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町をつくる能力!?〜異世界につくろう日本都市〜 作者:ルンパルンパ
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43/108

43.戦後 2

 その日、俺はやかましい冷房の動作音で目覚めた。

「くぁ」

 ベッドからむくりと起き上がり、小さな欠伸を一つする。
 時計を見てみれば、午後2時を過ぎたところ。
 つまりは惰眠を貪っていたわけであるが、昨日までの忙しい日々を考えれば、それも仕方のないことだろう。
 なにせサンドラ王国軍がこの地にやって来て以降、一週間近く安眠できない日が続いていたのだから。

 だが、それも昨日で終わり。
 捕虜とした騎士達は南の牢獄へと送り、さらに騎士の一名は現状を伝えるためにサンドラ王国へ向かわせた。
 あとはサンドラ王国からの反応を待つだけだ。

 果たしてサンドラ王国はどうでるのか。
 また軍を送ってくるのか、それとも停戦の使者を寄越し捕虜返還を求めるのか。
 まだまだ油断は禁物ではある。

 とはいえ、ずっと気を張り詰めていても仕方がない。
 何事もやる時はやる、休む時は休むといったメリハリが大切だ。
 とりあえず町は平常体制へと移行しており、俺自身も当分はのんびりとした生活に戻ろうと思う。

 それにしても、さきほどから冷房の音が気になる。
 安いのを買ったからかな。
 そろそろガタがきたのかもしれない。
 いや、この五年で一度も手入れをしてないのが原因かも。

 既に冷蔵庫も一度壊れており、今使っている冷蔵庫は二台目だ。
 一台目は三年目にして温度調節が効かなくなり、【売却】済みである。

【冷蔵庫】【売却値】5円

 能力を使った購入品であるため、【売却値】は【購入価格】の100分の1、さらには故障までしていたので、わずか5円での【売却】だった。

 電化製品などの安物はいいが、これがトラックや装甲車になってくると怖いものがある。
 整備などをしっかりして、なんとか【時代設定】を『現代』にするまでは、故障なく運用していきたいものだ。



 食事等、起床後の諸々を済ますと、俺は電話を手に取った。

『はい、ジハルです』

 受話器から聞こえてきたジハル族長の声は、とても落ち着いたもの。
 不意に、ジハル族長が初めて電話を使った頃、ずっと緊張に上擦った声を出していたのを思い出し、おかしくなった。
 もう何年前になるのか。
 月日が経つのは早いものだ。

「フジワラです。少し話を聞きたくて連絡しました。
 どうですか、南の牢獄は?」

『朝の報告では、特に異常はない様子です』

 騎士達を閉じ込めている南の牢獄には、現在監視として狼族の者を派遣している。
 石垣には櫓が付いており、そこで決められた者が監視をしながら過ごすことになるのだ。
 種族ごと一週間での交代を予定しており、当番の者には後日酒を渡すことになっている。

「運搬に使った馬はどうでしたか?」

『とてもおとなしく、従順であったと聞いています』

 大砲の音に驚き、騎乗者を振るい落として逃げた馬は、食料を求めて町の畑にやって来ていた。
 それを獣人達が、俺が夜襲に行っている間に捕まえていたのだ。
 中でも、力が強く気質も穏やかな大型馬は荷車をひくのにもってこいであり、即戦力として牢獄への食料運搬に役立っている。
 逆に、細身の走ることに特化した馬は今のところ需要がない。
 この分だと、行く末は食肉になるしか道はないだろう。

「サンドラ王国の姫の監視は?」

 サンドラ王の娘である赤竜騎士団団長ミレーユは、旅館に住まわせてある。
 大事な金づるだ。
 なにかあっては困るため、その監視には最も信用できる狼族の者にのみ頼むことにしている。

『腕自慢の者ばかりを当てております。
 あとは言われた通り、同性の者も配置しております。今日の朝からはミラが』

「ミラさんを? ですが、彼女は昨日まで夜襲に参加していたんですよ? 休ませるべきじゃありませんか?」

『どうしてもやらせてくれと』

 不穏だ。
 どうしても、というところがあまりに不穏すぎる。
 俺が黙って考え込んでいると、それを察するようにジハル族長が言った。

『フジワラ様が危惧していることはよくわかります。
 ですが、心配要りません。ミラももう18です。昔のように軽はずみな行動は決してしないと約束します。
 それに、ミラの武芸の腕前は男にも劣りません。適任かと』

 そこまで言うのなら、と俺は頷くことにした。
 最後に、暑いので部族の者の体調管理に良く気を付けるようにと伝えて電話を切る。

 その後は、家の外へ出た。

「カトリーヌ、おはよう」

 寝そべるカトリーヌに挨拶すると、彼女は首をこちらにもたげて目をパチクリとさせる。
 彼女なりの挨拶だ。
 そして、またペタリと首を地面につけて目を閉じた。
 ふふっ、かわいい奴め。

 カトリーヌに癒された後、町とは反対にある南の門を開ける。
 そこは作物集積地なのだが、今は武器、防具が積まれていた。
 今回の戦いでの戦利品である。
 それをこれから【売却】しようというのだ。

「さて、捕虜の飯代ぐらいにはなってくれよ」

 俺は『町データ』を呼び出し、積まれた武器防具を対象に【売却】コマンドを実行する。
 すると目の前の画面には武器や防具の名前が羅列され、その横には買取り価格が表示された。

【スチールロングソード】【売却値30万円】

【スチールロングソード】【売却値28万円】

【アイアンショートソード】【売却値3万円】

【スチールプレートアーマー】【破損】【売却値10万円】

【スチールオープンヘルム】【売却値10万円】

【アイアンケトルハット】【売却値5万円】

【レザーアーマー】【売却値2万円】

【スチールプレートアーマー】【売却値70万円】





 以前、赤竜騎士団から剥ぎ取った物を売却した時も思ったことだが、この世界の武具は意外に安い。
 たとえばこれ。

【スチールロングソード】【売却値30万円】

 スチールとは鋼のことだ。
 赤竜騎士団が持っていたもので、馬上で振るうために、その剣身は長いのだろう。

 そして、肝心の値段なのだが、この剣の【売却値】が30万。
 もし日本の武器である【刀】を能力で【購入】しようとすると、一番安いものでも100万円を優に超える。
 そう考えると、この【ロングソード】はあまりに安いといえるだろう。
 仮にも騎士団の者が使っている剣なので、質が悪いから、というわけではないはずだ。

 おそらくは鉄の産出量の違いや、魔法による加工など、そのあたりがこの値段になっているのだろうと予想する。
 なんにせよ、これから【売却】を行う俺としては、あまり嬉しくない話だ。

 画面をスクロールさせながら、買取り一覧を眺めていく。
 すると俺は「おや?」と目を留めた。

【隕石のハルバード】【売却値】2300万円

 明らか値段が違うのを発見した。
 隕石って、鉄隕石のことでいいのだろうか。
 元の世界でも隕石でつくった武器は聞いたことがある。

 しかし隕石だろうがなんだろうが、鉄には変わりない。
 強度は他の鉄を加工した武器と大差ないはずだ。
 ということは、稀少性故のこの高い値段だろうか。
 いや、魔法なんてのがある世界だし、なにかもっと特別なものかもしれない。
 とりあえず【売却対象】からは外してとっておこう。

 さらに画面の下へと目を滑らしていく。

「ん?」

 俺は再び目を留めた。

【かなりいい剣】【大破】【★】【売却値700万円】

 やけに見覚えのあるものが、画面に映っている。
 他の武器や防具には一切ついていない星マーク。
 この【かなりいい剣】が神様のカードであることは間違いないだろう。
 では、何故それがこんなところにあるのか。
 佐野は自身のカードを【かなりいい盾】だと言っていた。
 つまり敵の中にもう一人同郷の者がいたのか?

 いや、佐野は共に来た者がいるとも言っていた。
 その者のカードについては聞いておらず、それを佐野が持っていたことも考えられる。

「……病にかかったのだと言っていたな」

 佐野の言葉を思い出す。

 共に来た者は床に臥せっていると佐野は語った。
 それがもし真実であるならば、佐野の生死いかんによっては、そのもう一人の同郷の者はこれから先、生きていけはしないだろう。

「あとで、佐野について騎士の誰かに聞いてみるか」

 おそらく佐野は死んでいる。
 捕らえた騎士達の中にもいなかった。
 治療を受けている負傷者の中にいるかもしれないが、もしいたのなら俺の名前くらい出すはずだ。
 確かに単独でサンドラ王国に帰っている可能性もある。
 しかし、その可能性はあまりに小さい。
 特に食料が問題だ。
 単独で逃げるほど余裕のない者が、十分な食料を持っているとは考えられなかった。

 とにかくも、サンドラ王国にいる佐野の連れ合いには、同郷のよしみで支援するのはやぶさかでもない。
 そんなことを考えながら、俺は【かなりいい剣】を売却リストから外し、視線を画面の下へと動かした。

 そして【売却】が終了する。

 結局のところ、高いものでは【売却値】が1000万円を超えるものもあったが、売り物にならないような損傷の酷い武具も多かった。
 そのため全体としては、思ったほどの金にはならなかったといえよう。
 まあ、捕虜の食事代には十分な額であったが。

 ちなみに、後日佐野について詳しい者に話を聞いたところ、佐野に養っている者はおらず、また盾を使っている様子もなかったとのこと。
 どうやら佐野は俺に嘘をついていたようだ。
 ということは、【かなりいい剣】は佐野自身のカードだったのだろう。
 俺を騙し情報を引き出そうとした、もしくはその【かなりいい剣】で俺を亡き者にしようとしていたのかもしれない。

 これにより、佐野に対する僅かばかりの罪悪感や同情の念もすっかり消えてなくなり、俺は爽快な気持ちになった。
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