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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-94- いよいよ…

 刻々と自分の順番が近づいてくるときの心境は、いよいよ…と不安や緊張が高まる状態にある。この結果、個人差が出ることとなり、実力が出せず、ぅぅぅ…と泣ける人、ははは…と笑える人の差となる訳だ。実力があったにもかかわらず、その結果にぅぅぅ…と泣けた人は実にしいし、くややまれる。そこへいくと、そう大した実力がないにもかかわらず、えいっ! いちばちかだっ! などという開き直りの結果、笑えることにでもなった人は、これはもう腹立たしく怒れる。いよいよ…と緊張する人は、気の鍛錬たんれんが必要・・ということだろうか?
 とある二人の会話である。どういった関係か? は、読んでいただければ分かる。
「いよいよですなぁ~煮干にぼしさんっ!」
「はい、いよいよ…です、被物ひものさん…」
「どうです? ご準備の方はっ!?」
 被物は白衣を脱ぐと、応接室で待つ煮干へ語りかけながら対峙たいじして座った。
「ははは…もう、この年になりましたから、さして以前ほどは…」
「以前ほどは?」
「はい、緊張もなくなりました。毎年、落ちて三十年です。もう、れですよ、ははは…」
「同じ医学部を出て、私は一発合格。あなたは三十年…。皮肉なものです」
「私はダメなんですよ、いよいよ…となれば」
「いい腕されておられるのに惜しいことです…。コレなんか、最高の出来ですっ! …そうそう、こんな貴重ものを頂戴し、ありがとうございましたっ!」
「いゃぁ~不出来な作で申し訳ございません」
「いやいや、そんなことはっ! 大臣表彰の作品ですっ!」
「まぐれですよ、ははは…」
「いやいやいや、人間国宝のあなたが、そんなことはっ!」
「ははは…落ちても落ちても試験を受けておる馬鹿な人間国宝です、お笑いください」
「いやいやいやいや…滅相めっそうもないっ!!」
「いやいやいやいやいや、これだけのものです。では、これで…」
 煮干は、応接椅子を立つと、被物に軽く頭を下げ、暇乞いとまごいをした。     
 いよいよ…は、結果と実力とを分かつ心理的な分水嶺ぶんすいれいなのかも知れない。

                   完
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