表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

その話は集中できない。

作者: 三角 仁

 ある高校の休み時間。

 僕のところに友達が来た。

「ちょっと、聞いてくれよ。」

「どうしたの?」

「今日、目の前で交通事故見ちゃってさ。」

「うわ、それ大丈夫だったの?」

「それがさ、信じられないことが起きたんだよ。」

「なになに?」

「まず、目の前を走ってたバイクが運転ミスしちゃったみたいでさ、縁石を踏みつけたままスタントみたいに回転しながら飛んでったわけ。」

「やばいなそれ! 死んじまうよ!」

「しかも、回転しながら飛んで、ヘルメットも飛んじまってさ、それが美人だったんだよ、イワシにそっくりな魚顔でさ。でね、それから、」

「いや、ちょっと待って。何それ。」

「え? だからヘルメットも飛んじゃってそのまま地面にぶつかったら、より危険だってことを、」

「違う違う。美人だって話だよ。」

「ああ、美人だったよ。イワシにそっくりな顔でさあ、」

「だから、それだよ。魚顔って美人じゃないだろ。」

「いや、でも魚顔で美人だったんだよ。そんな細かいこと気にするなよ。続き話したいんだけど。いい?」

「あ、ああ。」

「でね、回転しながら飛んでって、これは大惨事だって、まわりの人みんなが思った瞬間だよ。飛んでった先の道路にトラックが出てきてね。そのトラックの荷台にバイクが突っ込んだんだ。」

「うわ、最悪だな。」

「みんなトラックにあたって死んじまったと思ったよ。トラックの運転手もびっくりして急停車して、降りてきてね。猿と豚を足して二で割ったようなダンディなおっさんだったんだけどさ。その人が荷台を、」

「いや、待て。」

「なんだよ、すげえいいところだろうが。」

「おかしいおかしい。おっさんはダンディだったの?」

「そう、渋い顔してたなあ、ファンタジーに出てくるオークみたいな感じでさ。」

「いや、猿と豚が混ざったようなオークがダンディなわけねえだろ。お前、ダンディの意味わかってる?」

「なんだよ。渋くてカッコよかったんだよ。これがさ。って、話はそこじゃねえよ、ちゃんと聞けよ。」

「ああ、すまなかった。続けてくれ。」

「でね、荷台の方を見てみるとさ。バイクの人が立ち上がってるんだよ。無傷でさ。うわ、なんでだ。って、みんな思ってたら、トラックは布団の運搬中でさ、荷台が柔らかかったんだよ。本当に誰も怪我がなかったのなんて、奇跡だったぜ。」

「それは、すごかったな。」

「で、その事故を、俺たまたま動画で撮ってたんだよ! ちょっと見てみろよ!」

「お、おう。」

 友達はぐいと、僕の顔の前にスマホをつきだすと、動画を再生した。

 縁石を踏むバイク。回転して飛んでいくヘルメット。トラックの急ブレーキの音が響き、慌てて降りる運転手。荷台から立ち上がる女性。

「な、すげえだろ。」

「すげえなこれ!」

「だろ!」

「本当に魚顔の美人に、ダンディなオークじゃん!」


 正直、事故の映像は頭に入ってこなかった僕だった。


 小説だからできることを考えました。

 マンガやアニメやドラマや映画や舞台ではなかなかできないビジュアルにこだわってみました。

 イラストにできるものならばしてみてほしいところです。それはそれでビジュアル化できたら見てみたいですね。


 小説の主人公やヒロインって、特別な表記がない限り、美男美女を想像しちゃいますよね。そういう小説の心理的要素から思いついた話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ