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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-99- 下(くだ)り

 腹がにわかに痛くなり、もよおすような泣ける状態を、腹[下くだり]という。この[下り]には、いい場合と悪い場合の意味がある。おお、やれやれ! やっと下りか…と、峠に出た場合の[下り]は言うまでもなく、いい場合だ。列車でよく使われているのぼり下りの[下り]は、よくも悪くもない。^^ 天気は明日から下り坂です…などと天気概況を気象予報士が得意げに(失礼!)話す場合の[下り]は、悪い意味と思えなくもない。よくよく考えれば、地球上で天気が下ろうと回復しようと当然の話で、別にどぉ~~ってこともない訳だ。
 とある寿司屋でほろ酔い顔の二人の男が寿司をつまんでいる。 
「奥さん、早く帰らないと下りだよっ」
「えっ? 下り?」
「へいっ! あがりっ!」
 絶妙のタイミングで、寿司を握る親父がはさむ。言った男は思わず笑ったが、忠言された男の顔は笑えていなかった。内心では、そうだっ! と、気づいたのだろう。この場合の[下り]は、天気以上にものすごくこわいのである。もちろん、ドヤされたりボヤかれたりで、男は泣けることになるからだ。
「お勘定!」
 言われた男は気もそぞろに席を立った。
 [下り]は、やはりマイナス作用が強いようだ。

                   完
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