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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-56- 桜

 花といえば桜! と、こうくる。言わずと知れた春の超有名な季語である。寒気が遠のき、なんとなく浮かれる陽気があたりにただよい始めると、待ってましたわっ! とばかりに桜が咲き始める。だが、花の命は・・とかなんとか言われるように、思わずぅぅぅ…と泣けるほど短くはかないのだ。
 とある堤防沿いの宵である。満開の桜がともされた雪洞ぼんぼりになんとも優雅に映え、その下では飲めや歌えのドンチャン騒ぎの宴がたけなわである。
「ははは…どうされました、酢川すがわさん? そんな…涙顔なみだがおになられて…」
 すっかり酔いが回った赤ら顔の飯岡いいおかが泣き始めた酢川をいぶかしげに見ながら小さく言った。
「ぅぅぅ…この桜ですよっ、この桜っ! ぅぅぅ…」
 泣き上戸じょうごなのか、酢川の顔は涙で、はやくもビッショリと濡れていた。
「この桜がどうかしましたか? いやぁ~、実に美しいっ! それが、なにか?」
「あんたねぇ~。分かりませんか? ぅぅぅ…。今はいい! 今はいいんですっ!」
「はあ…」
 飯岡には酢川の言う意味が理解できない。
「十日もしてごらんなさいっ! こんな可愛いがババアだっ!」
「ババアってこたぁ~ないでしょ、せめて姥桜うばざくらくらいに。ははは…」
「ぅぅぅ…この先を思うと、ぅぅぅ…泣けるんです」
「確かに…」
 この国の将来が、ふとぎったのか、飯岡も涙を流し始めた。
 桜とは最後に泣ける花なのである。

                   完
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