白い空気(14/21)PDFで表示縦書き表示RDF


白い空気
作:アクア☆



優しさのカタチ


 少し未来の事が心配だった。“風邪を甘くみるな”親父が良く言っていた。本当は、親父に兄貴がいたらしい。子供の時、肺炎で死んだって…。今は、医療が進んでいて、肺炎で死ぬなんて、そうはないだろうが、昔は良くあったみたいだ。

 学校も終わり、心配で居ても立ってもいられない俺は、すぐに未来の元へ向かった。

 ピンポーン♪

 チャイムを押す。少しドキドキした。昨日は、緊急だったから何も考えず入って行ったが、よく考えたら女の家なんだよな…。俺にあの時の勇気をくれ…。

『は〜ぃ!』

 あれ?何か声が…

 中から出て来たのは、同じお店で働く綾乃だった。

『あら…。鷹山君じゃん!どしたの?』

 少し驚いた顔をする綾乃。そして、俺を中に入れリビングへ通され、キッチンからお茶を出してきた。見た目よりシッカリしてる人だな。テキパキとお茶をよそり、“ふぅ〜”っと、ため息…。黒いベストを着て、ネクタイをしてた。仕事中なのは一目瞭然。

 昨日の事を綾乃に話した。

『そうなんだ。ふ〜ん。』

 その“ふ〜ん”の意味が、俺には理解出来なかった。

 未来は今、寝てるらしい。綾乃は、未来の先輩にあたる人で、教育担当でもあった。

 お店が暇で、未来の事が少し心配だったから、店長に了解を得て様子を伺いに来た…らしい。

 お茶をすすりながら、少しの時間、沈黙が続いた。

『未来、具合良くなりましたか?』

 とりあえず、何か喋んないと場がもたない…。気になってたってのもあり、率直に聞いた。

『あんまり良くないかもね……。』

 深刻そうな顔をする綾乃。その表情を見た俺は、居ても立ってもいられなくなった。

『え?んじゃ病院行きましょうよ!車、出しますから!』

 俺は、急いで帰ろうとした…

『鷹山君って、ホント未来の事、好きなんだね。』

 はぁ?何言ってんだ…。そんな事、言ってる場合じゃ…

『嘘!ホントに悪かったら、とっくに連れてってるよ。』

 綾乃は、軽く微笑み未来の部屋の方を見た。

 この人、冗談キツすぎだよ…。

『未来って、頑張りすぎなんだよね…。風邪引いて熱もあるのに、でも、無理して仕事して…。結局、倒れちゃって…。』

 少し寂しげな綾乃…。綾乃も未来の事、好きなんだな…。

『鷹山君?ありがとうね?未来、大分、元気になってきたよ?』

 綾乃は、優しく微笑み、そして立ち上がった。

『私、そろそろお店戻らないと。』

 綾乃は、玄関の方まで歩いて行った。俺も、後をついていく。

『さっき、未来の事凄く怒ったから、後でフォローしといてね。』

 綾乃は、ニコッと笑いながら手を振り出ていった。

 怒ったのか…。だから、あんな寂しげな顔してたんだな…。

 綾乃って、凄く良い先輩なんだな…。少し羨ましがった…。

 俺は、一人ソファーに座り、何をするのでもなく、ただそこにいた。

 いざ、一人になると…、困った。

 さっきの綾乃の言ってた事が気になっていた。

 未来、怒られるような事、するようには見えないけどな…。ワガママだけど…うん!ワガママだ!

 お茶をすすりながら考える。その時、寝室から未来が出て来た。

『あ!司君?』

 目を擦りながら近づいてくる未来。

『よっ!体調の方は?大丈夫?』

 未来にポカリをよそって飲ませた。

『もぅ治った!綾乃は?』

 治ったって…。

『忙しくなる時間だから戻るって。』

『そっか…。』

 少し寂しげな未来。コップを置き、“はぁ〜”って、ため息…。

 なんだ?今度は未来のため息…。魂が抜けそうな感じだな…。

『まだ、体調良くないんだろ…。ため息吐いちゃって…。』

 未来は、少し黙って俯いていた。そして、話し始めた。

『綾乃に怒られたんだ……。仕事で怒る事はあっても、プライベートでは…、初めてだな…。』

 怒られた事がショックだったのか、目にうっすら涙を浮かべていた。

 未来って、案外もろいんだよな…。綾乃も、それを見抜いて…。フォローか…。

『何で怒ったかは知らないけど、綾乃って、未来の事凄く心配してたよ?綾乃、自分で言ってたんだ。未来の事、凄く怒ったって!その時の綾乃の表情…、寂しげだったな…。』

『そっかぁ…。』

 さらに落ち込む未来。でも、心なしか嬉しそうにも見えた。

 優しく接する時もあれば、厳しくする時もある。仲間を怒るって事がどれだけ辛い事か…、綾乃が教えてくれた。言う方も、言われる方も辛い、でも、言わない方がもっと辛い。どうせ言うなら、愛を持って接して行きたいな…。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう