白い空気(5/21)PDFで表示縦書き表示RDF


白い空気
作:アクア☆



雪の音


 気が付いたら夜中の2時を回っていた。

 俺、明日…もぅ今日か!学校あんだよな…。

 女って、酒強いな。改めて思った。まだ飲もうとしてる綾乃。かなり眠そうな京子。そして、すでに寝てる未来…。

『明日、学校だから先に上がりますね。また、良かったら呼んで下さい。』

 綾乃は、ニコッと微笑み手を振った。

 俺は、フラフラになりながらも自力で帰る事にした。

『司君?良かったら未来送ってってくれない?』

 ろれつが回ってない…。綾乃はまだ飲み足りないのか帰るつもりはないようだ。目が据わり頬を赤らめタバコを吹かす。俺は、女を美化する癖があって、出来ればあまりこういう姿は見たくなかった。

 アパートの通り道ってのもあり、おぶって帰る事にした。

 皆に、軽く挨拶を交わし、店を後にした。

 風邪を引かないように、俺のコートを羽織らせておぶった。

 あれ?軽いな…。おぶって初めて知った。会う時はいつも厚着だったからわからなかったけど、かなり細いんだな…。

 雪の降る中、せっせと歩く。おぶって転んだじゃ済まされないな…。

 未来の温もりを感じながら思う。

 “一緒に帰ろ”って言った時、どんな気持ちだったのかな…。

 頭に雪が積もり、コートにも積もる。でも、俺は…俺達は…なんか、暖かい空間にいた。たまに体の位置を直すように“ヒョイ”と未来を浮かす。

 気持ち良さそうに寝てるな…。少し嬉しかった。未来の寝顔を見れた事、こんなに身近にいる事、彼氏になった気分だ。なんてね…。

 それにしても、今夜はよく降るな…。夜の雪は、月の光だけで明るく見せる。真っ暗でもちゃんとわかるんだ。暗いのに白い。考えてみると凄い事なのかも…。そんなくだらない事を考えていたら未来がもぞもぞ動きだした。

『あれ?どこだぁ…。寒い…。』

 少し眠たそうに目を擦る未来。寝ぼけてんのか?

 俺におぶられてるのに気が付いたのは言うまでもない。

『あれ?司君…。ごめんね!』

 未来は、急いで背中から下りた。恥ずかしいのか嫌だったのかはわからなかった。

 もう少し、あの時間が続けば良かったな…。俺の背中には、未来の温もりと香水の香りが少し残っていた。

『ごめんね…、寒かったでしょ?ハイ!コート。』

 未来は、笑顔で優しく肩に掛けてくれた。

『ありがと…。』

 袖に手を通し、また歩き始めた。この時間好きだな。

 なにを話すでもなく、ただ歩いていた。

 足元が覚束ない未来。

『酒飲み過ぎなんじゃん?』

 俺は、少し笑いながら問いかけた。

『司君があんな事、言うからじゃんさぁ…。』

 ほっぺたをぷくっと膨らませ怒ったフリをする未来。可愛い。

 あんな事?未来の顔を見ながら思った。酔ってるな…。自分で何言ってるかわかってるのか?未来は、一人でブツブツ呟いている。そんな未来を見て思わず吹いてしまった。なんか、可愛かった。

 いきなり笑い出した俺を見て、驚いた表情をする未来。そしてつられて笑い出した。

 シーンとした裏路地。雪の落ちる音しかしない道。俺達の笑い声だけが響いていた。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう