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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-95- 大願成就(たいがんじょうじゅ)

 何が何でも、やらねばっ! と心で決意すれば、割合、大願たいがん成就じょうじゅするものである。要は決断力次第ということだ。ただ、意固地いこじになり過ぎると成就しなくなり、泣けることになりかねないから注意しなければならない。人の意固地につけ込むのが大願成就をはばむ甘くない人の世なのである。
 大衆食堂で偶然、出会った知り合い二人の会話である。
「相変わらずお安い食事ですな、素麺そうめんさん! 相席、よろしいですか?」
「ああ! これは肉鍋にくなべさんでしたか、どうぞ…。そんな訳でもないんですが、大願成就! ですよ…」
 背後はいごから声をかけられ、きつねうどんをすすっていた素麺は、振り向くと肉鍋にそう返した。
「大願成就! …? なんです、それ?」
「いやいや、こちらのことです、ははは…」
 素麺は、きつねうどんの残りづゆをグビリ! と飲みながら笑ってにごした。濁されると、人はその先を知りたくなるものだ。
「そんなっ! 隠さず、言って下さいよっ!」
「隠してる訳じゃないんですがねっ!」
「なら、いいじゃありませんかっ!」
「あなたもくどいですねっ!」
「まあまあ、そう言わずに…」
 そのとき、店員が二人の座る席に近づき、水コップを置きながら肉鍋にたずねた。
「あの…なにをっ?」
「ああ! これっ!」
 肉鍋は、思わず素麺のうどんばちを指さし、値段分の食券を机へ置いた。
店員は無言でうなずくと食券を手にし、不愛想ぶあいそに席から離れていった。
 その訳を明かせば、なんのことはない。この大衆食堂では食券と交換にお楽しみ券が1枚もらえ、20枚になれば天麩羅テンプラ入りの、しっぽくが無料で一杯、食べられる・・というシステムになっていたのだ。素麺は、あと1枚のところまでせまっていた。素麺の大願成就とは、お楽しみ券で食べる天麩羅入りの、しっぽくだった。
 庶民の大願成就とは実に成就しやすく、泣けるほど安上がりなのである。

                   完
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