびくりと身震いして、何事かと音の発生源を見る。
 あそこには古参の狼族がいるはずだ。人間の軍と何度か戦い、これまで勝ってきたという。
 同じ獣人として、悔しくもあり、認めたくなかったが、その信頼は篤い。
 ゆえに判断も確かだろうという思いが、二人の胸にはあった。

 その判断はいかに。
 牛族と鼠族の若者がゴクリと喉を鳴らす――暇もなかった。
 続いて櫓から聞こえたのは声を嗄らすような叫び。

「敵だーー! 敵が来たぞーー!」

 ――敵。
 人間だ。人間の軍隊だ。
 それを理解すると、牛族と鼠族の若者二人は顔をサッと青ざめさせた。
 普段、口では「人間など大したことはない」と強がりを言っているが、実際はその逆、この上なく恐ろしい。

 圧倒的な数、優れた武器、そしてその残虐性。
 各部族にはそれぞれ神話のような言い伝えがあり、それに出てくる悪魔は本来強靭な肉体をもってしても抗いきれない病を差しているとされていたが、今では、人間こそがその悪魔ではなかろうかと思うほどであった。

「て、敵だぁー!!」「て、敵が来たぞぉー!!」

 城壁の上では狂気するように、北の森の獣人たちが敵の来訪を叫んでいく。
 それは伝潘し、各所では銅鑼や太鼓が鳴り始めた。
 牛族と鼠族の若者もまた、身体を這いずる恐怖を消し飛ばすように、喉の奥から声を張り上げ叫んだ。
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