作者とおかしなSFストーリー
第1弾『作者とおかしなストーリー』
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第2弾『作者とおかしなダイストーリー』
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第3弾『サンタとおかしなストーリー』
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加えて、SF企画1作目の方をお読みになってからだと、より一層本編をお楽しみ頂けると思います。
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(小説『彼の子どもを好きになりました。』)
では、どうぞ。
ロボットが創主を超えられないように、主人公は神である私(作者)には逆らえない。
これは、作者と主人公が罵りあいながら作りあげる、小説という枠を飛び越えちゃったストーリーである。
そしてこれは第4弾。今回は企画物という事で、SFちッくに挑戦する。久しぶり。
――まずは主人公。えいっ。ぽんっ。
作者、いきなり非科学的な手法で主人公を出現させた。「こ、ここは……?」27歳女、名をアヤカといった。某電器屋のカードではない。
――やあ、いらっしゃい。この小説の作者だよ~。仲よくしよう、アヤカくん。
「へ……? 何で作者が小説に。反則じゃ?」
――『あなたのSF』だからいいの。後で主催者にワイロ渡しとくから。
「はあ、よく分からないけど、何で私がここに。結婚式の準備で忙しいんだけど。何するの」
――ほお結婚ですか。誰と? 宇宙人ですか獣ですか在来種ですか。
作者、頑張ってSF。
「未来人だけど何か」
今回の主人公は強者だった。普通ではない。
――こりは頼もしい。今までは“ヘタレ”と“ツンデレ”と“ろくでなし”が主人公だったから。そうか、元が主人公だから、“主人公”に慣れてんですね! それは楽。
「どうでもいいけど用は何なの。過去ログ見ても目的が分からない」
――ああそうだね。今回は目的を決めてないんだ。第1弾からずっとファンタジーで話を作っていったけど、今回は素晴らぴー企画『あなたのSFコンテスト』という事と、某リクエストにお答えして、じゃーSFにこだわるって事でお届けしようと。
作者、腕を組みかえつつ、遺伝子も組みかえた。
「無理やりSFにしようっていうの」
――そうです。
何も起きなかった。
――企画は2作まで応募可なんだけどねー、1作は投稿したんだけどねー、あと1作。水虫の話を書こうかなと企んでたんだけど、いいのが思い浮かばなくてさー。
思い切りタメ口で作者はまるでスーパーで立ち話でもしている近所の主婦の様に語り出した。
――ちょっと聞いてよ奥さん。
甥っ子には叔母さんと呼ばせない。
「あんまりグダグダしてると読者が逃げるわよ。目的は何。早く決めて元の世界に返して」
それを聞いて作者は閃いた。ぴっかちゅー。
――ふむ。じゃあ、それで行こう。
「は?」
――主人公が元の世界へ帰還する物語。
「ええー!?」
――決まり。以上。
「どうやって帰るのよぉ!?」
――さあね。
作者、難儀だった目的が決定したので、一考する。
助っ人を増やす事にした。「助っ人?」えいっ。ぽんっ。「誰よ」作者、ちゃんとテレポート技術で助っ人を呼んだ。
――テレポ―テーションは、実際、既に量子レベルで実験は成功してるのだよ。ほい。
「はあ」
――SF解説要る?
「別に……」
――とはいえ、入口に入ると出口から出る、というわけではない。入口に量子Aが触れると、すぐに出口が量子Aになるという仕組み。
作者、勝手に説明。
「はあ?」
――つまり、入口と出口もAとは別の量子なんだよ。量子がどこでもドアのドアみたいなもんだね。入口と出口の量子は、宇宙の果てまで引き離されても繋がっている。
「はぁ……」
――単身赴任になっても結婚は解消されない、って感じ?
「どういう比喩よ、それ」
――転送したい量子Aを入口役の量子にくっつける、すると量子Aはもはや量子Aではなくなって、入口役の量子の方が量子Aの性質を受け継ぐ。だが、入口役と出口役の量子は繋がっているので、量子Aの性質は……
「あのぉ~……」
話の腰を折って、男はのらくらとやって来た。
――あんた誰。
「呼んだのアナタじゃないですかぁ! 助っ人」
――おお、そうでした。
「どこかで見覚えがある様な」
アヤカは睨みつけるぐらいに現れた相手を見つめた。「そりゃそうです。ヤマザキテルオの子どもに成りすました、個人情報を盗み出して利用して楽しんでる、愉快犯でキチガイで精神異常者です」自己紹介をした。
「げ」
歪んだ顔でアヤカは後ずさる。「あなた刑務所に行ったんじゃ」キチガイヤマザキは言った。「ですよねぇ」すると作者は言った。
――だから、テレポート技術でちょいとね。
作者の特権をフルに利用している。
――脱走なんて耳掃除より気持ちいい。
「ずるい……」
――ずるくない悪くないセコくない。
「愛田ショウキと言いまして。それで、ここに連れて来られたのは、何なんです?」
キチガイヤマザキは言った。
「いや、だから、『愛田ショウキ』ですって」
作者は無視した。
「いいから、早く元の世界に帰る方法を教えなさい!」
アヤカは吠えた。赤のタイトスカートから伸びる脚が美しい。
「何で急に褒めるの、気持ち悪い!」
――いえいえ、ご謙遜なさらず。
作者はニヤニヤと笑っていた。
――ちなみにこのストーリー、掌編にしたいから早く帰ってね。
「知るかあぁぁああ!」
アヤカの吠え声は天井にまで達した。
――ああそうそう、ここは建物の中。そうだな、作者の家にしよう。しかも作者の部屋。どうせ好き勝手するんなら、とことん行くよー。
「一体誰に言っているのか……」
アヤカとキチガイヤマザキ、両名は深く項垂れた。「もう好きにするがいい……」両名は諦めて作者に付き合おうと決心した。
――では話を筋に戻そうか。実はね、もうヒントはたくさん書いているのだよ。ここまでで。
作者、ドヤ顔で鼻息荒く2人を見渡した。最近、目が痛い。読書のしすぎだ。「え? ちょっと、どういう事よそれ」アヤカはヒントという言葉に反応して作者に詰め寄った。
「作者がふざけて言った(書いた)中にでも何かあったんでしょうか? ヒントが」
――鋭いね君、キチガイのくせに。
「それ(心に)刺さるからやめてくれませんかキチガイ……」
作者は無視した。
――じゃあ取っ掛かりをあげよう。そもそも、君達はどうやってここにワープしてきたと思う?
「どうって……」
アヤカは顔を曇らせた。
「確か、『ぽん』って」
横からキチガイヤマザキは助言する。
「非科学的な手法、って書いてませんでしたっけ?」
――その通り。
「だから? 魔法か何かじゃなかったの。魔法使いが、魔法のステッキみたいなのを持って思い描いた物を具現化する様な感じで……」
アヤカは言いながら自信を失くしていった。
「違うんだ!? そうだと思ってた」
「じゃあどうやって僕らを連れてきたってんですか、教えて下さいよ!」
作者は、ピューと口笛を吹いた。
――実は、君らはスタンプ。
「はあぁああ!?」
――だから赤のタイトスカート。
「朱肉か!」
――残念ながら他の色が手持ちになくてね、家に居るので。
「そこかあぁぁあ!」
悲鳴と絶叫が続く。
――非科学的っちゃあ、そうでしょ。スタンプ押して何で小説に入ってくるのよ。意味不明じゃないか!
作者、こじつけは好きである。「何ていう事を……」「量子の話もヒントではあったのか……ワープ」
――そうだねー。朱肉につけて、ホイっとねー。
作者、こじつけは好きである。2度言った。
「疲れてきたわ……。休んでいい?」
アヤカは座り込んで目は宙を見ていた。
「ちょっと待って下さいよ。『宙』って、ここは部屋ですよね? 外じゃないでしょうね、『実は……』とか言い出して」
キチガイヤマザキは慎重だった。それが彼の性格らしい。
――さすが詐欺師のキチヤマくん。細かいね。キッチャマー。
「略すな!」
――ホラ細かい。はっはっは、安心したまえ、場所は移さないから。『宙』は「空中」という意味だよ。
「本当に?」
――本当。信じて。お願い!
「……」
2人はただ目を閉じた。
作者、2人に朝宮茶の入った湯呑みを渡した。良い香りがたつ。
――はいどうぞ。
「あ、ありがとう」
「あ、すみません」
戸惑いながらも受け取った。
――そのお茶は、日本最古のお茶なんだよ。
作者、説明を始めた。
「へえ。いい香り」
――産地が作者の家からは行ける距離でねー。最近知った。わはははは!
「……」
2人は無言で茶をすすった。
――お茶は、805年(延暦24年)伝教大師(最澄)が中国より持ち帰り、「比叡山麓」の坂本(現在の滋賀県大津市)及び「朝宮の岩谷山」に植えたらしいよ。その時の天然記念物としての茶樹が現在もこの2ヶ所に残っているんだってさ。
「美味しい。お茶は和むわぁ……作者、気がきくじゃない」
アヤカは誉めた。
――どうも。
「癒される……」
――詐欺師も大変でしょう。
「う、いや、まあそうだけど」
作者は座布団もどうぞと促した。
――京都の宇治茶、ほか、八女茶、静岡茶、狭山茶あたりの元祖ともなってるね。約400年後の1192年、栄西禅師が同じく中国より茶の種子を持ち帰って、九州の背振山に蒔いて出来上がった茶園の種を京都高山寺の明恵上人が宇治・静岡・狭山に移し植えたんだとさ。
「ふーん」
「へえー」
――「朝宮茶」は日本五大銘茶として歴代の天皇・将軍に献上されて、広く茶人に「お茶は宇治・朝宮茶」と愛好されてきているのだよ。よろしくね。
作者もお茶をすすった。はぁウマい、今年は午年かあ、まだ作ろうと思っていた馬の置物を作っていない、もう9月だなあと思い出していた。
「はよ作れよ」
――買い置いている紙粘土が乾いてないか微妙だ。
「だから、早く」
部屋の隅にバッチリと用意はされていた。また今度である。
「いつだよ!」
不明である。場は和んでいった。
――休めたかい?
お茶が胃に染み渡った所で、作者は聞いた。
「ええ。もう充分。さてと……えーっと、何だっけ?」
アヤカは頭を捻った。のんびりと、寛ぎモードにでも入っているのか。もし炬燵なら、寝てしまいそうである。
――眠かったら寝ててもいいよ。あと6000文字くらい余裕あるから。ポケモンでもする?
「いや、いい」
――遠慮しないでね、ソフトは第4世代まではあるから。
「うわ、古い」
――世の今は第6世代だねー、待ってー。
「僕らはこの後でどうなるんだろう……」
作者が振り返ると、お茶を飲み終えたキチヤマは座布団を枕に寝転がっていた。
――狭いなぁ部屋。
「いいじゃないですかぁ、ちょっとぐらい……」
どうやら眠い様だった。
――睡眠薬は入れてないけどね。
「むにゃ……」
「私も寝る……」
あまりにも気持ちが良かった様だ。お茶の効果なのだろうか、作者は首を傾げた。2人はしばらくすると寝息を立てて完全に夢の中へ行ってしまった。
部屋のリラックマ(高さ約30センチ、ぬいぐるみ)が細い目で見守っている。
――ふうむ。困ったな、主人公が寝てしまっては話が進まないじゃないか。せっかく助っ人まで呼んだのに無駄。ヘタレキチヤマめ……。
仕方がないので、読者殿にこの先のヒントをあたえよう。ヒントというより、クイズである。
彼らは、スタンプによって押された。押された物が紙だとしたら、または、パソコンの中の文書だとしたら。彼らの末路は。保存する? オア?
――捨てーる!
作者は、ブラックホール(ごみ箱)に振りかぶって投げ捨てた。安らかに。手を合わせた。
悲鳴など聞こえない、合掌。
――さて、お風呂にでも浸かってこよう。
温まって疲れがとれる「温熱作用」、全身の血行がよくなる「水圧作用」、気分がリラックスする「浮力作用」……と、お湯に浸かると3つの物理的作用が働くのである。
入浴習慣が定着している日本では、その効果について医学的に研究・証明されているとバスクリンさんは言っていた。
作者、頑張ってSF。
《END》
作者、ふにゃける(SF)。ふやける。
独了、ありがとうございました。終。
* * *
本作は『あなたのSFコンテスト』企画作品です。サイトはこちら→http://yoursf.tiyogami.com/
※企画が終了しましたので作品への感想はこちらの小説サイトの方へお願いします。
※過去に企画で書いた、SF自作小説が多数あります。よろしければ(古い順)↓
■さんすうリズム(中編/2008年)
■シュセンド(中編/2009年)
■リターン・トゥ・マイライフ(中編/2010年)
■BANZAI☆ロボット(掌編/2010年)
■耳鳴り(短編/2011年)
■SFのとーり!(短編/2011年)
■アドルフストロイカ(長編/2012年※連載中ごめんなさいorz)
■彼の子どもを好きになりました。(短編/2014年)
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SFよりも「あなたの」に、こだわった今回の企画作品ズ。
なので大変お見苦しく、すみません……
スパイス全開できなかった分、修行してきます(汗)。ではー