ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
暗闇の中で
 映画は、まぁ、うん、そーねぇ。これで、感動して泣く人もいるだろうねぇ。宣伝では全米が泣いたらしいし? でも、まぁ、その、僕の感性がおかしいからかもしれませんけど、非常に暇だった。欠伸が出ちゃう。だって、男の子だもん。いや、この映画を見て面白いと思うかどうか性別は関係ないと思うけどさ。
 しかし、こう、映画館の椅子ってのは、中々、気持ちがよいものです。そりゃそうだ。二時間くらい座っていないといけないんだからね。その座り心地の宜しい椅子に座ったままあんまり趣味の合わない、はっきり言って個人的には面白くない映画を見ていれば、少々、睡魔に襲われたりもするものさ。
「ふあ、っふぁーあーっと」
 大きな欠伸を一つ。キャラメルポップコーンを一つつまんで口の中に放り込む。もしゃりもしゃりポップコーンを噛み砕きながら目を浮かんだ涙を拭おうとしたところ、手を握られた。このひんやりとした肌触りは彼女の手だ。まぁ、いきなり、別の手が出てきて僕の手を握ったりしたら、そりゃホラーだよ。
 続いて彼女が僕に覆いかぶさるようにして顔を近付け、べろを出した。何をするつもりかと見ていると、更に顔を近づけて、僕の視界の端をべろんっと舐めてった。
「何するのさ」
 滲んだ涙の代わりにべったりくっついた彼女の唾液を気にしながら尋ねると、彼女はなんとも変わった好奇心を披露してきた。
「君の涙の味が知りたくなった」
「そんな好奇心は捨ててしまえばいいよ」
 君は、何だ。なんでも目についたものは口に入れちゃう子供かい?
「退屈そうだな」
 彼女は暗闇の中で僕をじっと見つめながら言った。映像もちょうど暗い場面で暗闇は非常に濃い。かろうじて彼女の顔を判別できるくらい。
「ん。あ、あー、ごめん」
 とりあえず、謝っておく。いくら、映画がつまらなかったとしても、彼女とのデートの最中に退屈そうな態度を見せるのは男失格といえるだろう。まぁ、僕にゃ男の甲斐性とかそんなんはないんだけどさ。それでも、僕は紳士を自負しているからね。クラスの紳士同盟の書記を務めている身だし。
「謝らなくてもいい。確かに、つまらない映画だし」
 彼女は無表情で呟く。
 ちらっと遠くの他の客を見ると、何人か女性が号泣してハンカチを涙で濡らしていた。うぅん、僕と彼女は趣味が合うのか? あのお客さんたちが涙もろいのか?
「ともかく、そう思っているのは僕らだけみたいね」
「む。確かに」
 僕と彼女は映画に集中するお客さんたちを見てから、顔を見合わせ、映画をちょっと見て、また、顔を見合わせる。やっぱり、つまらん。
「僕と君の趣味が変なのかな?」
「さぁ? どうだろう」
「映画の前評判調べてないから、あんまりよくは知らないけど、テレビで紹介を見たときは、なんか、結構、感動作で、そこそこ、売れてるみたいだったなぁ」
「そうだな」
 僕らはお客さんに配慮してぼそぼそと小声で話し合う。顔が近いので、ほんの少しの声でも聞こえるのです。息が互いの顔に当たるくらい近いのよ。てか、近い近い。近すぎ。僕の顔に君の眼鏡が当たってる。
「つまらないなら出る? まだ時間早いから、他の映画見てもいいし。今からなら、他の映画見ても、十分お昼ご飯に間に合うよ」
 僕の提案を聞いて彼女は少し考え込んでから、首を左右に振った。
「特に見たい映画はないからいい。それより」
 そして、握ったままだった僕の手を引っ張った。
「ここ、触って欲しい」
 引っ張られた僕の手は彼女の絶対領域へ。おぉ、このネタまだ引っ張るんかい?
 彼女の太ももは少し前にバスの中で触ったとおり、ふにふにと柔らかく滑らかでしっとりしている。
 て、何故、僕は彼女に言われるがままに、彼女の太ももをさわさわしているのだろうか? いや、彼女の太ももを撫で摩るという行為は個人的には悪くない。悪くないけど、こう、他人がいる公共の場で行うには非常に不適切だと思うんだよね。
 そんなわけで、僕は彼女の太ももから手を離そうとするも、何故だか離れない。接着剤がくっついているわけでも、テープで貼り付けているわけでも、磁石のように磁力が効きあっているわけでもないのに、彼女がそれほど強い力で僕の手を押さえつけているわけでもないのに、僕の手が彼女の太ももから離れず、それどころか、徐々にするすると上に向かっているのは、全て、僕のスケベ心のせいだ! あぁっ! やはり、人間は欲望には抗えないというのか!? 己の性欲が憎い! と、心の中で自己弁護。よし。これでいい。何がいいのか全く意味分からないかもしれないけど、少なくとも自分の心の中ではこれでOKなのさ。
 軽く唇を重ね合わせながら、絶対領域から更にその奥へ、デニム地のスカートに隠された太ももの付け根の内側辺りへ手を差し込んでいく。そこは今までさわさわしていた太もも部分よりも、さらにふよふよと柔らかく、触り心地は非常に心地よい。あともちっと指を進めればパンチュの中に入れるなぁ。
「ん、ふ、ん、ちゅ、ぁ、なんか、触り方が、いやらしいな」
 一旦、唇を離して、彼女が呟く。離したとはいっても、二人の顔の間の距離はかなり近くて、彼女が喋る度に、熱く湿った吐息が顔にかかる。
「君にいやらしいなんて言われたくないな」
「それはどういう意味だ?」
「そのままの意味だよ」
 いやらしさでは僕は彼女に及ばないと心の底から思う。
「私の方が君よりえっちだって言いたいのか?」
「そのとおり」
 どう考えても、彼女の方がずっとエロいことに積極的というか、いっつもこーいう関係を迫ってくるのは彼女の方からだしなぁ。彼女の方がエロいに決まっている。今思ったけど、彼女の方がエロいって強硬に主張する彼氏ってどんなもんよ?
「君だって、十分えっちでいやらしいじゃないか。ここ、とか」
 彼女は艶美に微笑むと僕の股間に指を這わす。そこには既にびっくびくと起立するマイサンが。いや、だって、無理ですよ。こんな雰囲気の中じゃあ、息子もじっとしていられませんよ。
「ほら、ズボン越しでも、硬いのが分かる。きっと、とっても熱くて、いやらしい臭いがするんだ」
 彼女は微かにうっとりとした笑みを浮かべながら僕の股間の辺りを長く細い指で撫で擦る。あぁー、そんなに、刺激されると、股間の息子が更に一時的成長を遂げてしまう。
「あー。君、ちゃんとここが何処だか理解してる?」
 どうも、僕って奴は相手が我を失っていると、自分が我を取り戻すみたい。
 欲情に満ちた瞳で僕を見つめながら、僕の股間を撫で擦って刺激してくる彼女に、僕は注意する。
「ここ、映画館だからね? 他の人もいるからね? あんまりなことはできないよ?」
「ん、ぁあ、これが、君の(ピー音)……」
 彼女の台詞中に放送に不適切な言葉がありましたので、編集いたしました。てか、僕の話聞いてる?
「分かってる。バレないようにすればいいんだろ?」
 違う。
 違うけど、彼女は僕の意思なんかには全く頓着しない。僕にのしかかるような姿勢だった彼女はするすると僕の上から音もなく降りて、僕の足元に座り込み、僕の腰に抱きついた。君、まさか、何するつもり?
「これ、鎮めないとダメだろ?」
「いやいや、お気遣いなく。放っておけば何とかなりますから」
 と言っても、彼女は全く僕の言葉なんかには耳を貸さず、嬉々として僕のベルトを外し、ズボンを引き摺り下ろした。僕が無力にもあわあわしている間に、彼女はさっさとパンツまで脱がしてしまい、僕の息子と御対面なさった。
「んふ。ほら、君の、もう、こんなに、硬くて、熱くて、んん、ぁ、いやらしい臭ぃ」
 彼女は、僕の息子を見つめてうっとりと囁く。あぁ、吐息がかかるぅ。
 さーて、ここから、凄い抽象的な表現になりますよぉ。フロイトの夢判断を逆方向へやるような感じ。どんな感じかっていうと、そうね。僕が尊敬してやまないフロイト先生によると蛇とか剣とか銃とかは全部男性器の象徴であり、太陽とか海とか林檎は全部女性器の象徴であるらしいんだけど、そーやって色んなものを分類していくと、長っぽいものは全部男性器で、大きいっぽい丸いっぽいものは全部女性器になるんだよね。それを逆バージョンでやります。意味分かるよね?
 何でそんなよく分からんことをやらないといけないのかって、その理由は僕じゃない誰かがもっとよく知っているはず。正直、もうアウトなんじゃないかって思っているんだから! あんたの為にやってるんじゃないんだからね!
「何をぶつぶつ言っているんだ?」
「君はいきなりこんなことをするから混乱しているんひゃぁっ!?」
 腰辺りから僕を見上げて尋ねてきた彼女の問いに答えている途中で、僕は素っ頓狂な悲鳴を上げてしまった。あんまりにも大きな悲鳴だったので、何人かのお客さんが何事かと僕を方を向いた。僕は苦笑い。彼女は前の座席の影に隠れているし、暗いので相手からは見えていないはず。
「かわいい悲鳴だな」
「い、いきなり何するのぉっ!?」
 楽しげに呟く彼女を小声で叱責する。
「ん? こう、ぺろ」
「んひゃぅっ」
 僕は悲鳴を上げないように口を押さえた。気を鎮めよう。ちょっと刺激に敏感になりすぎだ。
 僕が口を押さえて気を鎮める為に深呼吸している間にも、彼女は僕の息子を苛める手を休めない。手っつか、舌ですけどね。いじめ反対っ! 糞っ! でも、愚息は喜んでやがる! お前、Mなのか!? 僕は何を考えているんだろう。相変わらず、僕のミスターブレインは混乱中。
 彼女は先の方をぺろぺろとやった後、攻撃点を一気に下へ移動させる。空いた先の方は細長い指でいじりつつ、もう片方の手は更に下の、えーっと座布団って言えば意味分かるかな? そこをやわやわと揉んでいる。舌は根元を這いまわる。
 ところで、女性、に限らず、相手の性器に口を付けることに拒否感というか苦手意識を持つ人もいると思うんだけど、うちの彼女はそーいうのは全く気にならない人みたい。いや、まぁ、ここまでやってて「いや、汚い」とか言っても説得力ないしさ。ちなみに、僕も気にしない主義。まぁ、どーでもいいんだけど。いや、ほらさ。僕、混乱中だから、こーいうどーでもいこと考えちゃうわけさね。さて、どこまで描写したものか。
 彼女の舌は木の幹を這い登る蛇のように、巻きつき、這い回り、舐っていき、てっぺんに上ると、蛇はその木をぬっぷり丸呑みにしてしまいましたとさ。奥へ奥へと呑み込み、舌を這わせ、ずっと奥に当たると、ずるずると吐き出し、そして、また呑み込む。これを数度繰り返すっと。
「ん、ぁぁん、んぁ、あ、むぅ、も、もぉ、無理ぃ、無理無理、で、出るから、ぅんん」
 何が出るかは言うまでもない。そして、現に出た。
 彼女は躊躇なくそれを飲み込み、じゅるじゅると吸い取り、あっさりと嚥下してしまった。
 父子ともに力を失っている間に、彼女はさっさと息子をティッシュで綺麗に拭き、息子の持ち主にパンツとズボンを履かせてベルトを締めた。それから、映画館に入る前に買っていたアイスコーヒーをごくごく飲んで、それでぐじゅぐじゅとうがいしてごくんと飲み込んだ。口をゆすいだ液体をそのまま飲むのはどうだろう?
 それから、自分の席に戻って、ぴとりと僕に横から抱きつき、耳元で囁く。
「どうだった? 私の口」
 僕は口をへの字にしてノーコメントを貫いた。口を開けば余計なことを言いそうだったからね。
「前にやってあげたときより、多く出たし、君の反応も良かったから、前より上手くいったんじゃないかと思うんだが」
 ノ、ノーコメント。
ノーコメント。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。