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町をつくる能力!?〜異世界につくろう日本都市〜 作者:ルンパルンパ
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50/108

50.プロローグの終わり 2

こじゅ 様、若山野種無柿 様より、素敵な地図の方をいただきましたm(__)m
本当にありがとうございますm(__)m
20話と46話にそれぞれ貼らせていただきましたm(__)m
 ほぼ同時期に新たに町へとやって来た魚族・鳥族・蛇族の三種族。
 これにより、町は遂に4000人を超え、人口1万人の影くらいは見えるようになった。
 俺としては、ホクホクとした心持ちである。

 ところで、長旅の疲れもあるだろうと、俺は魚族らに環境整備の名目でずっと休日を与えていた。

 だが、それも今日までのこと。

 働かざる者、食うべからず。
 そろそろ動き出してもらわねばと思い、今から俺は魚族らの下へ向かうところであった。

 既に魚族らとは何度も顔を合わせているが、まだ関係も浅く、油断はできない。
 自宅にて、俺は戦闘用の装備を身に着け、装甲車に乗り込む。
 そして行く途中にジハル族長以下狼族の者を何人か乗せて、西門を出た。

 魚族が暮らすエリアをゆっくりと装甲車を走らせる。
 すると、道行く者は皆、膝をつけて頭を下げた。

 とにかく、彼らは腰が低い。
 いや、元いた町の住人も腰は低いのだが、新たに来た三種族はそれに輪をかけて低姿勢だ。

 初めてそれを見たジハル族長も、「あの、我々もこれからは膝をつけて……」などと言い始める始末である。
 もちろん、そこまでする必要はないと断っておいた。

「それにしても、やはり人数が多いな」

 俺は、車を運転しながらポツリと呟いた。
 魚族だけで1000人を超え、鳥族・蛇族を合わせれば2000人以上。
 既に建ててあった煉瓦造りの住宅だけでは足りず、俺の視線の奥には天幕がずらりと並んでいる。
 ゆくゆくは全てを煉瓦造りの家にするつもりだが、相当な時間がかかることだろう。

 やがて、目的地に到着した。
 煉瓦造りの家々が天幕へと変わる境目の手前にあるのが、魚族の族長の住む家だ。
 装甲車を道の真ん中に停車させ、狼族らと共に下車する。
 すると魚族の族長が家の前で、地に頭をつけていた。

「これはフジワラ様、この度は我々を受け入れていただきまして、真にありがとうございます」

 この口上も果たして何度目であるか。
 他の者達同様、この族長も腰が低い。
 いや、同様というのは少し違う。
 この族長あってこその、部族の低姿勢だろう。

「どうぞ、立ってください」

「ははっ」

 俺の言葉に、ぬぅっと立ち上がった魚族の族長。
 二メートルはあろうかという見上げるほどの体躯は、なかなかに威圧感がある。

 目は半分ほど飛び出ているために丸く、鼻はなく口は大きい。
 頬にはエラと思われる切れ目があり、ゆっくりではあるが動いている。
 おそらくは、エラが鼻の役割をしているのではないかと思われる。

 全身は青い皮膚に覆われ、手には水掻きというものがない。
 魚族という名を冠しながらも、明らかに陸上を生きる種族であった。

「ここでの生活は慣れましたか?」

「それはもう、素晴らしい生活です」

 ペコペコとしながら、魚族の族長が言う。

 前に聞いた話であるが、彼らもシューグリング公国では、人間に虐げられて生きていたらしい。
 だがサンドラ王国にいた獣人と違い、彼らには海があった。

 海獣が住まう海には人間はあまり近づかない。
 そこで魚をとり、命を危険にさらしながら暮らしていたのだという。

 魚族が魚を食べる。
 共食いにならないのか、とも思ったが、よくよく考えれば海にいる魚も自分より小さい魚を食べている。
 人間だって哺乳類に大別すれば、豚や牛などを食べることは共食いだ。

 とにかくも、魚をとって暮らしていた彼らであったが、そこにシューグリング公国の人間がやってきて、わざわざこの町のことを教えたらしい。

 なんの意図があって、シューリング公国の者がそんな真似をしたのか。
 俺に恩を売るつもりであったのか、それとも単純に魚族らに出ていって貰いたかったからなのか。

 考えても、ついぞ結論は出なかった。

「そうかしこまらなくてもいいですよ」

「はい、すみません」

 癖になっているのか、言った傍から、またも頭を下げる魚族の族長。

「今日はあなた方に耕してもらう畑を割り振りに来ました。
 ここで暮らす以上は、しっかりと働いてもらわなければなりません」

 既に畑の測量は終わらせている。
 後は、魚人の人数に合わせて畑を与え、さらに農具を渡せば、今すぐにでも彼らは耕作に取りかかれるだろう。

「我が部族一同、真面目に働くことを誓います」

 感情が読み取れないギョロリとした瞳を向けて、魚族の長は言った。
 その日はまず魚族の者達に畑を与え、翌日、鳥族・蛇族の者らにも同じ様にした。



 冬が過ぎ、春がやってきた。
 異世界にやってきて五年が過ぎ、とうとう六年目を迎えることになったのだ。

 新たな住人も増えたことであるし、俺は新年度の到来を祝して、久しぶりに宴会を開くことにした。

 北門前はサンドラ王国との戦いで血生臭くなってしまっている。
 そのため4000人からなる大宴会は、南の地にて行った。

「皆さん、これからよろしくお願いします!」

 新たにやって来た魚族らの挨拶から宴会は始まった。
 元いた獣人達からは割れんばかりの拍手が巻き起こる。

 新しく入ってきた魚族らに関して、特に問題となる報告はされていない。
 これまでのところは、皆よくやっているといっていいだろう。
 俺ばかりでなく、既存の住人に対しても魚族らは低姿勢であり、その印象はいいようだ。

 宴会が進み、族長達が俺の下に酒を勧めにやって来る。
 酒を交わしながら、たわいもない会話をした。
 今はアライグマ族の族長と飲んでいるところだ。

「双子の駱駝は元気にしていますか」

 俺はアライグマ族の族長に尋ねた。

 春は駱駝の出産の季節。
 ついこの間、アライグマ族が世話している駱駝が子を産んだ。
 難産であり、俺もアライグマ族と共に見守っていたのだが、漸く産まれた子は双子であった。

 アライグマ族は己の子が産まれたように嬉し涙を流していた。
 その時、俺もつられて涙ぐんだものだ。

「ええ、とても元気です。また見にいらっしゃってください。あの子達も喜びます」

 アライグマ族の族長は、鼻元から伸びる特徴的な針のような髭を揺らして、はにかみながら言った。

 こうして宴会は大盛況のうちに幕を閉じる。
 獣人達との関係も良好。
 町は順調に成長を続けていた。



 5月のある日のこと。
 俺は、真っ昼間から酒をぶら下げて、ジハル族長の家を訪ねた。
 ちゃんと電話で事前に連絡をとっているため、迷惑にはなっていないだろう……多分。
 それに今回は、ちゃんとした目的がある。

「ようこそ、いらっしゃいました」

 いつものように、ペコリと頭を下げるジハル族長。
 そのたたずまいに、やはり、と俺は思った。

「これを焼いてもらえますか」

「おお、すみません」

 最高級の肉。
 ジハルはそれを受けとると家の者に渡した。
 ジハルに妻はいない。
 既に鬼籍に入っている。
 家にいるのは、親を亡くした身寄りのない者ばかりだ。

 奥の部屋に案内され、俺とジハル族長は向かい合うように座った。
 器を二つ置き、持ってきた上物の酒を注ぐ。
 互いにまずは一杯、喉を鳴らした。

「最近、何かありましたか?」

 空になった器を置き、俺はジハル族長に尋ねた。

「はて、特に思い当たることはありませんが……、何か気になることでもありましたか?」

 ジハル族長もまた空になった器を置いて答えた。
 二人で飲む際に、酌をするということはない。
 気を使わせないように、当初の頃よりそういった取り決めが俺とジハル族長の間にはあった。

「昔と比べて、覇気がないように感じます」

 昨年の夏にサンドラ王国を撃退した頃からだろうか。
 ジハル族長からエネルギーともいうべきものが、失われているように感じた。
 今もこうして正面に座って見ればよくわかる。
 ジハル族長は、まるで老人のようであった。

 するとジハルは「ははあ、なるほど」と頷いた。

「私も歳ですからね。フジワラ様にこのような安住の地に住まわせていただき、漸く肩の荷が下りました。
 後任は息子に譲ろうと思っています。私はのんびりと畑仕事をしながら余生を暮らそうかと」

 狼族の未来に安心した、ということなのだろう。
 サンドラ王国軍を容易く退けたことが、そのきっかけだったに違いない。
 もう一族のために気を張る必要はなく、年相応に生きるつもりなのだ。

 俺は、新たに酒を注いだ器を傾ける。

 なんだか寂しくなった。
 個人的な付き合いとしては、最も深くて長いのがジハル族長である。
 共に酒を飲んだ回数も、百を超えるだろう。

 そんな彼の口から出た言葉。
 それは、いつ死んでも心残りはない、と言っているようだった。

 誰しもが老いて死ぬ。
 それは避けられないことだ。
 俺もまたいつかは死ぬだろう。

 ふと、俺が死んだら、この町はどうなるのかと考えた。
 俺が死ねば、町は人間の手に落ちる。
 独立し続けるためには大きな力がいるが、俺なしではそんな力は維持できない。
 そうなれば、この町は人間の植民地となる。

 その生活はどんなものであるか。
 ――と、そこまで考えて、俺は思考を打ち切った。

 今考えることではない。
 後でゆっくり考察しようと思いつつ、俺はジハル族長を将棋に誘った。

 パチリパチリとした駒の音は、俺とジハル族長の会話を前に響くことなく消えていく。

「し、失礼します」

 やがて緊張したような声がかかり、襖が開いた。
 俺が今日持ってきた肉を調理して運んできた少女。
 名前はメグ。
 この家の隣に住む、ジハル族長の息子夫婦の子である。

 昔は爛漫としていたが、年齢を重ねた今では、そんな子供特有の無邪気さも影を潜めていた。
 まあ、年を取ったといっても、まだ10歳に差し掛かったところ。
 まだまだ子供だ。

 メグは再び「失礼します」と言って、俺とジハル族長の隣に皿を置いた。

 それにしても、と俺は思う。
 最近、ジハル族長の家にいくと、大体彼女が現れるのだ。
 その理由についても、わかっている。
 ジハル族長は口には出さないが、次期族長の娘であり、自身の孫でもあるメグと俺をくっつけようという魂胆なのだろう。
 しかし、俺にはロリコン趣味などないので、無駄な努力である。

 それにしても結婚か。
 今年、誕生日を迎えれば、俺も26歳になる。
 晩婚化が進んでいた日本でも、そろそろ結婚を考えていい歳だ。

 他の部族の者からも、アプローチのようなものを受けている。
 それとなく断っているが、その攻勢は激しい。
 特に、人に近い顔をしている婦女子には、おや、と思わせられることは幾度もあった。

 だが、俺にも立場というものがある。
 安易にいずれかの部族の女性と結ぶことは、この町に不和を呼び込むことになりかねない。
 やはり、結婚など当分は無理だろう。

 その後も、俺はジハル族長と酔った頭で将棋を指しながら、のんびりと談笑を続けた。
 できることならば、この好ましい時間が長く続いてほしい、と思いながら。



 翌日以降、俺は、町の仕組みの一部を大きく変えようと頭を悩ませる。

 今までは各種族の裁量で自由にできる分を除いて、採れた作物を俺が全部預かり、それを【売却】して、月々に食物を渡すようにしていた。
 しかしこれからは、獣人達が自分達で作ったものだけを食べて暮らしていけるような、そんな仕組みにしようという試みである。

 俺に何かあっても、獣人達が安心して暮らしていけるように、少しずつ町のあり方を変えていかなければならない。
 そんな考えが俺にはあった。
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