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町をつくる能力!?〜異世界につくろう日本都市〜 作者:ルンパルンパ
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20.競技会(※地図あり)

「ふぅ」

 長旅から帰ってきた俺はまず風呂に入り、その後ベッドに身を預けるように横合いから倒れこんだ。

「やわらかい……」

 野宿などさほど苦ではなかったが、やはり家のベッドが一番だ。

「よっと」

 宙ぶらりんの下半身をベッドに乗せて、寝返りをうち、仰向けになる。
 天井のライトが眩しい。
 俺は目を細めながら、無事に事が済んでよかったと安息した。

 長旅に出るに当たり、唯一の懸念事項は何日も町を離れること。
 しかし、それも帰ってきてみれば、なんの問題もなく町は平常通りの姿を見せていた。

 目を閉じ、眠ろうとする。
 しかし眠れない。

 仕方がないので起き上がり、机にあった布切れを手に取った。
 そこにはこの大陸の地図が描いてある。

挿絵(By みてみん)

 こうしてみると本当にヨーロッパみたいだと思う。

 竜の顎と呼ばれる大陸。
 東の山脈を越えた先は人類未踏の極寒の地。
 噂では魔王がいるのだという。

 南は砂漠。
 こちらも未だに人間が足を踏み入れてはいない土地だ。

 また、海には魔物がおり、航行する術はない。
 だというのに元の世界でいうアフリカ大陸の存在を知っているのは、砂が時折南風に乗って降ってくるからだとか。

 そして、この町の北にはサンドラ王国がある。
 フロスト曰く、この地にサンドラ王国から軍がやって来ることはないとのこと。
 人間社会の平和がこのまま続けばその限りではないが、それはまずありえないのだそうだ。

『国家間の戦いこそ教会は禁じましたが、国内の争いには言及していません。
 跡目争い、領土問題など内乱の種などいくらでもあります。
 これに他国の謀略が加われば、いずれどこぞの国で内側から争いが起こるでしょう。
 そしてそれは、いずれ国家間の戦争に発展します。
 教会の布告? ふふ、多額の金銭と大義があればそんなものはどうとでもなりますよ。
 所詮、平和など戦争の準備期間に過ぎません』

 このフロストの話が事実ならば、この地はこのまま安寧を享受することができる。
 だが、全てを信用するほど俺は若くない。
 最悪の事態も想定するべきだろう。

 ――そう。

 フロスト達がこの町のことを口外し、サンドラ王国がこの地に軍隊を送ってくることを。




 ――数日後。

 俺は町の小さな異変に気付いた。
 町の者達は、一見なんの変わりもないように俺と接しているが、以前とは違う空気を僅かだが感じるのだ。

 しかし、これの原因はわかっている。
 人間であるフロスト達を俺は助けた。
 俺が人間の肩を持ったがために、彼らの中に不満が生まれたのである。

 ただ初期からいる狼族に関しては、そんなことはない。
 共に過ごした時間の長さは、絆の深さ。
 ならば、他の種族の者達との関係も時間が解決してくれるだろう。

 ――なんて考えるのは愚者だけだ。

 俺の種族は人間。
 獣人達の住みかを奪った種族と同じなのだ。
 それゆえ、獣人らの不満がいつ猜疑心に変わってもおかしくはないだろう。
 だからこそ、彼らの不満を放っておくつもりはない。

「というわけで、競技会をします」

「競技会……ですか?」

 ジハル族長の家で、パチンパチンとジハル族長とリバーシを打ちながら、俺はとある計画を話した。
 それは競技会という名の祭典。
 勝った者には栄誉と酒。
 さらに皆には酒を振る舞う。

「ええ、個々の技術や能力を競うもので、一番になった者には景品を授与します」

 一種のお祭りだ。
 しかし、ただ宴会をするだけではいつもと一緒、刺激が足りない。
 そこで、互いを競わせて不満を消し飛ばすほどの興奮を与えようというのだ。

「なるほど。して、その競技は?」

「駆け足、弓、槍投げ、ラクダレース、それにリバーシを考えています」

 皆を興奮させるという点において、ネックとなるのは体力に劣るゴブリン族とコボルト族。
 身体能力を競う種目ではゴブリン族とコボルト族に勝ち目はない。
 当然、ラクダレースは俺とカトリーヌが優勝をいただく。
 というわけで用意した種目がリバーシだ。

 現在リバーシはこの町で一番の娯楽となっており、これならば頭のいいゴブリン族とコボルト族が有利である。
 他のボードゲームと違い、時間もそうかからない。
 スポーツ競技をやっている間に進めれば、いつのまにやら終わってくれていることだろう。

「わかりました、調整しましょう。ですが、皆の仕事を受け持ち、どうしても参加できない者が何人か出ますが……」

「ええ、その方達にはしっかりと労いの酒を送らせて貰います」

 この世は金、なんて言葉があるが、この町においては大体のことは酒で片がつくのである。

 そしてこれより2日後。

《ではこれより、第一回種目別競技会を始めます!》

 俺は台の上から【拡声器】を使って、開会の挨拶を行った。
 するとワッという大歓声が上がる。
 皆、駆けつけに一杯やっており、既に盛り上がりも相当なものだ。

 司会と進行は俺、アシスタントは狼族の者数人にて競技会は執り行われる。
 最初の競技は短距離走だ。

 短距離走の予選は3レース。
 各種族から三人ずつが選抜され、1レースに各種族の一人ずつが出場する。
 ちなみにゴブリン族の選手はスポーツを全て棄権しており、端っこの机と椅子でオセロのステージを囲んでいた。

「位置について、ヨーイ……」

 かけ声の後、俺は空に構えた拳銃の引き金を引く。
 すると、パンッという耳をつんざくような激しい音が鳴った。
 もちろん弾は実際に撃っておらず、空砲である。
 しかし空砲とはいっても、至近距離ならスチール缶に容易く穴を空けるくらいの威力はあるので、使用の際は注意が必要だ。

 そして銃声と共に、横一列に並んでいた選手達が駆ける。
 さすがに速い。
 私見ではあるが、オリンピック選手すら凌駕しているように思える。

 観客席からの轟くような声援の中、次々と選手達がゴールしていった。
 1着は豹族、2着は狼族、3着は鹿族。
 この三人が予選突破だ。

「ウオオオオオオオ!」

 1着となった豹族の男は誇らしげに拳を頭上に振り上げ雄叫びをあげる。
 観客席に座っている豹族の者達も、1着をとった同族に対し、割れんばかりの大きな歓声を送った。

 その後、第2予選も無事に行われ、次は第3予選。
 ふと、見覚えのある者が選手の中に並んでいた。
 かつて、一人で町を出ていこうとした狼族のミラだ。

 彼女と視線が一瞬交錯する。
 するとプイッと顔をそらされた。
 まだ嫌われているのかもしれない。

「位置について、ヨーイ……」

 思い思いのフォームで、スタートの合図を待つ選手達。
 パンッという破裂音が辺りに響く。
 それと同時に、選手達は一心不乱にゴールに向かって駆けていった。

 俺はなんとはなしに、心の中でミラを応援する。
 しかし――。

「あぁ……」

 俺の口から自然と残念がる声が漏れた。
 ミラは4位、予選での敗退が決定してしまったのだ。

 視線の先では、悔しそうに涙を溜めているミラ。
 縁が他の者よりもあっただけに勝って欲しいという気持ちがあったが、現実はなかなかに無情である。
 まあ、次の機会があればまた頑張ってくれと心の中でエールを送り、気を取り直して決勝戦へと移った。

《さあ、決勝戦です! ここまで残った九名!
 その内豹族はなんと三名とも一位で予選突破! 圧倒的です!
 次に鹿族三名! 果たして決勝で豹族を破れるのか!
 さらに狼族二名! 猫族一名!
 この九名で決勝戦は争われます!
 では、選手は並んで下さい!》

 ぞろぞろと位置につく選手達。
 俺は拡声器を隣に控える狼族の者に渡した。
 そして、銃を空に構える。

「位置について、ヨーイ……」

 この時ばかりは観衆も黙り込み辺りは静寂につつまれる。
 そして、パンッという強烈な音がその静寂を破った。
 途端、堰を切ったように大歓声が溢れだす。

 九つのコースの上をそれぞれ駆け抜ける、決勝に残った選手達。
 僅かの距離を、より僅かな時間で到達するために、誰もが必死に手と足を動かした。

 ――結果、1着は豹族、2着も豹族。
 3着は豹族か鹿族か、俺の位置からではほぼ同着に見えた。
 ゴールに控えていた狼族の者が三本線の入ったタスキを渡したのは……豹族だ。
 4着は惜しくも敗れた鹿族の男。
 彼には拍手を送りたい。

 それにしても決勝は4着までを入賞として正解だったようだ。
 3着までにして、表彰されるのが全員同じ種族だとかなりシラケることだろう。

《短距離走は豹族の圧勝! 鹿族の選手も健闘しましたがその牙城は崩せませんでした!》

 ウオオオオ! という地鳴りのような勝鬨が豹族達から上がった。

《表彰は最後に行いますので、今走った選手の皆さんは、それまでご自分の席で観戦していてください。
 では次の種目に参ります!
 次の種目は……弓!
 選手の方は集まってください!》

 再び会場は選手への激励の声に包まれた。
 こうして順調に競技会は進んでいく。



 ――やがて時は過ぎ、全種目が終了した。

 弓は視力の優れた鳥族が、槍投げは力自慢の豚族が1位となった。
 そしてリバーシは、なんと狼族の少年がコボルト族とゴブリン族を破って優勝した。
 二年前に俺を打ち負かした、あの狼顔の少年である。
 体も見違えるように大きくなり今では、農作業に従事しているが、頭の良さはあの時と変わっていないようだ。

 また、ラクダレースについてはカトリーヌと俺のコンビが圧倒的だった。
 さすが俺の嫁。
 走り終わると、カトリーヌは近くの雑草をどや顔でムシャムシャと頬張っていた。
 かわいい。

 競技会は凄まじい賑わいを見せたといっていいだろう。
 成績が振るわなかった者も酒を飲んでうさを晴らしていた。

 そして表彰式。
 俺の前には各競技の1位〜4位までの選手が立ち並んでいる。

 1位の者には【ペンダント】、【ワイン】、【日本酒】。
 2位と3位の者には【ワイン】と【日本酒】。
 4位の者には【西瓜】と【日本酒】が授与される。

【クロス・レザーチェーン】5万円(定価500円)
【赤ワイン・700ミリリットル】6万8000円(定価680円)
【日本酒・上酒・1升】4000円
【西瓜】700円

 安物のペンダント。
 向こうの世界じゃとるに足らない物でも、こちらの世界なら相当な価値をもつことだろう。

 ペンダントが選手の首にかかると同時に、その部族の者達がワッと沸き上がった。

「よくやった!」
「お前は俺達の誇りだ!」

 飛び交う賛辞。

「おめでとう。素晴らしい弓捌きでした」

 俺がそう言うと、鳥族の青年はブワッと涙を流した。

「ありがとうございます……っ!」

 感極まるというやつだろう。

「さっ、仲間に手を振ってあげなさい」

「はいっ!」

 こうして盛況の中、第一回種目別競技会は幕を閉じた。
 その後の一週間ほどは皆、競技会の話題で盛り上がり、人間がやって来ていたことなどすっかり忘れていた。
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