「大きなったなァ〜」
「大きくなりましたね…」
「可愛なったなァ〜」
「街で知らねぇジイさんオッサン変質者共に拉致られそーになるくれーに可愛いな」
「実家にコソッと連れてって、床の間にでも飾っとけたら最高やろなァ〜」
「いや服部それ犯罪だろ」
秋も深まり冬の気配が色濃くなりつつある、時折冷たい風の舞う晴れ渡った日曜日。
ここ阿笠邸のリビングでは、例の如く男四人がソファでごろごろ暇を持て余していた。
いつも繰り広げられている騒騒しさと違い、緩慢で無気力な空気が漂うのは主二人が留守のせい。せっかくの日曜日だからといそいそ朝からやって来てみれば、博士はとっくに外出中。哀は博士の代理で急遽学会の会合に参加するらしく、パタパタと身支度を整えていた。
哀が阿笠邸に住みだして約五年。
数々の論文や特許は主に博士の名前で発表し、哀は黒子に徹している。しかし時には博士の主張で哀単独で論文を作成したり、二人連名で発表する時もある。博士も進んで哀を学会に同伴させるので、この世界ではちょっとした有名人だ。最早関係者内で哀は小学生とみなされておらず、学会も天才少女哀の参加を心待ちにしているフシもある。
慌ただしく出掛けようとしている哀に『留守番よろしくね』と手の平に合鍵を落とされ、彼等は大人しくリビングにおさまり今に至る。アテにしていた哀の朝食はもとより昼食も食べそびれた彼等は久々に出前を頼み、何となく味気ない思いを抱きながら食欲を満たす。そのまま時間は刻々と流れ太陽は沈み、珍しく事件の要請もなく彼等はぼんやりと過ごした。
コーヒーや紅茶を延々と飲みつつ先程から交わされ続けるのは、彼等と入れ違いに出掛けた哀の話題ばかりだ。
「ホンマ哀ちゃん可愛いなったわ〜。昔はダークな雰囲気全面に漂わせまくっとったけど、最近ようやくちょこっとは心許してくれとるんかなァ〜って思える様になりよったし。将来どんな姿になるんか知っとっても、楽しみでしゃあないわ」
「外見的に女の子はあっという間に成長しますから。これからますます大人の女性へと変わっていくんでしょうね」
「性格は相変わらず基本クールだけどな。どーするよ、哀ちゃんこのまま中学生になったら……小学生の今でさえミス東都だぜ?だんだんとこれからあの志保さんの姿になってくんだろ?これ以上どんな騒動起こるのか恐ろしくて想像できねぇ!」
身震いする快斗に、新一が同感といった風に頷く。
「そうだよな……光彦に聞いたら、他校巻き込んで大規模なファンクラブが出来てるらしいしな。会員ナンバーもうじき1000だってよ。光彦はプレミアム会員ナンバー一桁台だって得意気だったけどな」
「うげっ!なんやねんそれ………勘弁せぇや」
平次が頭を抱えて喚く。白馬も頬杖をつきながら深く嘆息する。その嘆く姿もどことなく品があるのだが、平次から見ると『ただのイヤミな格好つけ』としか思えない。
「哀さんをパーティーのパートナーとして連れて行けば、途端に囲まれて身動きとれませんからね」
「そーそー何時からだっけか?哀ちゃんをオレ達の出席するパーティーに無理矢理連れ回し始めたのって」
「確か小2の頃だったんじゃねーか?灰原もなぁ……子供らしく振る舞うってコト全く考えねーから。あんなんじゃいくら目立たなく無口でいても意味ねーよ。初めて連れてった時のコト憶えてっか?黒羽も白馬も服部も居たよな?ドレス着てフランス人形みたいなカッコさせてパーティー会場に到着した途端、海外ゲストの注目の的。しかも灰原のヤツ、興味津々次々近寄って挨拶してくる海外ゲストや大使相手に、全く同じ言葉で挨拶返しやがったからなぁ………しかも全員に」
「せやなアレは確かに凄かった。白馬のツテで出席したどっかの大使館のパーティーやったっけ?」
「ええ。あの時は小さな島国も含めて20ヶ国以上のゲストがいましたが。その全ての大使達と、哀さんは相手国の公用語で会話してましたから。流石の僕でも驚きましたね」
「そーそー。普通ありえないぜアレは。見た目小学生であれ以上のインパクトはなかったんじゃねぇの?一躍有名人だし、ゲスト達もスッゲェ大喜びだったし、記念撮影やら握手やら興奮した海外ゲストのマシンガントーク炸裂やらでオレ達全く入り込めなかったよな」
「そーなんだよ。しかも博士が言ってたけど、アレから灰原へ直接、色々な国の大使館からパーティーの招待状が届くようになったみてーだぜ。全部丁重にお断りしたっつってたけど」
四人は顔を見合わせ、盛大に溜め息をつく。気持ちは揃って『彼女から目を離すと何を仕出かすか全くわからない』である。憂色をたたえ諦めの表情で肩を落とす三人の男達に、白馬が『そういえば…』と真剣な表情で切り出した。
「父から聞いたのですが、知ってましたか?哀さんこの間、連続女児誘拐未遂犯を捕まえたんです」
「はあ!?なんだそりゃ!聞いてねーぞ!!」
ソファから半分身を乗り出し白馬へ食って掛かる新一に、『僕に言ってどうするんですか』と眉をひそめる。
「────都内で、誘拐未遂事件が続発していたのは知ってますよね?」
「新聞やらニュースにもなっとったアレやろ?確か一週間位前に犯人捕まった言うて報道されとったんちゃうか」
「その事件です。半月程前、哀さんといつも一緒にいる少年探偵団の女の子が狙われたらしくて」
「もう一人の女の子?あのカチューシャをつけた可愛い子だろ?」
「ええ…さすが黒羽君、女性に対する記憶力は抜群ですね。まぁそれで少年探偵団の出番だとなった様で」
「光彦達か……相変わらずだなアイツら……」
ちょっと昔を思い出し懐かしさに微苦笑を浮かべた新一に、白馬から更なる爆弾が落とされた。
「で、哀さんが囮になったと」
「「「はあっ!?」」」
白馬は驚愕に目を見張る三人の顔をそれぞれ見据えて、重々しく頷く。
「僕も聞いた瞬間は耳を疑いましたよ。ともかく哀さんは僕達に内緒で囮になり────思惑通りに現れた馬鹿な犯人を、少年探偵団が追い詰めたそうです。しかしやはり大人と子供。反撃されて危うかったところを、非番デート中でたまたま通りがかった顔見知りの刑事達に助けられたそうです」
「「「……………」」」
「ま、その時の哀さんがまた凄くて。最後の悪足掻きで刑事を振り切った犯人に向かって、奪ったナイフを目にも止まらない速さで投げ壁に縫いつけ、逃走を食い止めたらしいですが」
身体の周りにナイフが刺さった憐れな犯人の姿を思わず想像してしまい、一瞬どう反応していいかわからない三人。やがて新一が息を吐き、片手で額を覆ってうめく。
「ホント勘弁してくれよ………」
帰って来たら今度こそみっちり言い聞かせてやる───新一は低く唸り呟いている。地底から響く様な笑みをたたえるその形相は、はっきり言って不気味以外の何物でもない。
「けど、なんで白馬の親父がンな事わざわざ言ってくんだよ」
「東都大学祭で、キッド絡みの報道があったじゃあないですか。そのせいもあって彼女は警察内上層部でも有名ですから。僕もばあやも、哀さんの事は父の前でよく話題に出してますし」
快斗からの質問に軽く肩をすくめ答え、ソファの背にゆったりと身体を預け足を組み直す。そして白馬はわざとらしく目を細め、くすくすと微笑った。
「それにしても、君達も意外と哀さんの事は知らないんですね」
ピキィン!
室内の気温が下がる。平次が真っ先に獰猛な冷笑を洩らし、白馬を威嚇する。
「ほぉ〜おもろいやないけ。さも『自分が一番知っとる』みたいな台詞やなァ」
「でも事実ですよね」
にっこり余裕の笑みを向けてくる白馬を見て、平次の額に青筋が浮かぶ。快斗も『へぇ〜エライ自信じゃねぇか』と唇を歪める。そして何かを思いついたのか突然にんまりと笑い、険悪なオーラを釀し出す三人を見回し言った。
「よし!じゃあ勝負しねぇか?題して『哀ちゃん超カルト知識披露大会』〜〜〜!」
ドンドンパフパフ─────!!
突然効果音が鳴り響き、紙吹雪が舞い鳩が飛び出すリビング。───あの白い鳩は一体何処へ飛んでいくのだろうかと、思わず関係ない事を考えてしまった三人に快斗は憤然と声をかける。
「…………って聞いてんのかよっ!?」
「一応聞いてっけど……灰原の知識?なんだそりゃ」
「だから!この中の誰が一番哀ちゃんを理解してっかっつーコトだよ!んだよ名探偵文句あんのかよ」
新一は明らかに気乗りのしない顔付きで快斗に視線を向けた。聞き返したその口調も興味の無さがアリアリとわかるものだったので、快斗は憮然とした面持ちになる。
対して平次は俄然乗り気で、白馬をジト目で睨みつけたまま言い放つ。
「へぇ〜ええやん。オレ少なくとも白馬に負ける思わんし。やったろやないか」
「面白い、受けてたちますよ。工藤君はどうします?勝負する前に負けを認めますか?」
「はっ!しょーもねー。んな事しなくてもオレが断然一番だろ」
ピキキィン!!
空気が凍る。快斗が表情をなんとか保ちつつ、ぎこちないこわばった笑みを向けながら新一を睨む。
「………そりゃ哀ちゃん見守り歴週五日の、オレへの挑戦と見た。名探偵、後で吠え面かくなよ!?勝負だ!!」
「…………仕方ねーな」
やれやれと新一はソファから身を起こす。やむなく参加するといった姿勢を見せながらも、根底にあるのは自らの勝利を確信する自信。
平次は両手指をバキボキ鳴らしながら『ふっふっふっ』と低く唸る。目は半眼に伏せられ、口の端は不気味に上げられていて恐ろしい。
快斗も『ゼッテー負けらんねぇ』と呟きつつ、持ち前の頭脳を駆使し哀のデータを羅列する。
白馬は相変わらず余裕綽綽な表情を崩さず、長い足を組み直し、落ち着きはらった笑みをたたえて三人を眺める。
この場にいる全員が、自らの勝利を確信していた。
そうして闘いの火蓋が切って落とされる。
「んじゃまず基本情報から」
快斗の開幕宣言に、平次がまず口火を切った。
「とりあえず基礎知識言うたら、身長体重やろ。152センチ37キロやっけ?」
「それ先月だろ?今は153センチだぜ。そういや最近身長は順調に伸びてるのに体重がなかなか増えないんだよな……ちょっと心配」
「どうして黒羽君が心配するんですか」
白馬が冷ややかな視線を送る。それには構わず、彼等はそれぞれの持つ『知識』を並べていく。とりあえず新一から時計回りで答えていった。
「好きなモノはブランド品」
「ビッグ大阪もやろ」
「緋色も好きですよね」
「映画とファッション雑誌もじゃねぇの」
「破滅型思考」
「最近そーでもないんちゃうか?」
「なかなか弱みを見せてはくれませんよね」
「それでいて愛情に飢えてる寂しがりや。そこがまた堪んねぇよなぁ」
「そこんトコはなぁ……多分今後も変わんねーだろーな。灰原アイツとことん素直じゃねーから」
「母親似やろ」
「学会のアイドルですね」
「コナン亡き後の少年探偵団実質裏リーダー役」
「オイ黒羽オレは生きてるっつーの」
ジト目で睨む新一に『ジョーダンだよ!でもどっちにしろコナンは二度と現れねぇじゃねーかよ』と快斗が言い返す。一息ついて、新一が呆れ果てた口調で発案者たる快斗に文句をつけた。
「つーか全員知ってる話ばっかじゃねーか!自分だけが知ってる話じゃねーと意味ねーだろ?」
「へーじゃあ名探偵言ってみろよ」
幾分皮肉混じりで挑戦的な視線を向ける快斗。新一は暫し考え、口を開く。
「そうだな………灰原の右肩には銃創が」
「知っとるわ」
「ってーか右肩だけじゃねぇし。他にもあんだろ」
「左腕とか左足にもありますよね」
即座に三人からツッコミが入る。新一は一瞬怯みつつも、会話を続ける。
「じ、じゃあ、灰原の寝言………」
「『お姉ちゃん』やろ?」
「いや、オレん時は『博士』だったぜ」
「僕の時は『ふにゃ』でした」
「なんだそれ!?聞きてえ!!」
「ぎゃあ白馬おんどれズッコイぞ!!」
「白馬の分際で許せねぇ!!」
「………君達二人には、どうやら人に対する礼儀というものが欠如している様だね」
ぎゃいぎゃい喚く三人を、新一は乗り遅れた気分で寂しく眺める。明らかにツッコむタイミングを逃した新一は、三人の会話が落ち着いた頃を見計らって口を挟む。
「………………つーかオメーらどーいうコトだ。一体いつ灰原の寝言聞いたんだ問題発言だろ。…………まぁいい、これはどうだコレは知んねーだろ。灰原の右脇腹に小さな痣が」
「「「知ってる」」」
「まてコラ━━━━━!!なんでオメーらが知ってんだ!?」
「何言うとんねん、毎年海行っとるやろ」
「そーそー。水着になれば自然と分かるだろ」
「あの痣って、ふとした瞬間に浮かんできますよね。普段は見えないのに。ハート型っぽくて可愛いですよね。哀さんにお似合いで」
今度は一転、三人はにこにこ語り合う。その表情には蕩ける様な笑みが浮かび、如何にその痣がワンポイントとして可愛いかをこぞって述べている。
……………新一は何故だか無性に腹がたってきた。
今まで誰にも言った事のないパンドラの箱を開けようと決意を固め、実行に移す。
「ふっふっふっ……!ならとっておきだ!これはゼッテー誰も知らねー!」
「へぇ勝負に出たな名探偵。是非とも聞かせてもらおうじゃねぇか」
「なんや勿体ぶってヤラシイやっちゃな」
ニヤニヤ笑う快斗と、新一の大袈裟な物言いに呆れた顔の平次。白馬も多少は興味を惹かれた様子で、新一へと目を向けた。
「………灰原のなぁ」
「「「ほぉ」」」
「背中のど真ん中にはなぁ」
「「「ほぉ!?」」」
「実は」
「何が有るのか教えてくれるかしら」
───ぴきっ───
「────なにやら随分興味深い話題の数々ね」
四人が同時に固まった。
ぎぎぎぎぎ……と彼等は首を捻り、ぎこちなく声の発生源に目を遣る。薄く開いた扉の隙間から、哀の能面のような顔が覗いていた。
怖い。怖すぎる。一瞬にして氷点下どころか臨界点を突破した室内に、顔面蒼白になる四人。
「は、は、は、灰原いつからそこに……!気配が全く無かったぞ!?」
「へぇそう特に意識はしてないのだけれど持って生まれた習性かしら気配を消すのは。ちなみに『ドンドンパフパフ───!』の辺りから此処にいたわよ普通に」
ほ…ほぼ最初……!?全員の背中にとめどなく冷や汗が流れる。
「あ……哀チャンお帰りお疲れ今日もゴクローさん、つーか予定より早かったんちゃうんか……?」
「そうね貴方達のご飯も用意してなかったし心配だったから、懇親会も断って急いで帰って来たんだけれど余計なお世話だったみたいね。和気藹藹とお話を楽しんでたみたいだから」
臨界点を突破してなお、一路真っ逆様に急降下していく彼女のオーラ。脅える男達の一人一人を順番に見つめ、そして突然一種凶悪な微笑みを浮かべた。
────そんな哀を見た瞬間、男達四人に壮絶な悪寒が走る。
哀がくすりと声を漏らし、優雅な動作で彼等に近付く。端から見れば誰もが陥落する其の微笑みは、今の彼等にとっては別の意味で全面降伏モノだ。『助けて博士━━━━!』と心中叫んだのは一体誰だったのか…………
「────さて、ここに今日の学会で発表された、工藤君の卒論作成に必要不可欠な大変役立つ資料のフロッピーがあります」
ぴっ!と差し出された哀の右手には黒い無機質なフロッピー。今朝哀が出掛ける際に学会テーマを聞いた新一が、飛び付いておねだりした一品だ。哀の事だから、新一の必要な部分だけを抜き出し編集してくれているのだろう。
「お……おう悪かったな、はいば…」
「サヨナラ」
バキンッ!
「あ゛━━━━━━━!!?」
どんな力を込めたのか、哀の手によって真っ二つに折られるフロッピー。最新レア知識の宝庫が、一瞬にして黒い塊となり果てる。
「嘘だろオレの卒論………」
「そしてここに、服部君から頼まれていた昼ドラ『赤薔薇と黒薔薇』の録画DVDがあります」
「ま……まさか」
嫌な予感にますます青ざめる平次。
「これもサヨナラ」
ベキィッ!
「だ━━━━ッッ!!哀チャ━━━━ン!?」
オレの週末の楽しみが━━━━!真っ二つのDVDを手に滂沱たる涙に暮れる平次。
「さらにこれは黒羽君が私に黙って収集していた『哀の思ひ出☆age7〜age11』のデータマイクロチップ─────」
「ぐぉ何故それを────ってか甘いぜ哀ちゃん!そー簡単に好きな様にはさせねぇ!」
持ち前のとてつもない動きで、哀が持っていたマイクロチップは一瞬にして快斗の手にしっかりと握られていた。冷や汗を流しつつも哀を出し抜けた事で得意気に笑む快斗と、『ずりぃ!』と心の中で叫ぶ不幸な男二人。だがしかし。
「────の、それはダミー。本物はこっち。残念ねサヨナラ」
パキン!
「ぎゃ━━━━━━━!!!オレの青春━━━━━━━!!!」
やはり哀が一枚上手だった………魂の叫びと共に脆くも粉々に砕け散る快斗の青春……もといマイクロチップ。
「そして白馬君」
「ふっ……残念ながら僕には哀さんに依頼中のモノも、誰かさんの様に怪しげな趣味もないですからね」
悠然とソファに腰掛ける白馬。打ちひしがれた三人の男達を憐れんだ瞳で見つめるその表情には余裕すら感じる。唸る快斗が『何の趣味もねぇ面白みのねぇつまんねー蘊蓄男に言われたくねぇ!』と涙目で睨む。
そんな白馬に、哀は爽やかキュートな小悪魔スマイルを見せた。
「週末のお茶会はキャンセルね」
「はぁ━━━━!?ンだよ白馬抜け駆けかよ!」
「スカしたツラしてえげつないやっちゃのー」
ここぞとばかりに騒ぎ立てる快斗と平次を無視して、白馬は慌てて哀に詰め寄る。
「ちょ……!哀さんそれは半年も前からの約束じゃないですか!あの夜景を独占できる席をリザーブするのがどれほど大変か─────」
「何か文句でも?」
「う゛………!」
「そして最後に」
哀は、あまりの急激な展開について行けず半ば呆然と佇む四人の男達に、昼ドラ主人公の一人『黒薔薇』も真っ青な華麗かつ艶やかな微笑みを見せ、容赦なくトドメをさした。
「全員、今すぐ出ていってくれないかしら?」
────それから一週間、閉ざされた地下研究室の扉に向かって懇願し続ける四人の男達と、見事に巻き添えを被った阿笠博士の泣き付く姿が見受けられたという────
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